米だった話

遠い昔僕は米だったことがある。多くの品種がひしめく米業界の中で僕は名もなきノーブランドのただの米だった。しかも、5キロだとか、10キロだとか、一升だとかそんな単位ではなかった。たったひとつぶの米粒。それが僕の前世だった。

今では日本ではあまり米を食べなくなっているが、昔のひとはたいそう米を良く食べた。なので米問屋の倉庫の奥で、いついなくなってもおかしくない友達と、米俵の中で誰がいつどんなほうほうで調理してくれるのか、わくわくしながらそのときを待っていた。


「泥棒だーーー!」


僕の入った米俵は船に乗せられ、ここは遠い国で泥棒たちの餌食になったことを、パエリアになってから初めて気づいた。

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