第3話1.ハロウィンの夜(ハロウィンナイト)!?

わああぁぁ!!


人がダンスホール前方のステージ前に集まり、ミス・ミスターコンは賑わいを見せていた。

現在エントリーナンバー5の自己PRの最中で、エントリーナンバー8のベリーの出番はもうすぐといったところだ。今まで見た感じだとベリーが1番かなといった感じである。

あくまで私の個人的な意見だが…。

クルードの方はミスコンが終わってからの出場になるので、出てくるにはまだ時間がかかるだろう。


自己PRの時間は1人約5分。エントリーナンバーが近いと言っても、ベリーまであと10分〜15分かかりそうだった。



何か食べようかな。


気づいたらお腹が空いていた。まあ、それもそうだろう。時刻は19時30分。昼食を食べてから7時間ほど経っていた。


様々な食事が乗っているテーブルに近づくと、魔法で常に食事が足され、いつでも出来立てのものが不足ないようにそろえられていた。


すごい、さすが両魔法学園。


見回してみれば、いたるところに魔法が施されているのがわかる。シャンデリアは魔法によって浮いているし、落ちたゴミは自動的にゴミ箱が現れ、勝手にそこに入って消えていく。


私は美味しそうなサラダとローストビーフを皿に取り、近くにあるちょうど良い椅子に座って食べた。

ステージは少し足場が高くなっているから見えるだろうと思い、食べながらミスコンを見るという算段だったが、思いの外立ってる人が多くて良く見えない。

でも、マイクを通しての自己PRなので、声だけならよく聞こえる。今ちょうどエントリーナンバー7が始まったところだった。




その後、私はエントリーナンバー7の人が終わるまで時間いっぱい使って食べ切り、ベリーが出る少し前にステージ前の賑わいに加わった。


「次は〜、エントリーナンバー8!ベリィ〜!!」


イケイケの司会者が名前を呼ぶと舞台の裾からベリーが手を振りながら笑顔で現れる。


「こんにちは。ベリーでーす!」



「かーわいい!!」

「きゃー、ベリー!今日もイケてるわよ!」

「ヒュー!!」

「ベリーちゃぁあん!」

「ベリー!頑張ってー!」



「ありがと♡」


称賛の歓声に一言、ウインクと投げキッスを添えると会場はますます盛り上がった。


ここ、すごいな…。


ステージ前の、ミス・ミスターコン大好きな人たちの勢いに圧倒され、気後れした私は少し遠くからベリーを見守ることにした。

ベリーの自己PR、華麗なピアノの演奏が終わるとステージ前にいる人だけでなく、ホール全体の約8割の人が拍手喝采をした。

ベリーは満足そうに最後に淑やかに一礼すると、舞台袖の方に去っていった。

再び拍手が大きくなる。


優勝いけるかな?


そんなことを考えながら会場内をぶらぶらと歩いていると、前からものすごい勢いで走ってくる人にけきれずにぶつかった。


「ごめんなさいっ!」


今日はよく人にぶつかる日だ。気をつけなければ…。


「こっちこそ、ごめん!」


声の主は相当急いでいるらしく、焦ったように謝ると再び走り出した。



が、



「痛っ」


私の髪の毛が彼のボタンに引っかかってしまったらしく、走る勢いで私は後ろ向きに髪の毛を思い切り引っ張られた。


「わああぁ!?ごめんなさい!!」


彼はボタンに引っかかった髪の毛を必死に取ろうとしたが、うまくとれなかった。

あいにくお互いはさみなど持っておらず、どうすることもできない。


「本っ当にごめん!急いでるから」


そう言うなり、彼は私を持ち上げて抱きかかえると、


「ちょっと一緒に来て!!!」


周囲の目に少しうろたえながら、ダンスホールの端を突っ走って通り抜けた。

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