第三話 私たちの敵

「はぁ〜、うまかった!」

 俺たちは酒場でちょうど食事を終えたところだ。

『さすが〈兎の集い亭〉ね。おいしかったわ。』

『うむ、じつに美味だった。シュリ?ぼーっとしてるぞ。』

 シュリは慌てて頭をふる。

「何でもない。ただ優しい人たちばっかりだったなぁって。」

『あぁ……そうだな……ここのやつらは優しいなぁ……』

 シュリとパルトは悲しそうな顔をする。

 うん?どういうことだ?

 確かにこの村のやつらは陽気なやつばかりだけど。

『シュリはな、珍しい格好だろ?ここの国は目ためで差別はしないようだけど、おれたちが旅をしてきた国はそういう差別が多くてな……シュリもいろいろつらいことがあったんだ。』

 まじか……

 いままでこの小さな少女はどれだけの苦労してきたのだろうか。

 きっと俺には姿想像できない苦しみがあったのだろう。

「ごめん。せっかく楽しい雰囲気だったのに。ここの国はいい人がたくさんいる。、ここにはいられない。」

 うん?また、シュリがよく分からないことを言っている。

 どういうこと?と聞こうとしたとき、


「きゃぁーーーーーー!!!」


 村の入り口から、女の子の叫び声がきこえる。

「「『『!!!』』」」

 俺たちは言うより早く体が動く。も

 もちろん、全速力で走る。

 が、シュリに追い付かない。

 くそっ!速すぎるだろ!!

 しかも、息ひとつ上がっていない。

「この気配……」

『あぁ奴らだ。』

 なにやら難しい話をしているようだ。

 きゅうにシュリが、俺を見る。

「リヒトは逃げて。これはただの獣じゃない。」

 俺は初めてシュリに苛立ちを覚えてた。

 逃げろ?冗談ない!

「俺だって精剣使いスピリドエペラーだ!!なめんな!!俺の村は俺が守る!!!シュテル、剣憑依エペハイト!!」

『あいよ!』

 俺が剣を抜くと同時にシュテルが憑依する。

 剣にシュテルが憑依すると剣が光輝く。

 光剣ルーチェスパーダだ。

 憑依が終わると目的地にたどり着く。

「なんだ、こいつは……!!」

 真っ黒な狼。

 そしてその狼があやつっているのか、狼のまわりには無数の黒い蔦がうねる。

『リヒト!こいつヤバい!自我がない!!』

 シュテルの声が頭に響く。

「おい……説明してくれよ!なんだ、こいつは……!!」

 シュリはいつもと変わらない表情でいつも変わらない声で、言う。

「だから言ったのに。あなたじゃどうにもならない。これは、私たちの敵。」

「んなことぁわかってる!!これはなんだ!!」

 俺が見据える敵は、まがまがしい殺気を放っている。

 これは、ヤバいやつだ。

「魔精霊。」



「精霊界の悪魔の使徒と呼ばれるものたち。」




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