第26話 俺と魔王さんと勇者さん (11)

 まあ、とにかく俺は魔王さんを見て驚愕──。


 絶叫──。


 そして絶叫を吐き終えると。


「煩い殿──! 儂の耳がキーン! キーン! するではないか。もう少し静かにして話せ! 儂等二人は、殿と違って耳が大きい分、良く聞こえるのだよ。だからもう少し静かに話しをしてくれないか? 殿?」


 俺の声を大にした叫びに対して、魔王さんが声のトーンを下げてくれと嘆願をしてきたのだ。


「えっ? あっ、すいません魔王さん……。もう少し声のトーンを落とします。本当に申し訳ないですね……」


 俺は自身の頭を深々と下げながら、魔王さんへ謝罪を告げた。


「別に儂相手に、そんなに畏まって頭を下げなくていい。殿。早く顔を上げて……。それに儂の名は魔王ではない……。(ゴホン!)上村レヴィアタンと言う名前がちゃんとあるのだぞ。殿……」


 魔王さんは深々と頭を下げる俺に、頭を上げろと告げてきたのだよ。それに魔王さま自身に畏まって謝罪もするなとも告げてきた。


 う~ん、でもさ、見ず知らずの女性にいきなり叱られれば、男なら誰だって深々と頭を下げ謝罪をするとは思うのだが? できるだけ異性には好印象で見られたいのが男の性だと思う。


 それにしても魔王さん……ではないか? 彼女の名前は、上村レヴィアタンと言っていたね。


 上村と言えば俺と一緒の名字なのだ、レヴィアタンさんは……。


 と、いうことだから? 彼女は日本人とのハーフ若しくは? クォーターなのだと思う?


 まあ、そんなことを俺は脳裏で思案をしながら顔を上げ、上村レヴィアタンさんへと再度注目──。


 先程は彼女の頭に生えている水牛のような角と、可愛い笹耳にばかり注目をして彼女の顔をハッキリとは確認をしなかった俺なのだが。


「…………」


 彼女の顔を凝視すると声もでずに見惚れ沈黙……。


 先程の勇者さんの時と一緒、上村レヴィアタンさんが余りに美しく煌びやか淑女だから声もでない。


 まさに現在に蘇った妖艶で色香のある女魔王その者の姿だよ。上村レヴィアタンさんはね。


 それに彼女の瞳も凄い。アニメでしか見たことなどない彼女の美しい紅玉の瞳は、男なら誰でも魅入り虜にされてしまう。


 それこそ? 『右向け右──』と、彼女に告げられたら。俺は右でも向きそうだ。


 その他にも、『ポチ、お手!』と、言われれば、『ハァ~、ハァ~』と、荒い息を漏らしながら、彼女に右手を差し出して、『あ~い、お手!』と、忠犬になりそうなぐらい妖艶で美しい女性なのだ。上村レヴィアタンさんはね。


 まあ、とにかく俺の目の前に居る二人の女性はこの世の者ではないくらい美しい。


 と、いうか? この世界の女性ひとではないと思われる容姿をしているからね。二人は……。


「どうだ~、殿~? 十数年ぶりに逢った妻の顔は~? それと勇者~? 家の殿にエルフの事を知っているか? と、訊ねるだけ無駄だ。この世界は儂等の住んでいた世界ではなく異世界……。それも人種しかいない世界だからなぁ~」



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