第6話 いざダンジョン探索へ
5話 いざダンジョン探索へ!!
メルト市からダンジョンまでの距離は、具体的に表すと約10ノア(10km)ほどある。
ハンターの中にはそこまで馬で行く人もいるが、殆どは徒歩である。
魔物や魔獣が藁藁と現れる、何が起こるかわからない危険地帯にいくのだから、必然的に持ち物は多くなる。
その状態で2時間かかる道を歩くのだから、「馬を使えと」誰もが言いたくなる。
でも、彼らがそうしないのは単にダンジョン行きの馬車の乗車料金が異常に高いからだ。
営利を目的とした市が民間の運輸業を全て抑え込んで、ダンジョン行きの馬車を独占してしまった為にこのような事になってしまったらしい。
だから、重くなってしまったハンターの荷物はその殆どがダンジョンデリバリーと呼ばれるハンターの荷物運搬を専門にした個人業の人々に委託するらしい。
ダンジョンデリバリーは市の馬車よりも遥かに安い為、ハンターには重宝された職業であり、ダンジョン攻略において必須とも言えた。
だが、事アリシア達においてはとりわけ彼らも必要ではなかった。
というのも、彼らにはオーガという人間の1.5倍ぐらいの大きさと、それ以上の身体能力を持つ魔族がパーティーの1人であった為、大きな荷物の運搬は彼に全て任せることが出来たからだ。
メルト市のダンジョンは半径20ノアほど広がる大森林の地下にある。
森の中は鬱蒼としていて、とてもじゃないが地下のダンジョンの入口を見つけるなんて、砂の中から針を探すような苦行にも思えるが、決してそんな事は無い。
ハンターギルドが銅ライセンス昇格と同時にハンターへ配る魔窟探査用方位針があるため、ダンジョンの入口がどこにあるか等直ぐに分かってしまうのだ。
これは地上に現れたダンジョンの穴から放出される微量な魔素を探知する事が出来る為、ダンジョンの入口を簡単に見つけられるという仕組みだ。
とはいえ、銅まで昇格したハンターは皆そんな物がなくても、長年培ってきた直感という物があるので、それを実際に使っている人はベテランの皮をかぶったとんでもないアマチュアか、銅ライセンス以下の者だろう。
アリシア一行はその皮をかぶった少数派だった。
今や、一行はハンター用の鉄や皮のアーマーを身に纏い、メルト市の財源であるダンジョンの入口にいた。
メルトダンジョンの入口の前は夕方以降以外には沢山のハンター達が集まるのだが、ここはハンターどころか人の気配さえしない。
攻略者がそこに居ないという矛盾は、アリシアが木ライセンスにも関わらず、この場所にいるという主たる理由であった。
ベータがエルフの碧亭でアリシアに提案したハンターライセンス昇格の為の条件とは、「無名ダンジョンの探索」であった。
「つい2日前、僕達はダンジョン攻略中に偶偶、無名ダンジョンを見つけたんだ。
どうやら、まだそこのダンジョンは手付かずのようで、ダンジョンの構造や出現モンスター何もわからないから、内部の情報の独占が主な理由だけど、君も含めて俺達だけでダンジョン探索に行きたいんだ。」
と言っていた彼にアリシアは首を傾げた。
「でも、私はまだ銅のライセンスに昇格していないわよ?
もし私がダンジョンに入ったら、ルール違反で厳罰にあたるんじゃないの?」
「大丈夫だよ。
ルール違反にあたるのは、国際魔窟調査院が正式にダンジョンと決めた場所への銅以下のハンターの進入だから、ダンジョンと認定されていない無名の場所は公式のルールブックでも言及されていないんだ。」
そう言う訳で、木ライセンスの新米ハンターアリシアはベータたちと共に無名ダンジョンの探索をすることになった。
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