デジタル人間

このまま世界は電気信号とか科学とか

そういうもので埋め尽くされて、

私もちゃんとロボットになれました。

あったはずの感情を消して

あるはずもない感情を

さばくのどまんなかに植え付けました。

でも、環境に合わなかったので

すぐに枯れてしまいました。

そもそも芽が出ることすら

ありませんでした。

成長の余地も存在しません。


紅茶とか、コーヒーとか

そういうのが好きなので

喫茶店で優雅に過ごしたり

してみたかったんですけど

まっしろできれいなコップに入った、

きれいなのみものとか、

要するに期待したものは

出てきませんでした。

うすい色のたぽたぽした

胸焼けしそうなものを

ぎゅうってごくごくする

それ以外のものは毒なんだって

えらい人がえらそうに言っていました。

うのみにしてるわけではないのですが、

そういう決まりなので。


いつか世界のすべてが

シリコンとか金属とか

そういうものであふれたら

すべて必要ないものに

なると思います。


*


私がさばくになったときから、

私はいくら水を与えられても、

いくら質のいい肥料を与えられても、

雑草のひとつ生やすことすら

できやしませんでした。

与えられたものを

うばうようにもらうだけで、

なにひとつ与え返すことをしませんでした。

それはよくないことだよ、と

えらい人は言いましたが、

理解できても、実行するのは、

やはり、できませんでした。


私、そして私たちは

この世のどこにでもあって、

ありあまるほどあって、べつに

必要不可欠というわけではありません。

なので、うまいぐあいに再生利用されて、

(たぶん)すばらしいものに昇華します。

きっとそのさばくにはオアシスがあって、

木のひとつくらいは生えているのでしょう。

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