第1話 リメイク1

 静かな風の音が聞こえる。森の中、大きな石の上に一人座っている。周りは木の人形や割れた石が散らばっていた。森の茂みから男が一人歩いてきた。

 

 「またここにいたのですか」

 ため息まじりそう言ってくる男

 「いや、待ってる時間がもどかしくてさ」

 大きな石の上に座っている少年は笑って後ろの男に返す。


 ほんの少し前この世界は終わりを告げようとした時、忽然と現れた少年はこの世界を救い英雄と崇められた。

 今、世界は平和になり人々は平穏な日々を過ごし英雄は一生分の富と名誉を貰って暮らしていた。


 「貴方は英雄なのにまだ足りないのですか」そう言った男の名はハル。少年の補佐をするように国から言われたお目付役だ。真っ白な白髪に眼鏡をかけていて知的キャラ扱いをされている。

 「別にそんなものが欲しくて世界を救ったつもりは無いさ。異世界何て聞いたら冒険したいと思うのが子ども心ってものさ」

 男に返す少年の名は橋下夕輝。世界を救った英雄だ。中学生か高校生くらいの背丈に童顔で英雄の気品さもない。

 「冒険はあの時したでしょうに」

 ハルは疲れたような顔をしながら夕輝に言う。

 「もっと大きな冒険だよ!」

 夕輝は石から飛び降りてハルに近づく

「だってこの世界地図見ろよ」

 夕輝はハルに大きな紙を一枚見せた。

 真ん中に大きな島があり周りは海に囲まれている。この大陸で発行されてる世界地図だ

 「これが何だと言うのですか」

 ハルは地図を持つだけで見ようとはしなかった。子どもの頃から知っているからである。

 「海の向こうに絶対見たことのない大陸があるはずだって!」夕輝は顔を近づけ大きな声でハルに言う。

 「だから早く準備終わらないかな」

 夕輝はまた石の上に戻っていく。 

 「それならもう終わって明日出発できるそうですよ」

 「ほんとに!マジでやった何で早く言わないんだよ」

 「そのことを言いに来たんじゃないですか」

 ハルはため息をつきながら言う

 「だから、戻りますよ」

 次の瞬間、夕輝は笑顔で二つ返事をしてハルの後をついて行く。


 ー次の日ー

 朝は港にたくさんの人集りが出来ていた。

 それもそのはず、今日は出航の日だからだろう。

 夕輝は船の下で町の人にお別れの挨拶をしている。その横で待つハル。

 元気で行ってこいよ、風邪引かないようにね、お兄ちゃんこれあげる。色んな人が夕輝にお別れと手荷物を渡す。

 「もう、船に乗らないといけないですよ」

 ハルが夕輝に耳打ちをして船に戻る。

 「じゃあ、皆行ってくるよ!」

 水平線の上に太陽が上がり、船の大きな音とともに鐘の音が町に響き渡る。

 夕輝は大きく手を振り町を離れた。


 「じゃあ、冒険に出発だ!」

 夕輝の大きな声が船に響きわたる。

 英雄の物語はまだ終わらない。いやもしかしたらこれからが本当の物語の始まりかもしれない。

 

 「あいつらは乗らなかったのか」

 ハルが小声でつぶやいた。

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