第15話 新宿近郊に住むエルフの女性の待ち合わせ

 あくる日の土曜。


 勇一と待ち合わせる為に新宿に来たアーシャ。


 しかし到着したのは午前中だった。

 先に済ませておきたい用事があるからだ。


 素材を購入してラッピングをして貰える店。

 彼女はそこで勇一のマフラーを包んで貰った。


 洗濯を終えたマフラーは部屋で陰干しにした。

 朝起きてからスチームアイロンをかけてある。

 マフラーは何とか綺麗な状態に仕上がった。

 

 ラッピングしたマフラーを入れた紙袋を持つ。

 店を出る彼女の表情は、とても嬉しそうだった。


 意気揚々と街中を歩くアーシャ。

 そこで、ある物が彼女の目に留まった。

 ガラス越しにセーターを着たマネキンがいる。


(昔、お父さんに手編みのセーターをあげたなあ)


 編み物は子供の頃に母親から教わった。

 簡単な物からステップアップしてセーターへ。

 出来上がった物は左腕の丈だけ長くなり過ぎた。

 父親が着ると左腕だけ、もこもこしていた。

 それでも父親は、とても喜んでくれた。

 着たまま外へ出掛けようとしたので止めた。

 今となっては彼女にとって良い想い出だった。


(マフラーなら、まだ編めるかも……)


 アーシャは思い立ち行動をする。

 彼女は手芸用品の店へと赴いた。

 編み棒と毛糸を購入すると駅に戻る。


(ちょっと、お金がもったいないけど……)

(この荷物は見られると恥ずかしいし……)

(当日までは、秘密にしておきたいから……)


 彼女は駅近くのコインロッカーを開ける。

 そこに購入した手芸用品の入った紙袋を預けた。


 そして昼食を済ませると、南口で勇一を待った。


 待つ間に頬を染めて両手を胸の前で合わせる。

 とても嬉しそうな楽しそうな表情になる。


 彼女の今年のクリスマスイブに予定が出来た。

 勇一に手編みのマフラーを渡すという予定。

 助けて貰った御礼も込めて……。

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