世界を救った英雄も好奇心には勝てないそうです

やおき

第1話

 「またここにいたのですか」

 ため息まじりそう言ってくる男

 「いや、待ってる時間がもどかしくてさ」

 大きな石の上に座っている少年は笑って後ろの男に返す。


 ほんの少し前この世界は終わりを告げようとした時、突然現れた少年はこの世界を救い英雄と崇められた。

 今、世界は平和になり人々は平穏な日々を過ごし英雄は一生分の富と名誉を貰って暮らしていた。


 「貴方は英雄なのにまだ足りないのですか」

 「別にそんなものが欲しくて世界を救ったつもりは無いさ。異世界何て聞いたら冒険したいと思うのが子ども心ってものさ」

 「冒険はあの時したでしょうに」

 男は疲れたような顔をしながら少年に言う

 「もっと大きな冒険だよ!」

 少年は石から飛び降りて男に近づく

「だってこの世界地図見ろよ」

 少年は男に大きな紙を一枚見せた。

 真ん中に大きな島があり周りは海に囲まれている。この大陸で発行されてる世界地図だ

 「これが何だと言うのですか」

 男は地図を持つだけで見ようとはしなかった。子どもの頃から知っているからである。

 「海の向こうに絶対見たことのない大陸があるはずだって!」少年は顔を近づけ大きな声で男に言う。

 「だから早く準備終わらないかな」

 「準備ならもう終わっていて明日出発できるそうですよ」

 「ほんとに!マジでやった何で早く言わないんだよ」

 少年は目を輝かせて無邪気な笑顔をまき散らす。

 「それを言いに来たんですよ」

 男は嫌な顔をしながら言う。

 「だから、戻りますよ」

 少年は笑顔で二つ返事をして男の後をついて行く。


 ー次の日ー

 朝は港にたくさんの人集りが出来ていた。

 それもそのはず、今日は出航の日だからだろう。

 少年は船の下で町の人にお別れの挨拶をしている。

 元気で行ってこいよ、風邪引かないようにね、お兄ちゃんこれあげる。色んな人が少年にお別れと手荷物を渡す。

 「もう、船に乗らないといけないですよ」

 男が少年に耳打ちをして船に戻る。

 「じゃあ、皆行ってくるよ!」

 水平線の上に太陽が上がり、船の大きな音とともに鐘の音が町に響き渡る。

 少年は大きく手を振り町を離れた。


 「じゃあ、冒険に出発だ!」

 少年の大きな声が船に響きわたる。

 英雄の物語はまだ終わらない。いやもしかしたらこれからが本当の物語の始まりかもしれない。

 

 「あいつらは乗らなかったのか」

 男が小声でつぶやいた。

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