大人の遊び

音里はじめ

第1話

私の所に不思議な封筒が届きました。見たことも無い緑色の封筒で

送り主の住所もわかりません。

地獄の一丁目幸福村と書いてあります。

実は私には覚えが有ります。

先週私は、小田急線の善行という

小さな町に訪れました。

湘南鎌倉のターミナル駅になっている藤沢駅から、僅か二つ目の駅で右も左も若者でも一気に登れない坂だらけの町です。

裏手には甲子園に出場した事も有る藤沢翔陵高校が有ります。

昔は藤沢商業といいました。赤い校舎がとても目に付く男子高でした。今は男女共学になり偏差値もかなり上がった様です。

私が降りたのは駅の反対側です。

善福ストアーという小さなスーパーが有って肉屋さんの揚げたてのメンチカツやコロッケが評判になっていました。学生達がよく買い食いしている姿を見かけたものです。今は無くなって焼鳥屋などが立ち並ぶ町の人の、いこいの場になっています。

私は言われた通り善行団地行きのバスに乗り一番先頭の街並みがよくわかる席に腰をおろしました。次に来たときに、間違える事があっては、いけないからです。

私は近所でも評判の方向音痴で有名な人物なので。

最初の急な下り坂を進んでいくと

次には、カーブの有る上り坂が待っています。

昔は大雪が降ったのでバスの通る道路以外は大人でも膝が隠れるくらいでした。

終点の善行小学校で降りました。

信じられないでしょうが元は学校のまわりに、塀が有りませんでした。誰もが直接校庭に直接入り校舎にも近ずく事が出来たのです。

大人に道を聞かれたら教えてあげるのがいい子と言われた時代でした。声をかけられたら逃げろと教える現代とは、全く違います。

相手が待ち合わせの場所に指定したのは、その裏です。

突拍子もない話しなので私の全財産をかけて、人生の選択をする価値が有るのかと思いました。

私がこの男と出会ったのは、新橋のカウンターしかない小さな飲み屋です。満員だった店内が、待っていたかの様に、一瞬私とその男二人だけになったのです。

あなたの人生を買いませんかと言われたのです。

しかも私の退職金すべてつぎ込んで、おつりがやっとくる金額です。

私が家に届いた封筒をあけたのは

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大人の遊び 音里はじめ @asatteno-kaze

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