第8話「嫁にはまだまだ生えてます」
帰宅後、
そうこうして辰乃のご飯を食べて各々に入浴を済ませると……あっという間に夜になっていた。
「……とりあえず、密着はまずいな」
寝室に二組の布団を
だが、変に距離を置くと……遠ざけられてると思うのではないだろうか?
温かなぬくもり。
甘い匂いがほのかに香る。
そして……立派な
慌てて脳裏の妄想を振り払い、何度も布団の位置を変えてみる。
美星はつい、考え過ぎてしまう……思考で動いてしまう。
彼の感情は機能不全で、よかれと感じることを
そうこうしていると、ふすまが開いて辰乃が戻ってきた。
「美星さん、お風呂
「ん、そうか」
「
「ただのシャンプなんだが……ま、まあ、よかったな」
布団の上にあぐらをかく美星の前に、ぽてんと辰乃は座った。
ファッションセンターで買ったパジャマは、水色の
俺はロリコンではない。
そう断言できるし、辰乃は
大人の女性へ開花する直前の、その豊かさを湛えた曲線で構成されている。
「あの、美星さん?」
「あ、ああ……また、買い物にいこうな。
「は、はい」
「あ! いや、何でも買ってやるという訳では。それに、買い与えればいいとはもう思ってなくて、その」
目の前で正座する辰乃から、つい目を
バツが悪くて頭をボリボリとかきながら、美星はこれ以上はと思った。
神様公認の夫婦なのに、あまり何も思わない……感じない。
かわいい
結局美星は、小さく鼻から
「よし、辰乃。寝るか」
「は、はいっ」
「家事とか、あんまり頑張らなくていいからな?」
「いえ、わたしは美星さんの妻ですから。家を守る女として、
「お、おう……そっか。じゃ、頼むわ」
「はい!」
布団に逃げ込もうとした美星だったが、ふと思い出して振り返る。
そこには、
「ええと、辰乃。奥の部屋な、もう一つ
「わかりました! ……お掃除とか、いいんでしょうか」
「いいんだ。その、見られたくないものとか……あるからな。それと」
辰乃は笑顔で
美星の枕の隣に。
そして、
そこには、
「あの、美星さん……今夜こそ、えっと……わ、わたしと……夫婦の
「お、おう……ええと」
「昨夜は随分とお酒をお召のようでしたし。でも、今夜は」
「あー、うん。じゃあ……い、一緒に寝るか? その、夫婦的な感じで」
耳まで真っ赤になりながら、何度も大きく辰乃は
彼女は鼻息も荒く、
自然と間近で見下ろす美星は、なだらかで
黙って辰乃が目を
そして、脳裏にあの声が蘇る。
――美星って、キスが下手だよね? でも、んー……そゆとこ、好きだよ?
それは一瞬で、そして永遠にも思えた。
ただ、唇同士が触れただけで、そしてまた離れる。
舌と舌も触れず、行き来する
それでも、
そこに違う女の
「美星さん……あの、明かりを」
「あ、ああ。大丈夫だ」
「いえ、その……消してもらえないでしょうか。やっぱり、少し……恥ずかしい、です」
「あっ! そ、そういう意味か、そうだな! うん、そうしよう」
いそいそと立って
あっという間に闇が寝室を包んだ。
窓を覆うカーテンだけが、星明かりと月光で絵柄を浮かび上がらせている。ぼんやり浮かぶカーテンの模様を見ていると、少しずつ目が慣れてきた。
そして、
そっと辰乃の手が、美星の手に触れてきた。
「美星さん……ど、どうぞ」
「あ、うん。えっと。あー、なんだ。し、幸せにする方向でな、今後も色々考えるから」
「ふふ、わたしはもう……とっくに幸せです。さあ、美星さん」
まるで
光を集めて輝く
頭にはもう角が現れていたが、洗いたての髪を優しく
ちょっとでも気を抜けば、壊れてしまいそうな程に辰乃は細い。
その全てを抱き締めると、頭の中の女は消えてくれそうだった。
消えてくれと
「あ……美星さん、あの。角、邪魔じゃないですか?」
「平気だ、多分。その、全然大丈夫だから」
「は、はい」
「ただ、その……何か、えっと。ど、どうすれば……その、人間と同じで、いいんだよな?」
「はい……触れて、ください。わたしの全てに……どうか、今夜もお情けを」
そうは言うが、ちょっと美星は自分が情けない。
だが、どこか神聖で清らかな存在だと考えてしまう。
龍神の娘という彼女の肩書が、美星に合理での禁欲を
言い訳が立ってしまうことに
「辰乃、じゃあ、その」
「美星さん……わたし、切ないです。どうか、もっと」
「わ、わかった。その、すまん」
そっと胸の膨らみに触れる。
張りと
そのまますべやかな肌を撫でて、おずおずと美星は指を走らせる。
そして、股間のささやかな
「……ん?」
「ぁ……美星さん? まあ……忘れてました、その、わたし」
「えっと? 待て、落ち着こうか。落ち着こう、
「いえ、これは……ええと、嬉しくて」
布団の中から見上げる辰乃は、暗がりの中でもはっきりわかるほどに赤面していた。
そして……彼女の
そこには、本来ありえない筈の太くて立派なモノが生えていたのだった。
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