第3話 「ボーイ&ガール」
「手合わせって まじかよ」
レイキとギルスは布家から町の外れの広場へきていた。
先程ギルスがレイキに手合わせと称して戦闘を持ち掛けてきたからだ。
持ち掛けたギルスはやる気満々だがレイキはいまいち納得がいかない。
だが、
「あんちゃんさっさとやるぞ、早くしねーと夜になっちゃうぜ、まさか、全然戦えねーとかか?」
「いや、剣術が得意だ!剣はあんのか?」
「わりぃな!あんちゃん 俺は剣は使わねぇんだ 今、持ち合わせはねーよ」
そーいってギルスは近くにあった木の棒を2つとって片方をレイキに投げた。
レイキはそれを掴み 軽く振る。まさか、これで戦うのか?
かなり 軽めの棒だが扱いやすい。それは良いが耐久性が欠片もない
「心配するな!あんちゃん 俺も 木の棒で戦うからぁなぁ!」
「まじか、いいのか?」
「あたりめーだよ 俺は盗賊でルフレさんの次に腕利きだ!負けねぇよ!」
ギルスはそういっていきなり踏み込み、攻撃を仕掛ける。やはり、ウルだけあって早かった。しかしレイキの対応速度だ。
ギルスが木の棒を横に振りレイキの胴を狙う。
レイキはそれを棒で弾き、そのまましゃがみ足を払おうとしたが
ギルスはバク転で交わし更に連撃を仕掛けてくる。
しかし、レイキもそれを交わし続け攻撃をタイミングを見計らい隙を探した。だが、ギルスは隙があまりない。ホントに剣が不得意なのか?
これではジリ貧の消耗戦になってしまう。こちらから仕掛けるしかない。
レイキはギルスの胴を狙い剣を横に振る。それにあわせギルスが防ごうとした瞬間、ほんの一瞬で剣を持つ手を入れ替え、その刹那で腹を突いた。
「ちったぁやるじゃねぇか」
レイキはギルスから一本とっていた。
僅か3分くらいで終わった戦いだろうか?レイキは勝ったのだ。
ギルスは感心したような顔でレイキを見渡し、「さすがだなあんちゃん」と言いたげな顔でふっと微笑み、木の棒を捨てる。
「ギルスの槍には勝てなそうだから挑まないでくれよ、不得意な剣でも危なかったよ」
そう、言葉を残しレイキは立ち去ろうとする。
少しカッコをつけすぎたか? 恐る恐る振り返りギルスを見る、、全然焦っていなかった。
むしろ、こいつおもしれぇ的な顔でレイキを見つめている。
「あんちゃん 今度 都宮にいかねぇか?盗みの仕事で」
「え?まじ?盗みの仕事?いいの?俺も同行して?」
「元々 あんちゃんはルフレさんに好かれてらぁ それにまぁまぁの剣術の持ち主となればまぁ行けるだろ、」
ギルスの言葉にレイキは心が踊りそうになった。強い人に頼み事とは嬉しいにも程がありすぎる。
ギルスは重々しい一歩で歩きだし
「あんちゃん 戻るぞ!」
といって 先に行く。レイキはそれについていった。
レイキとギルスが布家の近くまでくるとルフレが待っていた。
ルフレは天真爛漫な笑顔でこちらを見て近寄る。
先程、レイキはギルスと手合わせをした後なのでまぁまぁ体力を使い足にかったるさを覚えているくらいだ。しかし、ルフレはそんなレイキの苦労も知らず知らず話しかける。
「待ってたぜ!れーやん 聞いたぜ 決闘したんだってな!勝ったか?」
「決闘って、違うぜルフレ ただの手合わせだよ手合わせ!」
そう。レイキが行ったのはただの「手合わせ」だ。本当の剣道の方は県で2位程度なので全国レベルには少し達していないかもしれない。
この勝利はいうなればレイキ流の剣術で勝った、はじめての勝利とも言える。レイキは嬉しさが後からくるように込み上げ手を握りしめた
ルフレは「そうなのか?」と言って、何事もなかったように話を続ける。そこへ ギルスが話に入る。
「ルフレさん 勝ったのはレイキだ。なかなかの腕利きだぜ」
「まじかよ、れーやん やるな!ギルスに勝つとか。んじゃ都宮行くよな?一緒に?」
ルフレが唇を人差し指で押さえ誘ってくる。勿論レイキは暇なので誘いにはのるしかないのだが、やれやれ、 かなりめんどくさい。本当
そもそも、盗みの仕事とはいったい何のなか?まさか、街でスリのような働きをしていくのか?はたまた某有名アニメのように怪盗のように何かしらを盗むのか?全く掴めない仕事である。
今すぐ質問したい気持ちもやまやまだが疲れた。長話などせずにフツーに部屋に入りたい。そんな気持ちで頭が一杯である。
そんな気持ちからかレイキはもう入り口の前に無意識に立っていた
「もちろんいくよ、んじゃまたあとでな!」
「ちょっとまって!」
ルフレがレイキの腕を掴む。なんだ?急なラブコメの臭い、レイキは顔が真っ赤になるのを自覚しながら手を振り払う。
「飯、れーやんと食わせてくれアタシの部屋で」
その言葉にレイキは固まる。女子からご飯の誘いなど レイキはされた試しがなかったのだ。まさか異世界でモテキなのか?
レイキの2年近く彼女がいない。もしや絶好のチャンスなのでは?とレイキの頭はお花畑が広がる景色が広がる。
すぐに頭を振り邪念を払う。ドキドキ 心臓の音が鳴る。
「これは、絶対違う 俺はなんもしない 俺はなんも、、、」
「れーやん 何いってんだ? ほら、いくぞ!」
レイキはルフレに引き連れられ歩く。レイキは後ろを向き軽くギルスに頭を下げるとすぐ前を向き部屋に入る覚悟をした。
部屋に入ると流石に女子っぽい。この世界でも女子っぽさは存在する。今さらだがレイキは気づいた。
キレイに整ったキッチンらしきものと
「んで、飯ってなんだ?ホントに食べるの?俺と?」
「そーだぜ ほら!」
ルフレが何かを投げる。それは漫画でみるような動物の骨と極太な肉の塊が焼かれてある。漫画肉とかいうやつだった。
「訂正 女子っぽさの欠片もねーよこの料、、、、」
そういいかけた時、ブスっと効果音が聞こえた。
レイキはルフレの目潰しをくらったのだ
「グハァ 目が目がぁぁぁ」
レイキはルフレの周りでうろたえるがルフレは動じない顔でこちらを見ている。まさにレイキは今、ラピ〇タのム〇カのバルスをくらった状態にいた、更に畳み掛けて腹がなる。
「いーから食べろよ れーやん お腹すいてんだろ?うめーぞ!この肉」
ルフレはレイキの腹鳴りの羞恥心などは然程気にせず、嬉しそうに肉に食らいつく これだけみると女子力の欠片は微塵も感じない。
レイキも少しかじってみる。バカ味だと思っていたが、これが意外とうまい格別とまでは行かないまでも肉のなかでは上位に食い込む食べごたえであった。
「この肉、うめーな。いったい何の肉だ?!」
レイキはふと疑問に思った事を口にした。
まず、気になるのがこの世界にこちらの世界と同じ動物がいるのかどうか この肉はどう考えても牛の肉とは考えづらい。
牛の肉から漫画肉へと矢印を繋げるのはレイキの発想力ではイメージ沸いてこない、そう推察しても牛ではないだろう。
となると問題は何の肉か。レイキは答えにワクワクするする。
「これはなー そこらへんの小鹿の肉だぜ!れーやん」
「へー、小鹿の肉かこれ、うん なかなかの噛みごたえだな」
レイキはその小鹿の肉を食べながらレイキはルフレにもう一つ質問をした。
「何か俺に聞きたいことがあるんじゃねえのか?ルフレ?」
そう、まさか年頃男女二人がただの飯とは考えづらい。
そろに付け加えるとルフレとはさっきあったばかりだ。
きっと、何かがあるはず、、、、
レイキは思春期の淡い期待に乗せて心を踊らせる。
だが、ルフレはそれを察したのか
「れーやん 変なこと考えてないか!?そーゆーのを変態って言うんだぞ! んまぁ本題って言えばあれだよその、、仕事のこと!
ズバリ言うと7日後に仕事があるんだけどな れーやんにはアタシを守ってくれねぇか?」
ルフレの突拍子もないことなレイキは驚いた。
レイキが頼まれた仕事とは盗みではなく 盗む人の警護と言う訳だ。
せっかく盗賊の仲間入りをしたのだから盗みの仕事をやりたかった。
しかし特にレイキにはやることがないので結局のところ承諾するしかないのだが
「そりゃぁもちろんいかせてもらうぜ!」
「ただし!」
ルフレはその言葉をまっていたかのように言葉を切り出し、続ける
「実はれーやんより前に腕利きの警護を頼んでいてな!れーやんとそいつどっちを連れてくか決めてーんだ!アタシの金銭的に一人しか連れていけなくてな、、、、だからその、戦ってきめてくんねーかな?」
またしても突拍子のない発言にレイキは驚く。
「戦うって他にいたのか?警護の奴?」
「そんなんだよー でもあんまり信用できなくてな!もし、れーやんの方が強かったらアタシはれーやんを連れてくよ!」
そーゆーことか、つまり レイキとその別の警護の奴とで戦わせ
決めるということたとレイキは理解した。
「分かったけど、やっぱ そのための武器が欲しい。この村に腕利きの鍛冶職人がいるんだろ?そこへ連れてってくれねぇかな?」
「もちろんだぜ れーやん!戦いは5日後だからな!明日、ギルスと一緒に連れてくよ鍛冶屋、んじゃアタシはもう腹が一杯だからもう充分だぜ れーやんもう一個食べる?」
そーやって ルフレはもう一つさっきより一回り小さい肉をベッドの下から取り出す。
嘘だろ、ベットの下に肉隠すかフツー、
しかもその肉は明らかにカビ臭かった。まさにそれはー
「いくらなんでもその肉はないでしょ 熟成どころか傷みまくってるよね?カビっていうか みたこともなさそーな細菌ついてるよね?」
レイキはそうツッコミむ。流石にあのおぞましい肉は食べれまい、レイキはその肉を拒絶しルフレに返す。
ルフレはそれを受けとるとベットの下に戻し
だんだん眠くなってきてるであろう瞼を擦り
「アタシそろそろ眠いからまた明日な れーやん」
と、言って光る石らしきものに触れる。不思議なことにその石に触れた瞬間明かりが消える。レイキは少しビックリしながらも
「おぅ、またな」
そう、言い残すと布家を出た、するとルフレの布家の近くのギルスが待っていた。
「よぅ!あんちゃん 飯は終わったか?なんもしてねーよな?」
「するわけねーだろ!タイプじゃねぇよ、俺はもっとこう女子力溢れる女子に引かれるタイプなんだよ、そんじゃそこらの人じゃ俺の心にインプットもされねぇよ」
「ちょっと何言ってるかわからねぇけど どうやら大丈夫そうだな」
ここにきて ギルスのルフレへの溢れる思いが強い。
多分好きなのか こうなるとレイキは恋敵とでもみられているのだろう。全く困ったものである。
「心配しなくても手は別にださねーよ。俺もねみーんだ そろそろ帰らせてくれ」
レイキは言ってしまえば先程 現実世界から異世界へ飛ばされてきたばっかりである。これ程大変な経験はどこを探しても前例がない、、、、訳ではないが(自分より前におそらく行方不明になってる人がいるから)少し居眠りはしたものの全然疲れがとれたわけではない。
レイキはギルスの部屋に入ろうとすると ギルスに止められた
「あんちゃん 向こうに新しいあんちゃんの布家作っといたからそこに止まってくれ、やっぱおらぁ一人がいいわ」
ギルスの指を指した先にはしっかりと建てられたすこーし小さい布家があった。
レイキはテンションがあがる。
「まじかよ!一人部屋?うひょー サイコー!」
レイキは割かし一人は嫌いじゃない方だ。昔小学校の頃に朝早く学校に着いてしまったレイキは一人 グラウンドにき、その静寂と孤独を味わって優越感を覚えた程だ。
レイキは飛ぶように布家までダッシュし部屋に入る。
まるで修学旅行のホテルにきたみたいなテンションだが気にせずレイキは寛ぐ。この世界にもベッドはあってさらに言えばふかふかである。
レイキは割れを忘れて布団に入り目をつむった。
するとレイキの瞼の裏に幼馴染みのユイが浮かぶ。
「ユリ、、、、どこ行った?」
そんな寂しさに紛れたような夜が途端にレイキを襲った。
レイキは布団にくるまって忘れるように眠ったのだった。
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