第2話 2.
今まで会場に圧倒されて気にしていなかったが、今日は男性が多い。いや、当たり前なのだが普段はいない異性がいるとあって皆辺りを見回してそわそわしている。私も少し浮き足立っていた。
「あ、あの人かっこいい」
私がボソッと呟くとすかさずベリーが食いつく。
「え!?どこ!どこ!?」
「ほら、あれ」
その勢いにやや引きながら私はベリーが見ているのと反対方向を指差した。
「あッ!!…よく見えないっ!」
ベリーは私の肩に手を置いてヒールを履いた足で懸命にぴょんぴょんと跳ねた。
見えないのもそのはず。なんせ彼は今たくさんの女の子に囲まれているのだから。
「よしっ、行くよ」
「えぇっ!?」
ベリーに強引に手を引っ張られながら人混みを抜けていると、
どんっ。
「わ、ぶっ!?」
人とぶつかってしまった。そのせいで私の手を引いていたベリーも引っ張られ急停止する。
「な、何!?楓?」
ベリーと私の間にはぶつかってしまった男の人がいたので、ベリーには私の姿がよく見えないらしい。
「ごめんね、大丈夫?」
「あ、はい、こちらこそごめんなさい」
相手の目を見て答えると、なんだか緊張して頬が熱くなるのを感じた。
あれ、この感じ…なんだろ?
「楓ちゃん?ていうの?痛いところない?」
「や、ほ、ほんとに大丈夫ですので…」
その間も相手はずっと私の顔を覗き込んでいる。
「あ、あの、あんまり見ないで下さい」
「っはは!おもしろいね、楓ちゃん。かわいい」
ぼぼぼぼぼ//////。
「やっ、やめてください!!!」
普段聞き慣れていない言葉に恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
「何?何?ほんとに。ナンパ?」
ベリーが人混みに苦労してやっと私の方に周ってきた。
「ちょっと楓は…!あら、イケメン」
「やあ、こんにちは。お褒めに預かり光栄だな。僕の名はクルード、よろしくね。ところで君の名前は?」
「ベリー」
「かわいい名前だね。ベリーちゃん、よろしく」
「…よろしくしたいところだけど、そのウザさどうにかならないの?」
「ウザい…」
「ああ、それと楓はこういうのに
「ウザい…」
ベリーがまくし立てる中、クルードはベリーの『ウザい』という言葉にかなりの衝撃を受けていた。なんだかかわいそうになってくる。
「そう、そういうところ。ウザいなぁ」
ベリーはその姿に向かってさらにトドメをさした。
「ウザいウザいってうるさいなあ!僕は今までこうやって生きてきてきたんだ!」
「さっきとキャラ違うじゃん」
うっ。っと言葉に詰まるクルードにベリーはいつものように続ける。
「あたしはそっちの方が好きだよ」
今度はクルードが真っ赤になる方だった。
あーあー、また勘違いを生んでいる。やっぱりクルードは可哀想だ。今ので完全にベリーに堕ちただろう。
ベリーにその気はないのに。
『みなさんこんにちは。ルーデルシャス学園、パルステント学園合同開催ハロウィンパーティへようこそ。まもなくMs.ルーデルシャスMr.パルステントコンテストが開催されます。出場者は舞台裏控え室、案内があるのでそこに集合して下さい。繰り返します…』
「楓、あたしエントリーしてるから行くね」
「え!?聞いてないよ!?」
「言ってないけど?」
おぉい…。
「へー、君も?僕もエントリーしてるよ」
ちらちらとベリーの顔を伺いながらクルードが落ち着きなく言う。
「あんたも?ま、せいぜい頑張りな」
「なんだと!?」
目の前でバチバチと火花が散る勢いだ。
クルードくん、君は好きな子の前で素直になれないタイプかな?
「ってことであたしたち行くから」
「は、はーい、頑張ってね…」
大丈夫かなぁ…あの2人。
言い合いをしながら舞台の方へ向かって行く2人を見て、そう思わずにはいられなかった。
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