第5話 冒険者と新人宿

ギルドに戻りクエスト達成を報告して、報酬として銀貨1枚を貰った。


アレンの配慮により、ゴブリンの魔石を5つ分けてもらったことにより、クエスト報酬が5倍になっていた。


本来ならゴブリンは銅貨2枚らしい


酒を飲みながらアレンと会話をしている現在の場所はギルドの2階にある居酒屋である。


ギルドの2階が居酒屋ってどうなのだろうか。


アレンの話では酔っ払った冒険者は争いごとを起こしやすいから気をつけた方がいいらしい。


「それで、ケイスケはもう宿は決めてるのかい?」

そういえば、何も考えてなかったな。

「まだ決めてないな」

「それなら、カルマーラ宿に行くといいよ。新人冒険者限定でやってる宿なんだけどおススメだ。場所は後で案内するよ」

「助かる」

何から何まで優しいやつだ。


「なんダァ?アレンまた新人の子守か?」

酔っ払いの、男がアレンの肩に腕をかけ、絡んできた。

「ゲーズやめろ。人前だぞ」

どうやろゲーズというらしい。アレンの知り合いのようだ。

見た目は筋肉隆々でたくましい体つきをしているが、酔っ払っているためダラシなく見えてしまう。

「タスケテェ!アレェエエエエンー!」

また別の青年がアレンに抱きついてきた。

人気者すぎだろ。

「飛びつくな、痛いだろ。それと人前だぞ。スロウも酔っ払いすぎだ」

スロウというのか、気の弱そうな男だ。


「悪いな、ケイスケ。もう一人これをやりに来る。」

「へぇ」

ケイスケはその言葉を「もう一人来るから、少し待っていてくれ」と捉えて酒を飲みながら見守ろうとした。


「炎獅子ッ」

酒場の奥のテーブルからそう発せられた次の瞬間。

その声が発せられた場所に赤く燃え上がる、獅子の形をした化け物が現れた。

そしてその獅子は俺たちのいるテーブルへ向かい駆け出した。


奥のテーブルからこのテーブルまで、獅子の足で1蹴り。現在ケイスケの目の前に獅子の尻尾がブラブラとしている状態である。


暑い。


《もう一人来る》でなく。

《もう一人がこの人間を殺りに来る》ってことかァ!


スキルだよな。これどう考えても。殺意ヤバすぎるだろ。ここ酒場だぞ。他の冒険者は「いつものこと」といった風に意に返さず、平然と食事を続けていた。


「炎獅子か。またどでかいものを」

アレンは獅子を見てフッと笑いアレンの後ろに隠れているスロウを見た。

「お前が狙われてるっぽいぞ?」

「知ってるわッ!はよ消してくれ!アレン!ティカのやつ暴走してる!酔い過ぎなんだって、アレンを隠したのは俺だとか言い出しやがった!フザケンナって話だ」

「よく喋るなスロウ」

「アレン!聞いてくれよ!お前が来る前にここに水龍と炎蛇、それに風鬼まで使いやがったんだぞ!俺とゲーズで全力で戦ったんだぞ。」

スロウの口から物騒なワードが大量に出荷されている。

水龍、炎蛇、風鬼。。。

そして目の前に炎獅子

なるほど、居酒屋が2階にある理由がわかった気がする。


「ゲーズは酔っ払ってるんじゃなくて疲労でおかしくなってるだけか」

「当たり前だ!飲めるかよ!」

つーかこんな会話してるのに何でこの獅子は攻撃をしないんだ?

ずっとアレンとスロウのことを睨みながら動かない。

すると店の奥のテーブルから一人の女性が歩いてきた。


「獅子丸ちゃん?早く噛み殺して。何止まっているの?ほら早くそんな虫は噛み殺しちゃいなさ......あらっ!?アレン様ッ!」

その瞬間獅子は消えそしてその女性がアレンの元へ駆け寄ってきた。

赤いロングヘアの美人な女性だ。


「ご無事でしたか?集合時間におられなかったのでてっきり、スロウのやつが誘拐したのかと」


「ティカ!嘘はつくなよ!俺がアレンを誘拐するわけないだろ!八つ当たりだろ」

「うるさいわよスロウ」


「ケイスケ紹介するよ、彼女はティカ、そしてこの男はスロウだ」

「アレン様。この者は?」

「今日俺が遅れた原因ってことになるかな。ちょっとマスターから頼まれごとをしてね」

「ヘェ。この子がアレンを誘惑......」

「ティカ落ち着いて、この子は今日冒険者になったばかりの新人さ、だから誘拐とかってのはない。俺はこいつのサポートに入ってたんだ」

「新人冒険者のサポートを、アレン様が?なんとお優しい」

というとティカはアレンの隣の椅子に座るとアレンのグラスに酒を注いだ。


「俺たち四人はパーティー登録してるパーティーメンバーなんだ」

「パーティー登録?」

「そうだよ、パーティーってのは4人で組んでギルドに登録すればパーティーとしてクエストが受けられる。報酬は通常の2倍になる。一人でやった時の半分になるってことだね。でもその分効率は上がる。例えばFランク冒険者4人が組むとEランククエストまで受けられるようになる」

「?ならAランク3人が組んで一人がFだった場合はどうなる?」

「パーティーメンバーの、一番下のランクの人の一つ上までだからEまでだね」

なるほどな。しっかりとその辺は考えられているわけか。

「俺はAランクでゲーズはB、スロウがAでティカがBだ」

うん?

「スロウがAでティカがB?」

逆じゃないのか?

「そうだよ。むしろ逆だったら、スロウとゲーズでティカのスキルを押さえ込めないからね」

「なるほど。このスロウという男は案外やるみたいだ」

「ランクの基準はわかってもらえたかと思うがFランクが4人でEまで受けられる、つまりEランクってのはFランク4人分の強さということだ。昇格にはそれだけの実力がいる。ちなみにAランクはBランク4人分の実力。そして最後がS。これは20人いるかいないかと言われている。この国で有名な人だと、騎士のセラさんだね」


「セラってそんなに強いのか。Aランク4人分ってのだと案外いそうなものだけどな」


「Sランクに至ってはただの4人分じゃダメだ。はっきりとした役割分けされたAランク4人分なんだ。攻撃、防御、援護、回復の普通パーティーで役割として各々が持つスキルを一人で担うことができてSクラスなんだ」


なるほどな。無理すぎる。一人で前衛、後衛

、バックアップに回復。スキルのLVとかも考えるとセラってのはそんなに強かったのか。火炎スキルはLV6だったんだけどな。


「とりあえず、今日はお開きにしよう。流石にこの状態では、話にならないしね、ゲーズに宿までは案内させる。宿の名前はカルマーラ宿だ。ゲーズ案内頼むぞ」


「はいよ」


さっきまで倒れていた筋肉男がムクリと起き上がり「ついてきな」といって歩き出したので「ごちそうさま」とアレンに声をかけてゲーズについていった。


ーーー




「俺はゲーズ宜しく頼むよ」

ギルドを出たところでゲーズが改めて自己紹介をしてきた。

「俺はケイスケだ。今日から冒険者の新人だが、よろしく」

「おう!」


・・・。


ウウ


ゴホンッ


ハックショイッ!


なんなんだ。

明らかに何か話したそうにしているが、聞いた方が良いのだろうか。。。


「どうした?」

聞いた方が良いのだろうな


「いやなに。先程は恥ずかしいところを見せてしまったのでな。俺たちのパーティーが変に思われたんじゃないかと思ってな」


「別に。普通なんだろ?冒険者なら」

「冒険者なら......ね。どうなんだろうな。だがティカのことは変に思わないでやってほしい。あいつはあいつなりにしっかりやっているんだ」

顔を背けながら.....まさか。こいつティカのことを。。。

無理だろうなぁ。あいつアレン一筋って感じだったからなぁ。



「ゲーズお前まさか、ティカのことがす」

「好きではある。だがそれは女としての好きではない。家族としての好きだ。あれは俺の娘だ」

うーーーん!?

うん!?

「ハァアアアアアアアアア!?」

「悪いな驚かせちまって。あれは俺の子だ」

「ちょっと待て、あの子は何歳でお前は何歳だ?」

「俺は48であいつは16だ。スキルは母親のスキルを濃く引き継いでる」

「母親ってのは?いつか紹介するよ」

「楽しみにしてる、あと安心しろ、変に思ったりはしないし、むしろ楽しいパーティーだなって思った」

「そうか!それは良かった」

「つーか、新人のことそんなに気にしなくてもいいんじゃないのか?」

実際そこは違和感がある。新人にどう思われようが影響があまりないのではないだろうか。

「冒険者ってのは皆が皆手を組むことはない。先に倒した者へ報酬が出るのは当たり前だ。だがな。根本は魔王の討伐。それが無理でも封印する。そのためには冒険者同士が手を貸し合わなければならない。俺たちAランクってのは大体のやつはわかってる。新人だからって見下したりするのはCまでくらいだ。その辺からは新人に早く強くなってもらいたくなってくるんだよ」

「そうか。じゃ俺も頑張らないとな」

「頼りにしてるぜ」

「と、そんなこんなでここがカルマーラ宿だ」


屋敷だった。


外国の街並みを表した街を進んでいくとそこにあったのは、他の建物を圧倒するほどの別世界感。


要するに夜ということもあるだろうが。


ここは宿ではなく。幽霊屋敷である。


見た目はだが。


何故、幽霊屋敷と思うか?それは簡単だ。

建物の見た目は普通なんだ。外国の屋敷って感じで普通。


だが。隣の建物と違ってなんかドス黒いオーラを纏ってるんだ。


「えーと。ここ?」

「そうだよ。ここがカルマーラ宿さ」

「なんかドス黒いオーラを感じるんだが?」

「気のせいさ」

ニコッと笑顔で笑いそのまま屋敷の敷地に入り、さあお出でと手を差し伸べてきた。


いやいやそれもう完全に霊界へ連れていくとかそーゆーやつじゃん。


すると


ガチャと屋敷の扉が開き中からマダムが出てきた。

「あら?貴方。どうしたの?」

「新人冒険者だ。部屋は空いてるか?」

「空いてるわよ、何よ!来るなら言ってよ!お洒落できてないじゃないの!」

「いつでも綺麗だよカル」

「そんなこと言っても何も出ないわよ」

「本当さ、君は美しい」

「もう!お客さんの前で恥ずかしいわよ!」

頰に手を当てながらやめてと言うマダムとそれをからかうゲーズ(おっさん)


・・・。

なんだこれ。

俺は何を見せられているんだ。


「と!そうだった、今日はこの子を届けにきたんだ」

「わかったわ、それでゲーズ貴方はまだここにいるの?」

「いんや、明日からダンジョンだから今日は帰る。それじゃおやすみカル」

「暇な時に来てよ。寂しんだから。あとティカも」

「わかってるって、それじゃ宜しく頼むよ」

「はいはい」


そういって、ゲーズはマダムと話し終えると、俺のところまで来て「あれが俺の妻だ、それじゃ」っといって今来た道を帰っていった?


は?


ハァアアアアアアアアア!?

おいコラ筋肉!なんて出来た方を嫁にもらってるんだよ!

すごい美人だよ!

目の前のマダム様は!


「コホン。お見苦しいところをお見せしました」

似てるなぁ。

「私はカルマーラ宿の主の、カルマーラです。カル姉さんやカルお母さん、後はカルマーラ女王陛下でもなんでも気楽に呼んでください」

最後のはなしだな。


カルさんと呼ぶか。


「俺は新人冒険者のケイスケです。宜しくお願いします」


「それじゃまずは入って、何人か宿泊さんもいるから、仲良くなれたらいいわね」


「新人冒険者ってことで晩御飯もつけてあげるわよ」


ーーー



宿屋【 カルマーラ 】はこの町にある宿屋のうちの一つだ。

宿屋はこの町に5つあり、各宿ごとにサービスや値段設定が違っており、俺が今来ているカルマーラはその中で一番安いところである。

この宿屋は数年前から新人冒険者しか受け入れていないらしく、要は新人のための宿屋というわけだ。

安い上に良いサービスを提供してくれている。

なんでもカルさんの旦那がAランク冒険者チームってこともあり、予算はそのチームが作っているらしい。


魔王討伐という目標の元に新人が成長できる環境作りを行なっているのがここの宿だ。


ここは一泊、銅貨5枚


貨幣の価値はセラからもらった紙により把握している。

なんでも日本から来た人の一人がこちらのお金ではどのくらいの価値なのかを纏めて毎回日本からくるやつに渡しているらしい。

セラは毎回転成者が来るたびに城へ行くため、数枚は常に常備しているらしい。


紙によると

銅貨 100円

銀貨 1000円

金貨 10000円らしい。


ちなみに100以下の貨幣はないらしく、その桁にはならないように値段設定がされているみたいだ。


銅貨5枚ということは一泊個室で飯付き500円である。


今日のゴブリン退治のクエストの報酬として銀貨1枚を貰っているため、とりあえずは2泊できる。


新人期間は100日間。

冒険者を初めて100日以上の者は泊まれないのでそれまでに生活できるようにならなければならない。


つまり100日で日本円にして5万円である。


ちなみにギルドカードを提示して、冒険者登録日の確認を条件としている。


一年周期は俺たちの世界と同じみたいで、俺の登録日は1月1日になっている。


こちらの世界では新年会みたいな行事はないみたいだ。


食堂に行く前に、風呂に入る。

風呂は男女時間交代制となって降り、男の俺は丁度風呂の時間に来たためすぐに風呂に入りなさいと言われ風呂に入っている。


中には4人の青年達が楽しげに話しながら湯船に浸かっていた。


風呂の内装はよくある銭湯のような感じだ。富士山の絵があれば尚更良かったと思うような内装をしている。


俺は湯船に浸かる前に体と頭を洗う派なので、先に椅子に座り、体を洗い始めた。

石鹸などは俺たちの世界のものと、あまり違いがわからなかった。


ただやはり異世界。シャンプーや、ボディソープといった概念があまりないらしく、石鹸が一つ置かれているだけだ。


風呂の中の青年達からは「今日のクエストは楽しかったー」「お前が足引っ張らなければもっと余裕だったわ」「それ言うなよォ」などと会話が聞こえて来た。その中の一人は笑って話に乗っているだけで、何も発言はしてないみたいだった。


色々な人がいるからまあそう言う奴もいるろう。

俺の会社にもいた。

仕事はできるが話しかけると、あまりいい顔というか作り笑いを作るやつとか。

まあそういうやつとも上手くやっていけたからあの会社ではいい立ち位置にいたんだけどな。


また新人からスタートするとは思ってなかった。


そう思いながら体を洗い終え、アアァというオッさんのような声を出しながら湯船に浸かる。


若干の熱さはあるが、慣れると気持ちいい。


青年達の話が止まり此方を見ていた。


この宿に泊まる者としては、新人だとわかるのだろう。


100日間は一緒に過ごすのだからあまり、険悪な関係にはなりたくないな。


「 今日からここでお世話になる、ケイスケだ。よろしく頼む」

謙りすぎず、あえて普通に接する方が良いと見た。

何故なら冒険者だから。

冒険者ってのは先輩後輩はない。

その考え方はいつ冒険者になったかわからない、世間では意味がないからだ。

だからこそ、ここでも自分を下げたり相手を上げたりという事はしない。


冒険者は一概にして冒険者なのだ。


「新人か。最近この国も、冒険者を増やしすぎだよなー。いくら冒険者を増やしても魔王とか倒せるのなんて勇者くらいだっての」

一人がそれに応じて話をした。

ケイスケの判断は結果として良い判断だったみたいだ。

「魔王はそうでも、他にも魔物達が凶悪化すると言われているからだろ。俺らの担当はそっち」

その隣にいた人がそいつの話に返した。

「もしかしたらその人が勇者のスキル持ちの人かもしれないよ?ほら最近、王様が異世界から呼んだって」

ブロンド色の青年がまさかのことを言い出した。

異世界から呼んだって一般公開情報なのか?


「あー、それな。なんか今回のやつは失敗だったみたいだぜ?なんでもスキル無しを呼んでしまったらしいぞ」

そんな情報まで一般公開なのか?


「でもそいつ、あのセラさんに拾われたらしいよ。今頃、セラさんと仲睦まじくお泊まりしてたりしてな」

ハハハと冗談ぽく言い放ったそいつを殴ってやりたいよ。

俺が今仲睦まじく話してるのは、美人騎士様ではなく男4人だっての。


「流石にそれは無いって」

「だな」


「あ、の。ミールと言います。よろしくお願いします」

笑っているだけの青年がいつのまにか近づいてきており、この四人の中で初めて名前を聞いた。

自己紹介したのに名を名乗らないこいつらよりは、好印象を受けた。

「おう、ケイスケだ。よろしくなミール」

「はい!」

と握手を交わした。

それを見ていた3人も「あ、名前!」と突然声をあげ

「失礼したことを謝るよ。俺はラニスタよろしく」

知的な印象を受ける青年だ。

よろしくと返し握手した。


「名乗ってもらったのに名前を名乗らずにってのは失礼だったな。俺はグロウ。この中でで最も活躍しているのが俺だ。よろしく」

「お前は足を引っ張ると言う面では活躍してるよ」

とラニスタとグロウは先程同様に言葉を交わしていた。

「よろしくな」

グロウってのはこの中ではいじられキャラなのだろうな。


「最後は僕だね、ミュカ・エラです。よろしく。えーと、ミュカって呼んでください」

ミュカエラではなく、ミュカ・エラ?

訳ありって感じでは無さそうだし、ただ分けてるだけか?アレンもだけど、この世界には名前の数がバラバラなのか?育ちとかが関係したりするのだろうか?


俺は苗字を名乗ると異世界から来たってバレるから名を名乗る時は圭介のみを名乗っているのだが、こっちでも人によるのか?


「あー、そいつの名前は、天使に関わりのある名前だからそれを無理やり分けている。無駄に讃えられる。拝まれる。物が送られてくるなどなど。だから、ミュカとエラで分けてるんだ」

顔に出ていたのか。俺の疑問をグロウが答えてくれた。

何かと大変な名前だな。

よろしくとミュカとも握手をし、これで全ての自己紹介が終わった。




風呂を上がると晩御飯が用意されており、歓迎祝いということでいつもよりは豪華らしい。

白米に、肉、野菜、スープというメニューだった。

もう原材料が何かとか気にしないことにした。

怖すぎる。

それに美味しくて、腹を壊したりしなければそれでいい。


そして今からここに宿泊している、冒険者の自己紹介が始まる。


現在食堂にて俺を含めて9人の冒険者が会している。


皆んな、ここに泊まっているということは新人の冒険者ということになる。


男が5人、女が4人である。


「俺たち男の自己紹介は終わってるから、お前ら4人の自己紹介だな」

グロウが話を進行するようなのでそれに従うことにした。他の皆もそれに賛成のようだ。


「わかったわ、ちなみにスキルはどうする?」

「スキルは見せるのはいいが宿内でスキルの無断使用はカル姉さんに殺されかねないからなぁ」

「そうね、やめときましょう」

「カルさんってそんなに強いのか?」

「カルさん?お前ここに来た時にカル姉さんから呼び方の選択肢貰ったか?」

「あ、ああ」

「その中にカルさんってのが入ってたならいいが入ってないならやめておいた方がいいぞ。理由は言わんがこれだけは言っておく」

なんだかおっかないな。

「ちょー!グロウ!何言ってんのよ!幽霊カーニバル見れると思ったのにぃ!」

「え?ダメだったのか?」

「当たり前よ!新人が来たらそれを見て楽しむんでしょ!」

「マジで?おいケイスケ今俺が言ったことは忘れてくれ、普通にカルさんっていいぞ!」

「カルさん?」

「そうだ、カルさん!カルさんでいいんだ」

「カル姉さんじゃなかったかしら?」

「カルさんってのがふつ......う?」

「あらやだ。皆さん楽しそうに何を話してたのかしら?」

カル姉さんだった。

みるみるうちに顔が青ざめていくグロウが目の前にいた。

「今夜が楽しみねぇ」

「カル姉さん!待ってください!今のは違くて」

「新人冒険者のイジメは認めて?」

「いないです」

「それじゃあ、貴方は今ケイスケ君に、何をさせようとしてたのかしら?」

「いや、それはサーナが」

「私は止めようとしましたー」

「ハァ!?ちょ!待てサーナ!みんなも見てただろ?」


「「「何を?」」」


他の人の声がはもった。


「さあ、グロウちゃん。選択肢は1と210秒以内に応えないと両方と判断するからね?

1、カル姉さんのことをカルさんと自分の意思で呼んだ。

2、ケイスケ君にカルさんと呼ばせるように強制した。

さあ選んで?」

カルさんの目がすごく怖い。

恐ろしいというかドSのイジメっ子の目をしてる。ニヤニヤしてるし、この人ヤバい。


「ぃち。」

「聞こえないわよぉ〜?6、5、よん」

「1です!」

「はいわかりました。次からは気をつけてけください」

そういうとカル姉さんは部屋を去った。



「あれだけ?」

「に思うか?」

ラニスタがグロウの方を指差したのでそちらを見るとグロウが泡吹いて気絶していた。

「今夜がカーニバルの始まりなんだよ」

「へー」


「じゃ、グロウが気絶しちゃったし、私が進めるわ、私はサーナよろしく」

と、先程グロウとなんやらやってた女の子から自己紹介が始まった。

黒髪ショートカット。この子は元気っ子って印象を受けるな。

イタズラとかも好きそうだ。


「次は私、ラニスタの妹のフェリアと言います。よろしくお願いします」

お淑やか系

紫髪、紫の瞳はラニスタとおんなじ色だなって!?妹!?マジか?と思ってラニスタを見ると

「手を出したら許さんぞ?」

と言われた

「出すかよ」

「ならいい」


「次は私ね、私はナキですわ。貴族の娘ですのよ。よろしくお願いしますわ」

赤髪縦ロール、高飛車で貴族ってどこの漫画だよ。


「最後は私ね、私はドルゴニア・ハルカ・ナキと言います。よろしくお願いします」

ナキ?

それに3つの名前か。

まあ色々あるのだろう。

「ハルカと呼んでくださいね」


「俺はケイスケ、よろしく」


最後に俺が自己紹介をしてお開きとなり各々の部屋に散っていった。


グロウはというとそのまま放置されていた。


俺もどうこうする気はなくそのまま部屋に帰った。


部屋に入りすぐにシングルベッドに横になり天井を眺めながら思った。


長い一日だった。


夢じゃないんだよな。


するなり馴染めたのはそこが大きい。

実際これが夢なんじゃないかとどこかで思っている。

一回寝て起きたら、戻ってるかもな。


そしてケイスケは目を閉じた。

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