第21話 表向きは・・
夕日を眺めながら夢を語るラーク。その眼は最初にリュードが訪ねて来た時とは一転、とてもイキイキとして輝いていた。
そして・・・
「リュード、俺はやるぜ。必ず整備技師になっていつか必ず自分の艇を持って、アイツを迎えに行くんだ。そんで、二人で宇宙を旅するんだ」
ますますラークの瞳に夢へ向かう闘志がみなぎっていく。
これでは先ほどと立場逆転になりかねない・・
リュードは宿敵のスターズをなんとしても倒さなくては優勝出来ないと考えており、リュードの心の中に抱えている問題は何も解決はしていないのだ・・・。
夢を熱く語るラーク。ふと隣のリュードの顔を見ると、リュードはうつむきがちになっていた・・
そんなリュードの表情を見てラークも会話が止まる・・
―――――しばしの二人の沈黙の後、ラークは少し頷き、リュードに声をかけた。
一体何をリュードに言うつもりだろうか?
「リュード。確かにスターズは強ぇよ。俺達仲間で旅してた時は、背中を預けられる仲間がいたし、フォローしあって戦ってたからな。でも、大会は1対1だもんな、壇上に上がれば誰も助けてくれない。もしかしたら、グランゼウスと闘った時以上に辛いかもしれない。でもよ、自分で何とかするしかねぇんだよ・・・」
自分で何とかするしかない・・・
ラークの言葉は今のリュードにとっては更なる追い打ちにもなりかねないくらい突き放すような感じにも見える。
本当にラークでも適格な助言を与えることは出来ないのであろうか・・・?
しかし、次の瞬間ラークが再び話始めた。
「なぁリュード。お前、鴨(カモ)って知ってるよな?」
「・・・ああ」
「そんでよ、『鴨の水かき』ってことわざがあるんだけど知ってるか?」
リュードは知らないと首を横に振る。
「鴨っていうのはな、水の上では気楽そうに平然としてるけど、水の中では一生懸命泳いでるんだよ。今までの大会でチャンピオンに輝いた奴らも同じだよ。チャンピオンになってからも、その栄光を来年も維持できるように、必死にもがいているんだよ。表向きでは、メディアの前では余裕なツラして大口叩いてるけど・・裏では必死に生きてきたんだと思うぜ」
「―――!」
「あのスターズだって同じだと思うぜ。アイツだって、俺に負けて閉会式の時に悔し泣きしてたけどよ、それからだよアイツは。俺に負けてから、必死に努力して、考えて、悩んで、もがいて、『こうじゃないか?ああじゃないか?』って闘い方を工夫して、それで今あの強さを手に入れたんだよ。試合では表情一つ変えない澄ましたツラして闘ってるけど、裏では血の滲むような努力して、今年の武術大会で優勝するために、きっと今もこの地球のどこかで、絶えずにもがいてるんだよ」
「ラーク・・・」
ラークの熱の籠った言葉がリュードの心に響く。
「リュード。俺ももっともっと夢を叶えるためにもがくからよ、お前も、もっと鴨を見習ってもがいてみろよ?色々考えて、工夫して、努力して、優勝目指せよ?・・・な?」
ラークはリュードの肩を軽く叩く。
「ラーク・・・ああ!」
どうすれば良いか底なしの沼に沈みかけていたリュードの瞳に再び活気が戻ってくる。
そして二人は立ち上がる。
「ラーク、ありがとな。お前のおかげで、今まで以上に頑張れそうだよ。やっぱりお前は、戦友だよ」
「バーカ!今更何言ってやがんだ・・・ハハハ」
リュードは片手を上げ、ラークに別れを告げ、首都『ヘラクレス』へと戻るべく、山を下りていく・・
その後ろ姿をジッと見守るラーク。
「リュード!!!」
突然ラークが丘の上から叫び、リュードは下から丘を見上げる。
ラークは槍斧を地面に突き立て、全身の闘気をみなぎらせ、槍斧を突き立てた地面に送り込む。
すると、地面にはラークの闘気で描かれた紋章が浮かび上がり・・
「ムゲンドラゴンーーーー!!!」
ラークがそう叫ぶと、地面に描かれた紋章から蒼白色の巨大な龍が現れ、天へと昇って行った・・・。
今のはラークの最大の奥義『ムゲンドラゴン』だ。
これがラークからリュードに向けられた激励だろうか・・?
リュードはそんなラークの激励を受け、笑みを浮かべた。
そして・・
「ハアァァァーーー!!」
今度はリュードが全身からあふれ出んばかりの凄まじい青緑色の闘気を発し、
闘気はリュードの右腕へと凝縮されていった。
「闘龍神撃爆戦吼(とうりゅうじんげきばくせんこう)---!!!」
リュードの右腕から放たれた龍は、丘の上に立つラークの目の前を通過していき、先に放ったラークのムゲンドラゴンを追うように天へと昇り、消えていった・・・。
今のリュードの技も、ラークと同じく、リュードの最大の奥義『闘龍神撃爆戦吼』だ。
試合でこの技を使えば優勝できるのではないだろうか・・・?
いや、これだけの大技など、使う暇も与えずに相手が攻めてくるので、まず無理だろう・・。
そんなことは二人も十分承知だ。
しかし、今はこれが彼らの思いの詰まった会話なのだ・・・。
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