第3話 ビームは出ません!



「それじゃ、新しいスキルの名伯楽を説明するアルよ。タナカさんは確か三国志系の戦略ゲームが好きだったアルね」


 俺は戦略シミュレーションが大好きで、特に三国志系は大好物だった。

 辛い展開の序盤を耐え忍び、楽になってくる中盤も内政は手を抜かず、後は作業ゲーになってしまい誰もが「どうせ統一できるから」とオートにしてしまう終盤ですらやり込むタイプのプレーヤーだった。

 あえて過酷な縛りプレーで周回を重ねもした。



「煩悩の数。108匹のアトちゃんだけで全土を統一したこともある」


 アトちゃんというのは、全ステータスひと桁という製作者側の悪意としか思えない呪われた武将だった。

 大軍を持たせても相手MOB武将のへぼい策略で混乱し、火計で焼かれて撤退。内政は金を大量に消費しても1あがるのがやっとで、軍師にしようものなら嘘しか言わない。

 とにかく手のかかる武将だった。



 本名・劉禅、幼名・阿斗、通称・アトちゃん

 ちなみにアトちゃんは、人ではなく匹で数えるのが正しい。

 俺はそんなアトちゃんのブリーダーだった。



「そうアル、そうアル。敢えて苦難の道を歩み、死中に活を見出す。そんな姿を見て、君を選んだアルよ。アイやー、トラック突っ込ませてよかったね」

 な・ん・だ・と!


「犯人はお前か!」

「アイやー、怒らないでアルよー。こっちでの生活の方がわくわくが止まらないアル。まあ、しょっぱなに死なない限りはだけど」


 

 しょっぱなに死なない限りは。


 そうなんだ。

 これから転生する先で、俺はセーブもリセットもできない戦争をするのだった。

 この虫のような女神・闇の中の光サーニアの眷属となって、サーニアが属する世界・ニブルヘイムで何万・何十万もの国々を相手取って一戦やらかさないとならないのだ。


 何万・何十万の国々って国の数が多すぎないかって?

 なんでも、ニブルヘイムの大地は瘴気覆われてしまって、人はもう大地では住めないのだそうだ。ニブルヘイムの八百万の神々がそれぞれの眷属に浮島を与え、その浮島の1つ1つが国というわけだ。

 中には何百万人・何千万人と民のいる大国・強国もあれば、家族だけ、一族だけで隠れ住む小国もある。大小さまざまな空賊たちもその一つ一つが国家だ。

 小国は大国に吸収され、大国は乱れ小国に分割される。離合集散の果てしない連鎖の中で、何百年、何千年と戦乱は続く。

 そんな世界で生き残らなくてはならないのだった。



「とにかくスキルの説明するよ。三国志好きのタナカさんにはじゃじゃ~ん。たとえばこの武将なんかいいアルね」


 サーニアが小さな手をかざすと、光があふれそこに髭もじゃの大男が現れた。

 な・ん・だ・と!

 蛇矛を持っている。

 つうか、ステータス見るまでもなくね。



「張飛じゃん」


「タナカさ~ん。名前を言っちゃ駄目アルね。この人は、ハルヒ、そう取り敢えずハルヒね。この人はSR武将のハルヒね」

 いや、それチョウヒだから、間違いなく。


「とにかくこの武将を見て、心の中でステータスと念じるアルね」

 俺は言われた通りにした。すると張飛の頭の上に透明なウィンドウが現れた。



 名前 はるひ???

 年齢 14   

 職業 忠臣


 武力 真っ赤 知力 真っ黒

 魔力 真っ青 政治 真っ黒

 交渉 薄緑  運  真っ黒

        

 スキル 蛇矛 Lv9

     恫喝 Lv8

     酒乱 LvMax


 

なんだろう、スキルは見えるが数値が???で見えない。

あと文字の色が違う?


「説明するアルね。タナカさーん。気になることあるアルでしょ」

「名前がはるひ???になっている」

「そこには触れないアルよ」


「じゃ、能力値が見えない」

「それよ、それ。能力値は正確には見えないあるよ。だけど予想はつくよ。タナカさんのステータスを基準にしてタナカさんと同じ能力なら文字は透明ある。タナカさんより能力が高ければ緑、黄色、赤と色が濃くなっていくアルね。濃い緑なら10、濃い黄色で20、濃い赤で30以上数値は上ね」


「ということは、武力が82以上で交渉は32前後かな」

「そうアル。武力が30以上うえだと同じ真っ赤な文字だから正確には出ないアル。この人の武力は92で、蛇矛を持ったら101アル。次にタナカさんより能力が下のときアルね。文字は白、青、黒の順に濃くなるアルよ」

 ということは張飛のステータスは



 武力 82以上 知力 20以下

 魔力 30前後 政治 20以下

 交渉 32前後 運  66以下



 ということになる。

 交渉と運以外の俺の平凡なステータスはここではいい具合に働く。



「では次の武将ね。SRは見せたから、次はSSR武将ね」

 またサーニアが手をかざすと、光があふれ大男が出てきた。

 今度も髭だ。けれど綺麗に整った髭だ。

 美髯公。

 手に青龍偃月刀を持っている。

 つうか関羽じゃん。


「関羽」

「だからそれ言っちゃ駄目ある」

 


 名前 じゃ~んじゃ~ん

 年齢 14   

 職業 忠臣


 武力 82以上 知力 80以上

 魔力 60前後 政治 75前後

 交渉 60以上 運  66以下  


 スキル 青龍偃月刀 Lv8

     傲岸不遜  LvMax

     げぇっ〇羽!LvMax



 関羽すげー!運が低いのはあの三兄弟じゃしゃーなしだが、あとは全体的にスキがない。スキルの傲岸不遜は交渉のときマイナスに働きそうだが、コミュ力も低くない。


「スキルの げぇっ関羽!っていうのは?」

「げぇっ〇羽!アルね」

「げぇっ関羽!」

「げぇっ〇羽!」

何をさっきからこの虫はこだわってるのだろう。まあ、いいや。

「その、〇羽!っていうのは?」



「登場すると『じゃーんじゃーん』とドラが鳴ったような気がするアルね」

「へっ?!それだけ?」

「敵対する敵将は、逃げ出すか逃げ腰になるある」

それも、ありっちゃぁありなスキルだな。

指揮官が逃げ腰になるだけでも戦局は大きくかわる。



「SR武将とSSR武将を見てもらったアルから、次はUR武将アルね。一番レアな武将アル」

 サーニアが手をかざし、光が人の形をとりはじめた。


 張飛、関羽ときたんだから次は劉備?

けど、劉備がURって、さっきの関羽よりもステータス高いってことがあるのか?

俺は虹色の光の中の人型を鑑定してみた。



 名前 はわわさん???

 年齢 14   

 職業 忠臣・天才軍師


 武力 65前後 知力 80以上

 魔力 80以上 政治 80以上

 交渉 60以上 運  66以下  


 スキル 神算鬼謀   LvMax

     孔〇の罠   LvMax

     風魔法・極  LvMax

     発明     Lv8

     泣きながら部下をKILL 

     ビームは出ません


 

 そっちか!


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