第5話 「タイムトラベル」

少しずつ意識が深い深い闇から戻ってくる。

ただ少しずつ。


レイキは気がつくと眩い空間へ誘われていたのだった。

しかし、それはレイキにとっては異世界に来てから何度も体験したことだ。そして、目が覚めると何かあるのは鉄則だ。


レイキはようやくバッチリ開いた目で回りを見回す、、、、が光が強くて何も見えない。


「あれ?俺って井戸の中に落ちたよな、うん、確かそうだ。」


レイキはそうやって自問自答をして頭を整理させようとするが、疑問がもうひとつ浮かぶ。


「どこだ?ここ?」


つい、思ったことを口にした、レイキだが何の反応もない。


「すいませーん?!誰かいませんかー?!」


「やっと目が覚めたわ」


気が付くとレイキの真後ろに人が一人たっていた。真っ白い妙に天使のやうな衣を纏い ただ佇む。


「今、明かりを落とすわ」


彼女がレイキに話しかけると 次第にさっきまで光ってた眩い光が丁度よい感じに空間を照らした。

すると、彼女がレイキにゼロ距離で近づいてから2秒後に少し距離をとりレイキをじろじろみつめる


「あ、あのー すいません?ここってどこですか?」


「、、、、」


反応がない。無視か、それとも ある程度レイキの査定に集中してるかのどっちかだがおそらくこのレイキの見つめっぷりをみると後者の方だろう、レイキは悟った。


「あのー聞いてますか?」


そう、聞くと彼女はようやくレイキの言葉に気付き、


「あ、失礼、珍しかったから驚いていたのよ」


彼女はそう言うと 一礼して 近くにあった 井戸の縁に腰をかける。

そう、この空間にはなぜか井戸が2つある。しかし、ただそれがあるだけの空間だった。


「あのー名前を聞いても?」


「私のか?」


「いや、あんたしかいないでしょここに」


「フン、まぁいいわ 私はワールドと呼ぶのがいいわ」


「ワールド?世界?ってことか」


ワールドはその言葉を聞くと驚くような顔をして、それから 眉を潜め


「あなた なぜそれを知っているの?、、、、まぁいいわ だいたいわかったわ、、、、それで何のようでここに来たの?」


「いや、実はここに繋がってる井戸から落ちたんだよ」


『落ちた』正確にいえば、何者かに『落とされた』のだが、それはいいとして、レイキには疑問があった。


「ここどこなんだ?ギルスが言うには「精霊の井戸」とか言われる場所っていってたけど間違いねぇのか?」


「ないわ、ここは『精霊の井戸』の最深部だわ」


やはり、精霊の井戸の中らしい、しかし井戸の中にこんな広い空間があるとはまるで漫画のような話だが今ここにこうやってたっているのが信じがたいものだ。


「ここから出たいんだけど?できるか?」


「結露から言うとできるわ、レイキ、でも少しくらいゆっくりしていきなさい。ここに来たら私の説明を聞かずして返す訳に行かないわ」


「あー、よかった~」


レイキはホッと一安心するが、、、、ある異変に気付く。


「俺、名前なんて言ったか?」


そう、名前は言っていないはずだがなぜワールドは知っているのか?


「まぁ、疑問に思っても無理はない見た瞬間だいたいのことは見通せるわ」


「おい、まじか、いくら異世界でもそれはすごくね?嘘とか一発でわかるじゃん」


「誉めるでない、照れるだけだわ」


ワールドは顔を赤くしほっぺに手を被せ、それから話をすり替える


「それよりレイキ この井戸の説明を聞くのよ、この井戸は『精霊の井戸』って言われるだけあってそれなりにすごいことができるわ、結論から言うとできることは2つ、ひとつは『未来』へ行くこと、もうひとつは『過去』へ行くこと、その2つができるわ」


「短的な説明サンキュ、つまり タイムトラベルできる井戸の祠ってところか?」


「タイムトラベルはよくわからないけど.だいたいはあってるわ」


それはあまりにも信じがたい井戸だった。タイムトラベルが可能とは異世界でもまずないであろう話だ。それってある意味無敵を表すことなのかもしれない。

さらに気になったことについてレイキは質問を重ねる


「で過去に戻れるとか未来へ行けるって、まさか昨日、明日って訳じゃないよな?」


「当たり前だわ、それは愚問よレイキ、でも行ける範囲は決まってる」


その言葉の続きを聞き逃さないようレイキは耳を研ぎ澄ます。


「1秒 1分 1時間 1日 1週間 1年 1世紀 それだけだわ」


「それって重複すればどこにでも行けるって話じゃねぇか? 」


「可能だわ でも 使えるのは1日 3回までだわ」


レイキは少し疑問を感じる。


「別に時間を遡ったり未来へ行ったりすれば、いっしょなんじゃね」


そうだ。別に1日5回をわざわざ1日するとわ思えない、別の日に移れば1日などリセットされるも同然、こいつアホなのか、と思うと彼女が怒った顔をする。心を読まれるのをレイキはおもいっきり忘れていたが、テヘペロ顔をして許しを乞う。

彼女は怒った顔のまま質問に答える。



「それはないわ、ここはこの世界と全く別次元の私が作った世界だわ、だから、時を越えてもここの時間の壁を越えれないわ」


「オーケオーケーよーくわかった、半分あり得ねぇような話だけど、、、、それでもう説明はだいぶ聞いたぜまだなんかあるか?」


「傲慢な男だわ、まぁいいわ、現世では今は朝だわレイキ、アナタは相当ねっていたわここで」


レイキにとって現世は地球なので少し理解し難いものがあるのだがレイキは頷くと「んじゃ」っといって話を切り出す。


「どーやって、でるんだ?」


やれやれ、とでも言いたそうな顔をしたワールドは指を指すとその指先には井戸があった。


「この井戸に入れば帰れるわ、私はいつでも暇だからいつでも来るのよ」


喫茶店か!と言いたくなったが喉で止めてレイキはその井戸に向かって歩く、井戸まで辿り着くとレイキ振り返りワールドに言葉を残す。


「じゃーな ワールド!また来ることはないと思うけど」


そう言って レイキは井戸に入る。タイムトラベルなどすることはない、レイキはそう思っていた。


帰り道の井戸に水はなかった。

だからレイキは割りとスッと出れた、、、、が足から入ったので足から出てしまい慌てて井戸の縁に手をかける。

腕の力でなんとか井戸から出ると目の前の広がる景色に感心する。

本当に朝になっていた。昨日初めて飲んだ酒も二日酔いはなく全然身軽のような元気さがレイキにはあった。


「俺がいなくなってるとあいつらも探してるよな、、、、早く戻らねーとな」


独り言を呟き、レイキは歩き出す。

しかし、歩くにつれて妙な強烈な臭いを感じる。

村で異変でもあったのかとレイキは心配になって足を急ぐ、

村の中央へ着く前にレイキの急ぎ足が止まる。村が血塗れで、辺りには人がたくさん倒れている。


「大丈夫か!?おい、アンタここで何があった?」


レイキはすかさず近くで倒れていた人に近より声をかけ揺すったがその男のうつ伏せ状態をひっくり返すとまるで剣で切られたような後があり、異臭がする。死んでいることで間違いない。

そう悟ったレイキにルフレの顔が浮かぶ、焼けつくように。


「まさか、、、、」


レイキは急いでルフレ達の布家に向かって走り出した。




布家に着くともはや惨劇と言わざる終えない光景がそこにあった。

ミーギとヒダリがルフレの布屋の前で頭に穴が空いてそこから出た血で血塗れになって倒れている。レイキは激しい嘔吐感に覆われた。


「嘘だろ、どーなってんだ。」


レイキはそのまま歩き、ルフレの布家の中に入る。

その先は最早恐怖でみたくも無かったが確認しなくてはいけない。

勇気を振り絞り布屋に入るとルフレも血塗れで胸をひとつきされて死んでいる。


「ル、、、、フレ、」


レイキはもう涙目になって 彼女に触れることしか出来ない。

ルフレも死ぬのが怖かったのか、乾いた血の涙が溢れている


レイキは力を振り絞りバディグの布家に行く。たがバディグも倒れている。


「誰か生きていないのか!」


急いでギルスの布家へ急ぐ、だが布家を開けてもそこにはギルスがベットに血塗れで寄りかかっているだけだ。


「くそ、誰か生きてねーのかよ!なんで死んでるんだ皆!」


強く投げ掛けたその言葉にギルスの指先が少しだけ、動く。


「ギルス?生きてるのか?おい、ギルス大丈夫かおい!」


「うるせーよ、見たらわかるだろ死にかけだぜあんちゃん」


ギルスはゆっくり一言一言そう言うとそれを聞いたレイキは安堵に包まれる。


「待ってろ、今ケガの治療を、、、、」


「できねーだろあんちゃん、大丈夫だもう後少ししか生きれねーから」


ゆっくり重々しい言葉を放つギルスの気持ちをレイキは察する。


「あんちゃん、ここにはもういれねーだろ、馬に乗ってこっからでろ」


ギルスはしっしとゆっくりやるとレイキはギルス抱き抱えをベットに横たわらせる。


「いったい何があったんだ、教えてくれギルス」


レイキは涙目になって質問をする。

ギルスはゆっくり口を開き答える。


「レイキの他に護衛の仕事を任されたやつがいるだろ、そいつが夜中突然現れて俺たちを殺そうとした」


「嘘だろ、そんなに強いのかよそいつ」


「あぁ、たぶん村人は誰一人生きてない」


「だから、もういいよあんちゃんはやく逃げ、、、、、」


そこでギルスの言葉が詰まる。正確に言えば詰まった訳ではない。何かが尽きた。命が尽きた。


レイキは言葉も出なかった。ただ、呆然としたまま立ち尽くしそこに居座ることしかできなかった。





しばらく立ち尽くし よろめいた足取りでレイキは馬の前まで歩く。

馬は生きていて唯一の生存者、生存馬とでも言うのだろうか、とりあえず馬しかいなかった。

ただ、馬はいただけでもレイキは心強かった。

しかし、空っぽになった心が強くなるのはちょっとだけだ。


レイキは馬に乗ろうとする。しかし、乗ろうとしたとき。レイキにルフレとギルスの顔がフラッシュバックする。


「ダメだ、あいつらを放って置けるわけがない」


レイキに空っぽの心が決心で埋まった。だからレイキは走り出した。走り出す他に今のレイキに選択肢はなかった。





「はぁはぁ、着いた」


レイキはあの井戸の前に着ていた。この状況を打破できる方法がレイキにはひとつだけあった。

それは、時を遡ること。それしかない、最早この井戸に入ることを止めるのは誰もいない。本当に誰もいないのだが

だからレイキは決心して井戸へと飛び込むのだった。


(絶対に救ってみせる)


これがレイキの決心である。井戸から出てくるともちろんあの女と二つの井戸があった。


「あら、随分早い帰りね」


ワールドは手を振ってレイキに言う。

しかし、レイキの応答はもう、決まっていた。


「ワールド」


ワールドは首を傾げるそして彼女は「何?」と、伺う。


レイキは言葉を続けた。


「過去に戻る 俺は、、、、あいつらを救うため」


その言葉を皮切りにレイキの異世界のタイムトラベルが始まるのであった。

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