第19話 蘇る銀狼

リュードは門番に挨拶を終え、村を出て首都のヘラクレスへ向けて歩き始めた。


「はぁ・・」


リュードは久々のラークとの再会を楽しみにしていたが、予想外のラークの対応に少しガックリと肩を落とし、ため息をついていた。

早歩きだった来る時と違い、帰りのその足取りは重く感じられた。


「リュード!」


後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、振り返るとそこには大きな槍斧を持ったラークが立っていた。


「どうしたんだ?ハルバートなんか持って。勉強するんじゃないのか?」


「リュード、久々に手合わせしようぜ」


先ほどまで『勉強してて忙しいから早く帰れ』と言わんばかりのオーラを出していた彼が一転、久々に俺と戦えと言う。

どういう風の吹き回しだろうか?


「どうしたんだ急に?お前そういうの辞めたんじゃなかったのか?」


「ああ、俺はもう武術大会とか、そういうのに出る気はねぇ。だがな、お前のさっきの話を聞いて、久々に錆びついた力をぶっ放したくなったんだよ。久しぶりにやろうぜ?」


いくら昔一緒に闘った仲とはいえ、ずっとそれからも闘いの道を歩いてきたリュードと手合わせするのは無謀なのではないだろうか・・?

大怪我しなければ良いが・・。


――――――しかし、


「心配無用だ」


ラークの体から蒼白の闘気が揺らめきたち、ラークを包み込んでいる。


その様子を見て、リュードの瞳も闘志に満ちていく。


「分かった。少しやろうか」


山岳地帯の奥には村人が修行に励む広場があり、二人はそこへ移動した。


「リュード、手加減しなくて良いぜ」


先ほど揺らめいていた蒼白色の闘気が今度は更に強くなっていく。


リュードも青緑色のオーラを体中に纏う。


ラークの蒼白色の闘気とリュードの青緑色の闘気がぶつかり合う。


果たしてどのような闘いになるのだろうか?


「爆灰鍾(ばっかいしょう)!」


先に仕掛けたのはラークだ。闘気に包まれた槍斧を振り下ろし、大地を震撼させ、その衝撃波がリュードを襲いかかり、リュードはよろめく。


「瞬連槍(しゅんれんそう)!!」


リュードがよろめいたところにラークは追い打ちをかけるべく槍斧による連続斬りを放ってきた。


リュードは手持ちの剣でラークの攻撃を受け、キン!キン!という音と共に火花が飛び散る。


「双破斬(そうはざん)!」


リュードは下から斬り上げるように跳び上がり、振り下ろしと共に着地する流れるような2連撃を放ち、ラークも後ずさりしながらガードし、


「猛虎旋風脚(もうこせんぷうきゃく)!!」


ラークは槍斧を地面に突き立て、それを軸にして回転蹴りを放ち、更に間合いを詰め。空中で2連続の回し蹴りをリュードの胸に向かって蹴りつけ、リュードは広場の岩壁へと追いつめられる。


「爆灰鍾(ばっかいしょう)!!」


壁際に追い詰めたリュードに渾身の一撃を叩きつけた!


ドーーーン!!


「前転回帰(ぜんてんかいき)!」


間一髪ラークの一撃を飛び込むように前転してラークの背後に回り込んで避けたが、今の一撃を受ければいくらリュードでも致命傷になりかねない。

そのことはラーク本人も分かっているはずだ。


・・・しかし、それ以上に驚くべきはラークの力である。地球に還ってきてからほとんど戦いなどしていなかったはずのラークがリュードと互角以上に闘っているのだ。


ラークは重量のある槍斧を左腕一本で持ち上げ、矛先をリュードに向ける。


「分かってるぜリュード。お前はそう簡単に倒すことはおろか、攻撃をまともに当てることも容易じゃないってことも。だから俺も全力で振りかぶってる。リュード・・・俺のクリーンヒット・・・もらうなよッ!!」


ラークは言うが早くリュードに猛スピードで近づいてきた!


「空破特攻弾(くうはとっこうだん)!!」


ラークは空中に跳び上がり、体をドリルのように回転させ、リュードに突っ込んできた!

リュードは鋭利なドリルと化したラークの技を叩き落すべく、横に回って剣を振り下ろした。


ガキーーーン!


しかし、ラークの技の回転が速く、リュードは持っていた剣を弾かれてしまい、クルクルと宙を回転し、地面に突き刺さる。


ラークの攻撃は岩山へと激突するが、ラークはかすり傷一つ負っておらず、逆に岩壁の方が粉々に砕けてしまっていて、ラークの攻撃の凄まじさがヒシヒシと伝わってくる。


これがかつて爆裂銀狼野郎と呼ばれた漢の力だ。

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