第17話 零がいない、今
そう考えた時、ふと疑問が浮かんだ。
「そういやナイツオブアウェイクのメンバーは各々バラバラに生活しているのに、騎士団長って存在意味あるのか?」
脅威が無くなり皆がバラバラに生活していたとするならば、騎士を率いる必要はないだろう。
「ない。過去の名残だ」
返事は端的で感情もない。
「それに、大分話してしまったが、これ以上は騎士でない君には話難いさ」
と、苦笑いをする。
それもそうか。騎士は本来秘密裏に人類の脅威を退けてきた。昂我は今はこうして騎士二人と行動しているが、ただ黒騎士との戦いに巻き込まれただけで、いつ暴走するかも分からないから傍に置かれている。これ以上騎士の話を聞くのも悪いだろう。
「悪いな。僕は君が口の軽い男と思っているが、それが理由じゃない。ナイツオブアウェイクの話は騎士以外にあまり話せるものではない。一般人には全てが終わったら普通の生活を送ってほしいのさ」
「おいおい、誰が口が軽い男だよ。俺は言っちゃいけない事は何があっても言わない誠意の塊のような男だぜ? これでも信頼と安心を周囲にふりまいてるってお墨付きだ」
「そうですかね?」
何故か昂我の隣で首をかしげる凛那。
「何故、疑問系なんだ! 眼鏡でもかければいいのか、見た目から入れば疑われないのか!」
「まずはその軽い口調を直さないとな、一言多いって通信簿に書かれたことないか?」
「ないって! さっきだって凛那は寝起きが可愛らしいって話は誰にも言ってないんだぜ、あ」
「赤槻昂我、狙ってるな」
冗談だと分かっているだろうが、呆れた顔で浅蔵が俺を見る。
俺の隣にいる凛那に至っては、無言でこっちを睨んでいる。
「あ、いやこれもお約束かなーって……」
「余計なことは言わなくてもいいんです!」
もう! といって凛那は顔を背けてしまった。
「ほう、あの誰にでも人見知りだった凛那君が、ここまで打ち解けるとは。もう木の後ろにばかり隠れていた幼い頃とは違うようだ。あの頃はずっとついてきて可愛かったものだよ」
はっはっは、と笑うので昂我も浅蔵と一緒に笑いだす。
「せ、兄さんまで何言ってるんですかー!」
凛那は頬を染めて、うう、と小さく唸った。
「しかし、先ほどはこれ以上は言えないとは言ったが、今は仕方ない。レプリカを見張る役目の凛那君とは離れられないし、耳に入った分は仕方ない」
浅蔵の左手の甲の光が消える。ダイヤモンド・サーチャーの展開を解いたのだろう。
「黒騎士の言葉で気に掛かる事があったからあの後、屋敷の書庫で調べたんだ。黒騎士が僕達の騎士紋章を見抜いたのは騎士に恨みがあるから、その程度の知識は持っていると考えられる。しかし会話の中で『零がいない、今』と言っていた。それが僕は気にかかったんだ、その零とは一体何者なのだろう」
凛那も聞いた事ないのか浅蔵の言葉をオウム返しに口ずさむ。
「零……?」
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