第6話 少年時代のリーダー
控室へと戻ってきたリュード。だが、圧勝したにも関わらず、その表情に笑みは無かった。
何故なら次の試合はリュードにとってとても気になる選手の試合だったからだ。
会場に響き渡るアナウンスのマイクの声。
「さあ!白熱した闘いが続く本日のヘラクレス闘技場の試合も残すはあと2つ!
まずは、本日のメインイベント第一試合!地区予選の決勝戦を行いたいと思います!!」
地区予選とはいえ、決勝戦ということもあって自然と会場は歓声に包まれる。
この地区予選の決勝戦で勝った者は今年最後に行われる世界トーナメントへの出場権を手にすることが出来るのだ。
ちなみにリュードは昨年の大会でベスト4だったため、既に出場権を手にしているのだ。ベスト4までが来年の決勝トーナメントへの出場権を手にすることが出来、ベスト8以下は、今日のような地区予選で優勝しなくては決勝トーナメントに出場することは出来ない・・・というのが基本だが、稀に例外もたまにある。
さて、本日の地区予選。決勝戦で闘うのはこの2人だ。
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名前 『ミラルゴ・ガルシア』
備考・・地元アトラス大陸では先ほどリュードと戦ったロベルトと並ぶ強豪で、パンチも蹴りもキレのあるテクニシャンである。
ロベルト同様、銀色の髪と赤銅色の体を持ち、銀髪をドレッドのオールバックにしているのが特徴。
この決勝戦で勝利すれば世界トーナメント本戦に出場できるため鋭い殺気と闘志をみなぎらせている。
名前 『ゼノス・ライトニング』
備考・・リュードと同じアレクサンドル王国出身の28歳。
リュードと同じく金色の髪と青い瞳が特徴で、やや長めにカットしたウルフヘアが闘う時にオオカミの体毛のように揺れるのが印象的なことから、
『ブリッツウルフ(稲妻オオカミ)の異名を取る。
リュードやレイミと同じ年代のアレクサンドルの人間で彼を知らぬものはいないといわれるほどの知名度の高い選手で、
遅咲きの花を咲かせたリュードとは違い、幼いころから格闘技、剣術に打ち込んでいた彼はリュード達のリーダー的存在でもあった。リュードと共に初めて世界大会に出場した時の戦績は68戦68勝無敗という驚愕の戦績を誇り、優勝候補としての下馬評もリュードよりも圧倒的に高かった男だ。
・・・しかし、そんな彼も優勝は叶わず、準決勝で人生初めての敗北を味わい、その後は勝ったり負けたりと、無敗として名を轟かせていた頃の名声はすっかりと過去のものとなってしまった。
昨年も世界トーナメントに出場したが、準々決勝敗退。やむを得ず今年は、ここアトラス大陸で地区予選から出直して決勝まで来ていたのだ。
果たして彼は今日の試合に勝ってリュードと共に本戦出場できるのであろうか・・・?
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実況マイケルと解説のムツキは檀上下の解説席でこんな会話をしていた。
「ムツキさん、かつてはムツキさんもゼノス選手と世界トーナメントの出場をかけて闘った相手ですが・・・」
そう、ムツキは昔、ゼノスと試合をしたことがあるのだった。
惜しくもその時はゼノスの勝利となったが、あと一歩のところまで追いつめていたのだ。
「そうですね。あの時はゼノス選手は無敗のまま昇り調子の全盛期を迎えていましたからね。とても良い選手でした」
「しかし、あの年の本戦でゼノス選手が敗北を喫してからですよね・・」
「そうですね・・もう4年も経つんですね。あと年は『ゼノスが無敗のまま優勝するんじゃないか?』という声もあるほどだったんですが、敗北と共に何かが崩れ落ちていくかのように、その後は戦績も振るわないんですよね・・」
昔ゼノスと闘ったムツキの表情は複雑だった・・・
「・・・(よし、行くか)」
一方、試合後に控え室でシャワーを浴び終えたリュード、スッキリしたのもつかの間。
足早に会場へと戻ってきて生でゼノスの闘いに注目する。
リュードとしても、ゼノスには勝ってもらいたいはずだ。
そして、運命の地区予選決勝戦が始まる!
・・・レディー、ファイ!!
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