第22話 再会

ラークの激励を受け、アトラス大陸の首都「ヘラクレス」のギルドで今まで以上にモンスター討伐に励むリュード。

モンスターとの闘いだけでなく、闘技場でもほぼ毎日夕方から軽い練習試合を行い、リュードはコツコツと力をつけていく。

武闘と持ち前の剣術、その両方に磨きがかかっていき、充実した表情のリュード。


そして、ラークと最後に会ったあの日から2ヶ月が過ぎようとしていた・・


「帰るんだな、リュード?」


「はい、妻と約束してましたし、子供が産まれるんで」


リュードはギルド室の奥の部屋でお世話になったギルド長と話していた。


故郷のアレクサンドルで帰りを待っているレイミの元へと帰郷するという。


「そっか、リュードももうお父さんになるんだな、早く帰ってあげないとな。またうちで仕事したくなったらいつでも来いよ。お前なら大歓迎だ」


「はい、ありがとうございます!お世話になりました」


リュードはギルド長に深々と頭を下げ、ギルド室を後にする。


首都を出てアレクサンドル行きの港へ向かうべく、広大な草原を歩くリュード。

サンサンと降り注ぐ日差し、心地良いそよ風がリュードの金色の髪をなびかせる。

帰郷日和といったところか。


港へ着いたリュードは船に乗り込み、甲板から広大なアトラス大陸を見渡していた。

潮風に吹かれるリュードのその表情はとても清々しい笑みを浮かべている。


しばらく家を留守にし、実家へ帰省させていた妻と会えるのだ。リュードも久々の故郷と妻のレイミに会えることを心から喜んでいるだろう。


旅客船がアトラス大陸の港を出港してから7時間。

船はアレクサンドル王国の港に停泊した。


「・・・(ううっ!寒っ)」


数か月も常夏のアトラス大陸にいたリュードの身体にアレクサンドル大陸の北風が容赦なくリュードの体温を奪っていく。

もちろんそれはリュードだけでなく、同じくリュードと同じ船に乗ってきた者たちも口をそろえて「寒ぅ~」と縮こまりながら足早に建物の中へと避難するかのように散っていく。


リュードも足早に隣町の妻の実家がある『レムナス』へと向かう。


足早にレムナスへ向かうリュードだが、着いた頃にはもう日が落ちかけていて、レムナスの空はすでに茜色に染まっていた。


寄り道をせず妻の実家へ向かうリュードだが、アトラス大陸にいた時の帰郷日和の笑顔とは一転、少し緊張した面持ちだった。

いくら妻は幼なじみとはいえ、数か月ぶりの再会であり、更に彼女が実家にいるということは、両親ともキチンと挨拶をしなければならないのだ。


リュードが色々考えているうちにリュードは妻の実家に着いてしまった。


深呼吸をしたのち、家のインターホンを鳴らす。


「はーい」


扉の向こうから女性の声と同時にドアが開く。妻だろうか?


「あらリュード君!久しぶり!帰って来たの?」


扉の相手は妻の母親だった。


「只今戻りました。しばらく家を留守にして、彼女も預けてしまってすみません」


「良いの良いの、事情は分かってるから。うちだってあの子がいると家の中が和むし。さあ、外も寒くなって来たから入って」


リュードは家の中へと入りリビングへと向かう。しかし、そこに妻の姿はない。


「あれ?いないんですか?」


リュードはリビングを見渡すが、そこに妻の姿は無い。


「もちろんいるわよ、2階の自分の部屋に。早速会いに行ってあげな、あの子も喜ぶと思うわ」


リュードは2階へと上がり、妻の自室へと向かう。

やはり緊張しているのか、リュードは足音をあまり立てない。


・・・・・コンコン


再び深呼吸したのち、リュードは彼女の部屋のドアをノックする。


「はーい」


部屋の奥から妻の声が聞こえ、彼女の部屋のドアがゆっくりと開けられた。


ついに対面の時、


「リュード!」


「ただいまレイミ」


4ヶ月ぶりの再会となるリュードとレイミ。

4ヶ月・・・普通に生活しているとあっという間だが、二人には1年ぶりぐらいの再会に感じられた。

ずっとリュードにずっと会いたかったレイミ。それはリュードも同じだったが・・


「リュード、お帰りなさい。ずっとあなたの帰りを待っていたわ」


レイミはすぐにリュードに歩み寄り、リュードの腕に手を回す。

リュードもそんなレイミの肩をそっと優しく触れる。


「長い間留守にして悪かったね」


「良いのよリュード。分かってるから」


「お腹・・・大きくなったね」


リュードはアトラス大陸へ旅に出る前よりも更に大きくなったレイミのお腹にそっと手を当てる。


「ええ、もうすぐ産まれるわ。その時は・・・一緒にいてね」


「もちろんだ」


4ヶ月ぶりに再会したリュードとレイミ。その日はリュードもレイミの実家に泊まり、今までの旅の話などでレイミの家族達と盛り上ったのであった。

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