ツキイチ

 僕は彼女を抱きしめる。

 ふたりでベッドに寝っ転がって、彼女を背中から抱きしめる。本来1人用のベッドだから、どちらかが寝返りでもしようものならそのまま転げ落ちてしまいそう。僕たちはベッドの上、子宮の中の赤ん坊みたいにちぢこまって、柔らかい範囲にぴったり収まる。


 僕は彼女のお腹、ヘソの下あたりをさする。優しく優しく、これ以上どうしようもないくらい優しく撫でる。いつもより体温が高い彼女はたまに「ごめんね」って言う。それは何に対しての謝罪なのか、僕はずっと分からないままだ。


 月に一回、1週間。

 彼女の股から血が流れる。


 その間、彼女はちょっぴり気弱になる。僕の顔を見て申し訳なさそうな顔をする。僕はいつも彼女のお腹をなでてあげる。大丈夫、大丈夫だよって。「優しいね」って彼女は微笑む。僕はそんな彼女に笑いかける。否定も肯定もせず、彼女のお腹をなで続ける。


 君のお腹をなでている間、僕は君を深く愛せている気がする。君についてくるいろんな付加価値を全部取っ払って、それでも君という存在を好きでいられる。君を愛しいと思える。君に優しくしてあげられる。僕は人をちゃんと愛せてるって、思える。


 だから僕は嬉しくなるんだ。本当は君が血を流す時をずっとずっと期待して待ってるんだ。


 月に一回、僕は彼女のお腹をなでる。大丈夫、大丈夫だよって。僕はちゃんと、彼女を愛せている。

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