『子』
「子子子子子子子 子子子子子子子 此れを読んでご覧」
夕暮れ茶室、茜色に染まる。
女は目の前の十二個の子の字を眺めていた。
向き合うのは女に惚れた色男。
女が眉根を寄せて悩む顔を静かに眺めた。
「解読する法は二つだ、
御身の技量で読み解くか、教養ある貴女なら知識を紐解けるか。
此れが読めれば、私は大人しく引き上げましょう。
読めぬなら、今日こそは貴女の床に上げて戴く。」
一夜を賭けた大勝負。
数分後、女が滑らかな声色で「解けました」と告げた。
甘ったるい垂れ目で男を見据え、困り眉を晒す。
男は渋い顔晒し、ため息を吐いた。
今宵も負け。
早々に引き上げる他はない
「けれど、その前に私もお伺いしとうございます。」
男は顔を上げた
「私が、どちらの子か、当てて下さい」
子子子子子子子 子子子子子子子
猫の子 子猫 獅子の子 子獅子
「私は、どちらでございましょ?」
女は紅い唇を尖らせて笑い、男に問うた。
(384文字 20160507)
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