第7話 砕く者vs奪う者
街へ出かけようと決めたものの一人で街を見て回るのはもう何度かやっているので一度宿へ向かい、誰か誘うことにした。
宿へ帰ると昼間ということもあり、皆宿を出ているみたいだった。
一様念のため宿主であるカル姉さんの部屋を訪ね今日まだ出ない人はいるか聞くとやはりパーティーメンバーということもあり皆出ているみたいだったが、カル姉さんが「あ!」と声を発し、とある部屋へ入っていったのでそれを追うと、昼間だというのにベッドの上で布団にくるまっているサーナの姿があった。
「眠い。」
「起きなさい!」
という無限ループのような言い合いをしているそれを見て母親と子供みたいだなと思った。
サーナはここに泊まっている女の子の中でも男勝りというか雑というか、そこがいいところでもあるがこのように度々起きないという理由で放置されている。
「いまなんじぃ?」
「もうお昼よ!ほら!もうみんなパーティー組んで行っちゃったわよ!」
「ふぇ?」
・・・。
「ハァアアアアアアアアア!!!」
ボフッ!と音を立てて布団が宙を舞った。
サーナによる蹴りが決まった。
脚力すげー。
それを感心しながら見ているとサーナがこちらを見た。
「あれ?ケイスケいるじゃん」
「おはよう、サーナ」
そう指差されたので、手を振って挨拶をした。
「おはー」
と返された
「母さん、着替えるから出てって〜」
「はいはい」
そう言ってカル姉さんは部屋から出てきて部屋を締めた。そしてこちらを見る。
「覗きはダメですよ」
「見ねーよ」
部屋の中から何かがドアにあたる音がした。
「死ね!変態!」
「だから見ないって!」
カル姉さんと食堂へ向かい、椅子に座ってサーナが降りてくるのを待った。
しばらくすると赤色の胸元がややはだけた上着に茶色のズボンを履いたサーナが寝癖だらけだった髪型をいつも通りのショートボブにセットして降りてきた。
「どお?」
と聞かれたので
「何が?」
と返すと、ハァとため息ひとつ吐いてカル姉さんのところへ行くと
「え!どうしたの!髪色若干濃くなったわよね!」
「そーなの!暗めの色にして見たんだ!」
などと会話が聞こえてきたのでサーナの髪を見たが、茶色は茶色だし、変化なんてわかるわけがないんだよな。
「それで、どうしてこんな昼間に宿にいるわけ?」
とサーナはカル姉さんからサンドウィッチを貰い、それを頬張りながらケイスケの前の席に座った。
「あー。それは今日の目標が終わったからだよ。1日に詰め込む必要もないからな」
「そーなのー。んで、今から暇なの?」
「まあそーなんだよな」
「じゃ、私も暇だし付き合いなさい!」
「いいぞ。むしろ俺から誘おうとしていたのだがな」
「あーそなの?じゃ丁度いいじゃない。」
そういうと残りのサンドウィッチを口の中に詰め込み「びずー」と口をモゴモゴとさせながらカル姉さんから水の入ったコップを貰い、それで一気に流し込んだ。
「じゃ行きましょうか!」
「そうだな」
二人で宿を出た。
「んで、ここら辺の人達は、優しい人多いから装備買うならこの辺りがいいかなー、オマケとかつけて貰えるし」
などと話しながら街をぶらぶら歩いていたんだが、俺は先程から謎の疑問を持っている。
それは。。。
サーナが紳士過ぎる。
率先して馬車などの通る道側を歩いたり、最初は俺がペースに合わせていたつもりが何といつのまにか俺はいつものペースで歩いていてそれにサーナが上手く合わせている。街の案内も的確で必要な情報を入れつつ面白いネタを提供したりと、情報の強弱が上手くつけられていて頭に入りやすい。
そして話す時は主導権を握りながら、タイミングよくこちらへそれを渡し、こちらからの話を聞き出すと、上手く話の主導権を自分に引き戻す。
こいつ男ならモテただろうな。と思いつつこちらの世界では紳士的な者への評価は高くないのか?と若干思ったりもしたが違っていた。こいつ女でありながら女に大人気だった。
「サーナ様!こちら最新のドライヤーなるものです!お使いください」
と、ドライヤーらしき形の物を持った女の子が駆け寄ってきたら
「ダメよ。女の子がそんな走り方したら、でもこれは楽しみね。貰っておくわね。ありがとう」
と受け取り
「サーナ様!こちら新作のケーキです!お口に合うかわかりませんが」
歩いているというのに皿の上に切り分けられたケーキを乗せた女の子が来ると、それをフォークで口に運ぶと
「美味しいわ、次またお店に行くわね」
と言って立ち去る。
それが何度もあり、話しが上手いのに話が最後まで続かないのである。
そして問題は街の女達から「あいつ何?」「キモいんだけど」「サーナ様から離れなさいよ」「下品な男。サーナ様の神聖さがわからないのかしら」
などなど、セラのこともあり、冒険者から目をつけられているというのに、街の女達からも敵視されるという結果に至ってしまった。
そしてそんなことが何度かありつつサーナの目的地に着いたみたいだ。
今回は俺に街を案内しながらサーナの目的地に行くというのがルートだった。
そしてサーナの目的地であるこの場所
「闘技場?」
闘技場がこの街にあることは知っていたが来るのは初めてだった。
「そうよ。闘技場、私さ。まだケイスケと手合わせしてないじゃない?だからやろうかなと。どう?」
カルマーラに入ってから俺はそこのメンバーと話したり、たまに同行したりするが、模擬戦のような形での戦いはやっていない。
誰にも誘われないし、皆は興味が無いのかと思っていた。それに俺のスキルは教えてないためここはやらない方がいいのだろうが、俺の答えは
「いいぞ」だった。
今日一日案内してくれたこともあるので、そのお礼も兼ねて、承諾した。
その答えを聞いて「よっしゃ!」と手を出して握手を求められたので、それを握り返し
「「よろしく」」と言い闘技場の中へ入った。
闘技場には何部屋もありその中にある冒険者vs冒険者という部屋に入り、観戦を無効にしてお互い準備室に入った。
試合は先程登録時に3本先取ということで決めて受付で提出した。
もし万が一のことがあってもここでは死んで10秒以上経過しなければどんな怪我や傷、負傷でも回復して貰えるらしい。その分一人一試合につき金貨一枚という値段がする。
そのお金は私が挑んだことだしということで、もつれ込んだ時のことも含めて5金貨サーナが払ってくれた。
準備室には椅子のみがあり、その椅子の前にはでかい扉がある。
この扉が完全に開いたらスタートの合図がなり模擬戦が始まる。
まずはサーナのスキルを俺は確認していない。これはマナー的な事も考えて俺はしていなかった。
そのことに俺はとてもいい判断だったと思っている。
本来なら悔やむべきところだろうが何故かはわからないが俺はとても楽しんでいる。
ワクワクが止まらない。
そしてサーナも俺のスキルは知らないだろう。
一試合目が終わると1分のインターバルがあるらしいレベル3になった強奪スキルは強奪時間は7分だから奪うタイミングが重要だな。
自己再生はあまり関係がないので、ここで俺が使えるのは体術スキルがメイン、そして奪えたら奪う。解析スキルは使うのは奪ったスキルの確認の時のみ。
よし。
考えがまとまったところで目の前の扉が開いた。闘技場の広さはサッカーコートくらいの広さだった。
お互いが扉から中へ入ると扉は閉まった。
【 3 】
【 2 】
【 1 】
カウントダウンがコールされそして
【 スタート 】
と同時にサーナはこちらに向かい走り出した。
右手に強奪スキルを発動させると右手に光が宿った。
サーナの攻撃は単純なものだった。
右ストレートでの初撃、それくらいなら体術スキルがあるため避け、サーナの体を触ろうと手を出したのがまずかった。
「貰った」
サーナの手が俺の右手首を掴んでいた。
「破砕!」
サーナの手が赤黒く光を纏った。
は?ワードからの不吉さはすぐに答えとして俺の右手首が答えた。
右手首を見るとサーナが触れていた部分が砕けていた。いや血が吹き出し、手首に関しては見るも耐えたい有様だった。
その瞬間〔 ブーッ! 〕と音がなり「勝者サーナ」とコールされた。
そしてすぐに扉が開き中から謎の黒服の人間が駆け寄ってきて俺の手にスキルを使うとなんともなかったように俺の手首はそこにあった。
痛みや苦しみというものがあまりにもデカすぎて気が狂いそうになったが俺は冷静で入られた。咄嗟の判断で自己再生を、心へ回した。そんなことが可能なのかすらわからないし実際できたのかはわからない。
ただ俺は冷静さを欠くことはなく今ここにいる。
過程はどうであれ結果うまくいったならそれでいい!
「どんなスキルか知らないけど見せたらダメ。やるなら徹底的に隠して発動するタイミングを考えないとね」
サーナはそう言い残し扉の向こうへ消えた。
地についていた尻を起こし、歩いて扉の中へ戻り先ほどの椅子へ座る。
スキルは破砕か。触れたものを破砕するスキルか。俺の強奪と似たようなスキルの発動である。スキルが発動する瞬間サーナの手が赤黒い光を纏ったのがその証拠。だからこそのアドバイス。
サーナを皆が宿に置いておく理由はこれか。
サーナは新人の域を超えている。
あと2本取られたら負け。
そして俺のスキルの発動条件がバレている。
そして触れると奪えるがもし別のスキルが存在しそれを奪ってしまったら俺のどこかの部位は破砕される。
仕方ない。強奪は一旦無し。ここは体術に絞っていくか。
1分後ドアが開き二試合目が始まる。
先程同様カウントダウンからのスタート合図でサーナは走ってきた。
そして右ストレート。
俺はそれを交わすと右足払いでサーナのバランスを崩した。
「え!」
油断だらけの足元をすくわれ、サーナは驚き声を上げたがそこまでしてしまえばケイスケの土俵である。
体制を崩している上から下へ押すように力を込めて一気に地に叩き落とし、容赦のない踵落としを相手の腹に打ち込んだ。
サーナはガハッと唾を吐きその場で気絶した。
その瞬間〔 ブー! 〕という音が鳴り響き「第2試合勝者ケイスケ」とコールされたのち後ろの扉が開きまた先程の黒服がきてサーナに回復スキルを使用するとサーナは目を覚ました。
「なるほど。体術系スキルを所持しているわけね。」
と呟いて扉に向かってサーナは歩いて行った。
バレるのはや。
まあ動きが普通の人間よりは早かったりキレがあったりするからなこれ。
それよりもやはりというかここでは手加減は無しなのだ。いくら女でもあれだけやっても何も文句言われないし、逆に言えば俺は手を破裂させられている。
だからこの世界ではそれが普通なのだろう。
【 おはようございますマスター。批判。何故今の接触時に強奪しなかったのか。無能ですか?】
唐突に頭の中で我が解析スキル?のリーズが煽ってきた。
「悪いかよ。つーかそんな同時にできねーってあいつ最後バランス崩した瞬間俺の足掴もうとしたんだぞ?そんな時に強奪しようなんて無理無理」
【 作用ですか。おやすみなさい】
リーズさんはお眠についたみたいだ。
俺は扉に戻り椅子に座った。
とりあえず次が重要だ。
強奪できないと俺にはこれ以外勝ち筋は残ってないように思う。
ここはひとつリスク覚悟で取りに行くか。
意思を固め奪う覚悟を決めた時、扉が開き三試合目が始まった。
第三試合の開幕は今までと違っていた。
それは今まで開幕ダッシュをしていた、サーナではなくケイスケが開幕ダッシュをしたからだ。
サーナは近づいてくるケイスケに合わせ蹴りを出すが、ケイスケはそれをスルリと避けサーナに接近し、右手で強奪スキルを発動、それに反応しサーナは右手で破砕スキルを発動、それと同時にサーナの脇腹へ左足での蹴りを決めた。
「まじ。スキルは囮ってわけ」
蹴りを脇腹にクリーンヒットされたサーナはこちらを睨んでそう呟き、両手を赤黒く光らせた。
「もうッ!面倒だ!やっぱ私に心理戦は無理ー!」
は?
そしてそのままこちらへ近づいてきて、その赤黒く光る両手で触ろうとするがケイスケはそれを避け続けた。
だがこれは避けてもそれなりのダメージが通る。何故なら拳を振り抜くとその瞬間その拳周辺が爆発している。
爆破による怪我程度なら自己再生がギリギリで間に合うため敗北には判定されない。
あきらかに破砕とは異なるスキルであるということだ。
数回の攻防の後ケイスケは行動に出た。
サーナが右手を振り抜くと同時に左手に自己再生スキルを発動させた。左手は緑色の光を纏った。そしてケイスケはサーナの拳を自らの掌で止めた。
その瞬間爆発。自己再生があってももちろん全回復は不可能。だが狙いは負けにならなければよしなので、結果的には作戦通りだったが、左手は見窄らしい姿になっていた。だがその左手は緑色の光が癒し続けている。
そしてサーナはそれに驚愕し、一瞬動きを止めた。
ケイスケはその隙を見逃さず、右手で強奪を発動させ、接触は無理のある接触ではなく、勝負を決めるための攻撃が自然と接触となる形を作り出した。
サーナの胸ぐら掴んでこちらに引いて足を払い背負い投げを決めた。そして同時に強奪が完了し、サーナが「甘い!」と言った次に「は?」と言ったのでサーナが咄嗟の時に使おうとしたということは、サーナの中で一番頼れるスキルを奪ったらしい。
そのまま地に叩きつけた。
倒れたサーナへ右の拳を打ち込み試合が終わった。
3試合目もケイスケが取った。
回復を終えたサーナが起き上がり「今のはどうゆうこと?私が発動をミスった?」とボソボソ呟きながら扉の向こうへ歩いて行った。
( リーズ 解析任せる )
【 おはようございます。マスター。やっと奪えたんですね。おめでとうございます。えーと解析・・・。完了。スキル名は粉砕、発動条件は同一対象への5回の接触。効果は対象の接触部位を粉状へ細かく砕く。ですね。5回の接触というのは強すぎるスキルへのリスクということになっていますね。ちなみに接触紋がケイスケさんの身体から4箇所確認できます。あーこれあの時奪ってなかったら粉々にされていたということですね。フフフ】
「フフフじゃねぇ!やべーなあいつ。まじか密かに必殺技の準備進めてやがったんじゃねーか」
ただ問題はサーナは3試合を経て4箇所を設置していたということだ。つまり俺はこのスキルを発動させるのは不可能に近い。できるとすれば自らの身体へ粉砕完了の5箇所目を使うことだな。はははは。
サーナが今までに発動させたスキルの強さの基準は一番強いのがこの粉砕。二番目が破砕で三番目が先ほどの爆発って感じだな。
一番強いスキルはそれなりにリスクを伴う。破砕スキル欲しかったと言っても仕方ないがこのスキルは今は無能すぎる。。。
勝ちパターンはこのスキルをうまく使うしかない、この4試合目でどうにか4つセットして5試合目に発動させる。これしかない。
だが勝てそうならここで決めるのがベストだ。
扉が開き第四試合のスタートがコールされた。
サーナは今までと違い、こちらの様子を伺う形を取ってきた。
これは好都合。こちらを警戒して何もしてこないならば一気に貼り付けに行く。
両手で粉砕スキルを発動させた。
輝きは無く、発動させた実感すらない。
なるほどこれなら気づけないわけだ。
距離を詰めまずは左ストレートで牽制すると、サーナが赤黒く光らせた右手を出してきたので、それを右手で払うと同時に粉砕スキルが反応し一つ目がセット完了。
相手との間合いを離すために左手でサーナを後方へ押し同時にセット。
そして再び両手に粉砕スキルをセット
サーナは先程のことでの動揺が伺える。
こちらへの攻撃が一辺倒なのである。
先程までの威勢や思考力が消えている。
こうもあっさり二つセットできるとは思わなかった。
「粉砕」「粉砕」「粉砕」「粉砕」「粉砕」
ボソボソとサーナは呟きながらこちらを睨んでいる。
「おかしい。粉砕エフェクトが出ない。どういうこと?爆砕ッ!」
サーナの左手で爆破が起きた。
「粉砕のみが使えないということね。なるほど。封印系のスキル?もしくは......」
ニヤとサーナの口の端が釣り上がり、こちらを見て笑った。
「ハハ!最高じゃん!ケイスケ、ここからが本番!」
そういうと先程までのサーナが嘘のだったかのようにこちらへ走ってきて、ラリアットの構えで突進、それを避けると上から振り下ろしエルボー。背中にもろにくらったが、その反動でサーナの背中に粉砕を設置。すぐにその右手に粉砕スキルを発動させ残り2つのセット体制に入る。
だが手を伸ばしたのがまずかった。
サーナの右手が赤黒く光を纏っており、その手でサーナの背中を触った手首を掴まれかけたその時無心だったが俺の足がサーナ脇腹を蹴り飛ばした。
「ガハッ」
サーナはカウンターを受けて飛ばされたが追撃はしない。いやできなかった。
今のはなんだ?
( リーズ 回答よこせ )
【 なんです?自慢ですか?そうですね体術スキルがLV4になったからではないかと 】
?
は!?
( レベル4!?3はどーしたんだよ)
マジか。人vs人での修行が流行る訳だ。
この戦闘だけでレベルが2も上がったのか。
じゃちょっと待て。何故レベルが2も上がった体術スキルを使う俺にサーナは先程と同じように対応できているんだ?
まさか。
【 そのようですね。サーナさんもこの戦いの中で成長し結果として体術スキルを獲得したみたいですね。あれだけ出来て何故体術スキルが無かったのか不思議だったくらいですので納得ではありますね 】
嘘だろ。後2つセットできてねーんだぞ
背中がジンジンと痛む。
自己再生が働き痛み自体は少しづつ引いているがそれでも気らないといえば嘘になる。
サーナは起き上がると「イッタァ」と体を動かし動くことを確認すると再びこちらへ向かって走ってきた。
ここは俺も前へ出る。
サーナの左のジャブを右手で払い、そこへ粉砕を設置そしてその次の手で終わりだろうと思ったその時
「やっぱり奪う系のスキル見たいね。動きに違和感がある。今のジャブはそれの最後確認だったんだけどうまく引っかかってくれた」
なっ!
気づかれた、たが、ここまできて引けるかよ!
そのままゴリ押しで右手を前に出しサーナの身体を触ろうとした。
サーナはそれを防ぐことをせずあっけなく最後の一つがセットできた。
「最後の台詞は粉砕完了といえば対象は粉々よ?」
「なんだ?俺にそれを教えるメリットはあるのか?」
「ないわね。最後の確認はこれよ。もしケイスケがそう言って私が粉々になったら貴方のスキルは他者からスキルを奪うスキルだと確定するからね。それが知りたいだけよ」
「今更隠すことでもないさ。粉砕完了」
その瞬間世界が暗くなった。
【 異常反応 理解。粉砕スキルの発動に反応しマスターの身体の紋も起動されました。発動条件が達成してしまったみたいですね。このスキル使い方次第では化けますよ。あーそれと、マスターご冥福をお祈りします】
嘘だろ。。。
〔ブー!〕
「同タイミングの敗北によりお互いに勝ち点が1入ります。よってこのマッチ勝者ケイスケとする」
そのコールの後、俺は闘技場の硬い地面の上で目を覚ました。
「回復できたのか」
「そうみたいね」
サーナも近くで転がっていた。
「やっぱり他者からスキルを奪うスキルだったのね。おかしいと思ったのよ最後の一つセットしようとしたのに発動しなかったから」
「あー悪いけどこれは口外しないでくれると助かる。あんまり知られたくないしな」
「そうね。なら私からも条件。粉砕スキルは返して。そしてこのスキルのことは誰にも言わないで」
スキルはそのまま時間が経てば強奪失敗となり返却されるし、別に他言しないでと言われればしないだけだ。
「オーケー。それで契約成立だ」
強奪失敗条件があるというのは教えない方がいい。これは普通に返したことにしておこう。
「よかった。隠し球だったのに奪われたからヒヤヒヤしたわよ。返してくれるなら安心ね。それに私今回でスキル獲得できたし満足満足」
「そーいえばどんなスキルだ?」
「うん?体術ってスキルねLVは1だけど」
やはりか。使い手により上昇値に変化があるのか。こと体術に至っては俺よりサーナの方がセンスがあるみたいだな。
「つーかさ。こんな無限回復の場所があるならここで魔王とやり合えばいいんじゃないのか?」
回復し放題なら簡単だろうに。
魔王でなくとも魔族から倒せるだろう。
「は?何言ってるの?ここは神殿よ?ここは中に入り怪我をしたモノを何でも直すそれがこの場所。魔王とて例外はない。以前ここに魔族を入れて叩きのめそうとした時があったのだけど、ここに追い詰めるまでに国民が襲われるわ街が襲われる。そしていざ入れてみたら、黒服達は敵まで回復させる始末。散々な結果に終わったわ。だからそれ以来ここは入場にも条件があったり金貨を取ったり色々変わったわね」
「なるほどな。つーかそろそろ出なくてもいいのか?」
「出ましょうか。次の人達も待っているだろうしね」
闘技場から出て、受付を通り持ち物を回収してから外へ出た。
外はいつも通りの街並みが続いていたが、そこに木霊していたものはいつもの活気溢れる声ではなく。
人々の悲鳴と逃げゆく人々の足音だった。
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