第3話 スキル

3話


「ま、とりあえず。スキルについて教えてあげるわ」


街を出ると、目の前には草原が広がっており、その奥には大きな木々が生い茂っている森が目に見える。


こっちの世界にも虫とかいるのか?気持ち悪いからあまり森には入りたくないんだよな。

「あの森に行くのか?」


「今は森には行かないわ、まずはここで色々と教えるから。草原にはあまり魔物は出てこないのよ、魔物は基本的に森の中や洞窟、ダンジョンに生息してるわ。だからこの草原は基本的に訓練エリアみたいになってるわ」

そう言って周りを見た、セラにつられて森を見ていた視線を周りへ回すと、そこには数組の冒険者たちが火を飛ばしたり、人間では考えられない速度で動いたりとしながら、戦っていた。


「模擬戦的な感じね。冒険者って人間同士のイザコザが無いわけじゃ無いし、むしろ多いかな。冒険者って性格がヤバい人多いからああやって仲間で切磋琢磨して少しでも強くなっておくことでいざという時に役に立つのよ」

「何故、魔物と戦わないんだ?」

仲間内で戦うなら魔物倒した方がいい気がするけどな。昔やったRPGとかでは魔物を倒して経験値を貰って、レベルを上げるってのが基本だったんだが?

「この世界のことなんだけどね」

セラがギルドカードを見せてくれた。

ほとんどの、情報が読めなく隠されていたが、唯一、一つだけ読むことができた。

火炎スキルLV6

「火炎スキルLV6?」

セラはギルドカードを高速でどこかにしまうと話を続けた。

「そう。他の情報とか見えなかったでしょ?それもギルドカードの持つスキル『隠蔽』自分が他者に見せたく無い情報を設定したりできる。基本的にはほぼ全て隠蔽しておくのが常識ね。あの時、王が使ったのはその隠蔽すらも打ち破る他者のスキルを無理やり見るスキル」

「王のスキルずるくね?」

「ま、王様だから?」

暴論すぎる。


「こんな感じでこの世界にはスキルがあってそのスキルにはレベルがある。そのレベルはどのように上げるかなんだけど、使い続けるってのが一番効率がいいの。でも対象は必要らしいわ。一人でずっとスキルを使い続けた人がいたけど、レベルは上がることなく体力使い切って宿屋へ救急搬送された人がいたからそこは間違いないと思うわ」

馬鹿なのか。途中で上がらないのは気付きそうなものだが......。


「スキルのLVをあげて戦うのか。スキルのLVを上げると何かいいことはあるのか?」

「あるわよ。スキルレベルは最大で10。そしてその中で段階ごとに強くなる。この火炎スキルの場合は、火の玉から火の柱に変化したわ。まだ10になってないからわからないけれど、そんな感じでスキルが一定のレベルで変化する」

「使い勝手が悪くなることもありそうなものだけどな」

火の玉から火の柱ってのは威力は上がるが、反面、火の玉では出来そうな小回りが利かなくなるなんてこともあるだろう。


「スキルレベルが10まで行けば3段階全てのスキルが思いのままに使えるようになるわ。これが派生スキルと呼ばれるものよ。後は変化せずただ強くなるスキルもあるから覚えておいてね。スキルの発動は頭の中でスキル名を唱えるのが初めのうちはオススメ。慣れてきたらイメージだけで発動できるようになるわ」


・・・。


「って言ってもスキル無いんだよね。スキルは何らかの条件を満たせば発現したりするからとりあえず、はいこれ」

と渡されたのは日本刀、袴、鉢巻だった。

一体そのアイテムはどこから出てきたんですかね。


「なんか、ニホンジン?って人が来た時に次来た人にはこれを渡してくれ、絶対喜ぶって言ってたんだけど、どう?嬉しい?」


ははは。


馬鹿なのか?そいつ。日本刀なんて握ったこともねぇよ。剣道を高校生だった頃に体育の授業でやったくらいだ。竹刀だけど。

「まあ武器無しでは、戦えないしな」

日本刀を、受け取るとセラは【?】といった表情をした。

「何だ?」

「この服と紐は?」

「いらねーけど」

「え!?いらないの?」

日本刀についていた刀ベルトをジーンズのベルトに巻きつけ、日本刀を帯刀した。

「微妙ね、なんかダサい」

「ジーンズにジャケットスーツの人間が刀を帯刀してたらそりゃダセーよ!」


「それじゃ私はこれで、仕事ほっぽって来ちゃったし戻るわ、あ、それとギルドカードは無くしたり奪われたりしないようにね」

「へ?」

「ゴブリンは森の中よ」

と手を振って街に戻っていった。

・・・。


・・・。


・・・。


スキルねぇ。

セラが去ってからケイスケは自分のカードを見て頭を傾げることになった。


スキル

強奪LV1

(強奪派生スキル)

隠蔽LV1

解析LV1




あるんだけど。スキル。



何がどうなっているのかはわからないが、どうやら俺にもスキルはあったらしい。

この隠蔽スキルにより王のスキルを免れたってことになるのか?


深く考えるのはやめておこう。どうせ予想することしかできないのだから。


それにしても強奪スキルねぇ。

何ともまあ物騒なスキルだな。

発動は頭の中でスキル名を唱えるだっけか。


( 強奪 )


頭の中で唱えるとケイスケの右手が淡く光を纏った。


なるほど。利き手にスキルの効果が付与されたということか。


そして約10秒間ののち、その光は消えた。


( 解析 対象 強奪スキル )


解析スキルというのがあるならこのスキルの使い方を解析できるはずだ。

何せこのスキルは、強奪スキルの派生スキルなのだから出来てもらわないと困る。


( 解析完了。強奪スキルLV1 継続時間10秒。効果強奪スキル発動状態で触れた対象からスキルをランダムに強奪。強奪成功条件 強奪後5分以内に強奪対象の活動が完全停止。強奪失敗 成功条件の未達成 時間内に達成できなければ失敗としスキルは持ち主の元へ返還されます。解析終了。これより解析システム【 リーズ】は休息をいただきます。おやすみなさい )


うん。突然頭の中で女性の声がしたと思ったら、すごく長く話して話し終えたら寝ましたか。


覚えられると思ってるのか?


無理だ。不可能だ。

だって説明が長すぎる。


纏めると、発動させて触れる。その後に成功か失敗があると。要は強奪したものをそのまま盗めるか、持ち主の元へ返還されるってこと。


そしてその説明から読み取ることができるのは一時的とはいえ、奪ったスキルは制限時間内は使えるということ。


そしてこの解析スキルは今は寝てやがる。叩き起こせば、使えるか。。。

リーズさん?いい声だった。

ナレーション向きの声だったから聞きやすかった。頭の中で流れてても違和感がなかった。

意思はあるのかないのか。


まあその辺は追い追いわかるか。


とりあえず物は試しだな。


ケイスケは森の方へ向かい足を進めた。

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