第3話 過去の出来事と思い出(3)

家のお袋は、己の命の灯火が完全に消え失せる迄、嘆きに、嘆いてくれたのだ。


だから俺自身も側で、家のお袋を凝視していれば、罪悪感を募らせ、自戒に陥り。


「お袋を悪い。悪い……」と。


「お袋、本当に申し訳ない。済まない……」と。


家のお袋の冷たくなっていく掌を優しく。でッ、最後は強く握りなから。家のお袋へと何度も謝罪を繰り返し。繰り返したのだ。


家のお袋に対して、大変に申し訳ない気持ちで一杯だからね。


実際俺自身も、お袋を安堵させてやりたい気持ちは多々あったのだが。


う~ん、でも? こればかり。男女のお互いの縁という奴だけは、俺やお袋の思っている通りにはいかない。いかないからね。


特に俺のような、アラサー男が言うのも変かもしれないが? 大変にメルヘンチックな言い方、言い回して表現するとさぁ?


男女の仲、夫婦と言う奴はね。お互いが、赤い糸と言う奴で結ばれていないと。


二人は出逢うこともない。結ばれ、結婚することもないとは思う。


だから俺は? この年、三十路を過ぎてもね。俺と生涯を共に過ごし老いてくれる女性が現れないのだと思う。


と、いうか?


俺自身が【オタク】と、世に呼ばれる男性(ひと)だから。中々か気が合う女性(ひと)は、現れないかも知れない。


だから俺は、この年、三十路を過ぎても独り身。独身者なのだと言うことにしておくよ。致し方がないのだと。自分自身に言い聞かせることにする。


俺に嫁ができないのは、己が【オタク】だから。今後の俺のオタク人生に支障がでる、だけではない。


俺の今まで続けてきた【スローライフ】と、言う奴……。


そう、中世、江戸の時代からある、独り身の男達の本当の意味での【スローライフ】、その日暮らしと言う。気楽な生きざま、商い日和──。日々と言う奴を俺は送れなくなるから。三十路、アラサーと世間さまから言われる年齢になり。今後、過ぎていこうとも、気楽な独り身、商い日々と、本当のスローライフを送っていこうと思う。と。


俺自身も思い。自分自身に言い聞かせて、堪え忍び。痩せ我慢をすることにする。


う~ん、でもさ? 只今、愛車──。俺の唯一のパートナーであるハイエースを運転している最中の俺だけれど。俺の口からは、対抗車で通り過ぎ、行き交う車の中から見える、カップル、夫婦達の仲の良い様子を凝視すれば、「ああ~」と、また嘆息を漏らし嘆く俺だった。



◇◇◇◇◇








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