第6話 暫く
この世界に来てから暫くが経った。
元の世界に帰れる目処も立たないし、働かないと食っていけない等の理由から俺は仕方なく冒険者としての仕事をこなし続けていた。
すなわちゴブリン狩りだ。
前に手に入れた体術スキルのおかげもあるだろうが、ゴブリンの動きにもなれて複数同時に狩れるようにもなって来た。
「ほい」
無造作にゴブリンの胸を刀で刺し貫く。
子供程度の大きさでしかない彼らは、持っている武器をうまく使えばリーチの差で一方的に倒すことができるのだ。
もはやゴブリン如きに互角に殴り合う俺ではない。今ではゴブリンのスキルを確認しては使えそうなものだけ奪ってしまうくらいの余裕まである。
まあゴブリンから奪えるスキルなんてたかが知れているのだが。
カードを覗いてスキルを確認してみる。
「まあ弱いよなぁ」
スキル
強奪LV3
体術LV2
自己再生LV3
ゴブリン達から積極的に奪っているスキルは自己再生だ。文字通り怪我をしても自然に回復できるスキルらしくゴブリンの多くはLV1で持っていた。
たぶん冒険者を続けるならばかなり役にたつだろう。回復系スキルは重要なのは間違いないので速攻で奪っておいた。
同じスキルを奪うとレベルが上がりやすくなるらしく、ゴブリンを乱獲してレベルを上げた形になる。
強奪と体術は使っている内に上がっていた。基本的にはどのスキルも使えば使うほど上がるらしい。
「そろそろ帰るか」
魔石を拾って背負っていたズタ袋に詰める。
ゴブリン一匹では大した金にはならないが、大量に倒せば結構な金になるのだ。
◇◇◇◇◇◇
ギルドに着くと他の冒険者達の視線が突き刺さる。どうやら初めて来た頃ににSランク冒険者らしいセラに連れてこられたのが良くなかったとスロウがいっていた気がする。
もともと荒くれ者が多い職業なので、俺みたいななよなよした奴がギルドに入るのは気に食わないみたいな感じだとか。
とにかく気にしても仕方ないのでカウンターまで歩いて受付嬢に魔石を提出する。
ゴブリンの魔石が大量に詰まった背負い袋が大きな音を立ててカウンターに置かれる。体感で20キロちょっとくらいだろうか、最初の頃はひいひい言っていたが今では慣れたもんである。
「全部ゴブリンのやつです」
「はい、お預かりしますね」
受付嬢がにこりと笑って袋を受け取る。そして袋の中から魔石を取り出して1つ1つ確認しだした。
ぼんやりとそれを眺める。
この薄紫色に輝く石は魔力で構成された結晶らしい、色の濃さと大きさで値段が変動するとかなんとか。
魔石は街で加工され、街灯の明かりや魔力で動くコンロの燃料がわりにされるらしい。要はこの世界のエネルギー資源に近い立ち位置のようだ。
他には魔力を回復するためのポーションにもなるらしい。まあまだ魔法系統のスキルは持ってないので縁のない話ではあるか。
「ゴブリンの魔石とゴブリン討伐の依頼から金貨3枚をお渡ししますね、ありがとうございました」
「あじゃーす」
ニッコリと笑いかけてくれる受付嬢の笑顔が眩しい。ゴブリンを狩り続ける地味な日々の唯一の癒しといっても過言ではない。
今日は早めに切り上げたのでまだ日は高い。懐もそれなりに暖かいし、街に出かけてみるのもいいかもしれないな。
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