表現者

ことばはナイフ

切っ先は容赦なくぼくの

喉をえぐる

開かれたぼくの喉は

頭のわるい単語しかこぼさない

赤といっしょに散らばった



今日たべたお弁当に

ポテトサラダが入ってたとき

いつもより調子がいいなって

思ったとき

ぼくたちは「嬉しい」以外の

ことばを使えるのかな


朝起きたら時間がぜんぜん

なかったとき

知らない人にぶつかって

謝ったのに怒られたとき

ぼくたちは「さいあくだ」以外の

ことばを持ち合わせているのかな



なんで、感情でしかものを

語ることができないんだろう

(あなたは空の色を触ることができる。

海のにおいを聞くことができる。

木々のざわめきを目にして、

大地の悲鳴と会話をすることもできる。)


なんで、人の心が

わからないのかな

(ぼくたちは誰もが表現者である。

すべての人が誰かと熱を分け合っている。

どうしたって世界は表現であふれる。)


ぼくたちはどうやったって

ひとつだから

孤独とはいちばんの

ともだちだから



抱いて眠ろうね

心臓にナイフを突き刺して

抜かずに大事にあたためて

骨になるときに

誰かが拾ってくれるまで

だいじに、だいじに

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