2020年のMLBルール変更


※解説は間違っている可能性があります。あらかじめ、ご了承ください。


※このエピソードは2019年に執筆したものです。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年のMLBは予定と大きく異なる状態で開幕する事になりました。詳しくはコチラ(↓)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884198528/episodes/1177354054910891863



●2020年にMLBが大きく変わる?

 2019年3月、2019年と2020年のMLBのルール変更について発表された。特に、2020年のルール変更は大きなものだった。このルール変更により、MLBが2020年に大きく変化するのではないかと思われる。



●ロースター(ロスター)の枠

 2019年までは、40人枠から選ばれたアクティブロースター25人(ダブルヘッダーの日は26人に拡大)がメジャーの試合に出られる。


※プロ野球の場合は、1軍登録されている29人(2018年までは28人だった)からベンチ入り25人を選んでいる。プロ野球は6人ローテーションが基本で、基本的には先発ピッチャー4人を外す。投げる予定が無い先発ピッチャーが1人ベンチ入りしており、ベンチ入りは実質24人。


 2020年からは、アクティブロースターの枠が25人(最低24人必要)から26人(最低25人必要)に拡大される。ダブルヘッダーの日は27人になる。要するに、枠が1つ増える。

(40人枠の方は40人のままで、まずは40人枠に入らないといけない。ここに入らないと26人枠にも入れない)


 メジャーの先発ローテーションは5人で回すのが一般的で、投げる予定が無い4人もベンチに入る。余程の事が無い限りは試合に出ないので、実質的なベンチ入りは21人。


 増える1枠を先発ピッチャーで使う(6人ローテーションにする)なら、実質的なベンチ入りは21人のまま。5人ローテーションのままで野手を入れるなら、実質22人になる。


 メジャーでも、いくつかのチームが6人ローテーションにするという話はあった。しかし、これまでに定着はしていない。枠が増えれば6人ローテーションを組みやすくなるので、もしかしたら、2020年からは6人ローテーションが一般的になるかもしれない。



●セプテンバーコールアップ

 2019年までのメジャーリーグでは、9月(セプテンバー)の初めからレギュラーシーズンの終わりまで、ベンチ入りメンバーが最大で40人になる。その40人は40人枠に入っている選手で、最大で15人(40人枠-25人枠)がメジャーにコールアップされる。理論上は40人対40人も有り得る。


 これが、2020年からは28人までに減少する。35人とか30人とかの様子見は無しに、いきなり28まで減る。元の枠が26人になるので、9月になっても2人しか昇格しない。「今日はこの2人を昇格させて、今度はこの2人を昇格させてみよう」と短期間でメンバーを入れ替えると思う。


 40人から28人にまで大幅に減るのは、試合時間が長くなるのを嫌ったのかもしれない。9月になると使えるピッチャーが増えるので、こまめにピッチャーを交代して試合時間が長くなりがちだった。


※イニングの途中でピッチャーを交代すると、投球練習のための時間が必要になるので、代えれば代える程に試合時間が伸びる。ポストシーズン進出を諦めたチームは、来シーズンに備えて若手を試すようになるので、ピッチャー交代も多くなる。


 セプテンバーコールアップについては、前々から「チームによってコールアップされる人数(試合で使える人数)がかなり違う」という問題が有った。その原因は資金力の差で、お金持ちのチームは大量にコールアップ出来るが、そうじゃないチームは2~3人しかコールアップさせられなかった。

(コールアップした選手に給料を出すので、コールアップさせる程にお金がかかる)


 40人を28人まで減らすのは思い切った変更だと思うが、30チームで資金力を同等にするのは難しいので、コールアップ人数を減らす事で差を無くそうという事だと思う。



●ピッチャーと野手の登録

 最初にアクティブロースターに登録される時(要はメジャーに登録される時)に、ピッチャーか野手かの登録が必要になる。ピッチャーとして登録された選手はシーズン中はピッチャー登録のままで、野手登録なら野手登録のまま。シーズン途中にピッチャーから野手になったり野手からピッチャーになったりは出来ない。


 ただし、後述する二刀流選手は特別。ピッチャーは、野手にはなれないが、二刀流選手にはなれる。同様に、野手もピッチャーにはなれないが、野手から二刀流選手になるのはOK。


 また、ピッチャーに使える枠が制限される。何人までになるのかは未発表。アメリカンリーグ(DH有り)とナショナルリーグ(DH無し)で人数が変わるかもしれないが、13人(ロースターの半分)程度になるのではないかと思う。

(ダブルヘッダーやセプテンバーコールアップでは枠が増えると思うけど)


 仮に13人だとすると、各チームは13人までしかピッチャーを登録出来ない。二刀流選手は特別で、元々がピッチャー登録だったとしても、ピッチャー枠を消費しないようになる。


※追記:ピッチャー枠は13に決定。セプテンバーコールアップ時には14に拡大する。



●野手の登板

 プロ野球ではまず有り得ないだろうが、メジャーリーグでは点差が大きく離れた試合で野手を登板させる事が珍しくない。「ピッチャーを使うまでもないわ」的な。ただし、野手に投げさせるのは負けている方。「どうせ負けるんだから、ピッチャー使うのモッタイナイよね」という感じである。


 先述のように、メジャーリーグの試合で使える人数はプロ野球より少ない。少ない人数で長いシーズン(プロ野球より20試合くらい多い)を戦うためには、ピッチャーの温存も大事になる。負けが決まっている試合でピッチャーを疲れさせるのはモッタイナイ。


 この野手の登板に関して、2020年からは「リードでもビハインドでも点差が7点以上(6点以上?)の時」か「点差は無関係で延長戦に入った時」に限られる。ただし、後述する二刀流選手は特別。

(10点差で野手が登板した後に3点差とかになっても、その野手は投げ続ける事が出来る。他の野手に投げさせるには、また点差が開くのを待つ事になる)


※MLBの公式サイトでは、この点差について「more than six runs」とも「six or more runs」ともしている。この2つは「6点より多い=7点以上」と「6点もしくは6点より多い=6点以上」で意味が違うような……(私が勘違いしてるだけかもしれないです)。


 2017年に登板した野手は25人くらい(その内の1人は青木宣親)だったが、2018年は過去最多の50人近くに。野手が投げ過ぎたので、野手の登板が制限されるのかもしれない。


 制限されるとは言っても、6~7点差で野手が登板出来るなら、これまでと大きくは変わらないと思う。「10点差以上じゃないとダメ」だったら「おいおい、厳しいな」って話になっただろうが、「7点ならOKだよ」なら「まあ、そんなもんか」って感じだと思う。


 これまでも、野手が登板するのは6~7点は開いてからだった。余程の事(延長戦でピッチャーを使い果たしたとか)が無い限り、3~4点差で野手に投げさせたりはしない。5点差でも早い。6~7点開かないとダメというルールになっても、そんなに困る事は無いはず。


 困るとしたら、ピッチャーを使い過ぎて野手しか居なくなった場合だけど……。3点差とかでピッチャーが居なくなったら、どうするんだろう?



●二刀流選手(Two-Way Player)

 現在もしくは前年のメジャーの試合において、同一シーズン中に以下の2つの条件を満たせば二刀流選手として登録が可能。


・投球イニング数が20イニング(=60アウト)以上になる。


・野手(指名打者を含む)として先発出場し、3回以上打席に立った試合が20試合以上になる。


※MLB公式サイトには「20試合で野手もしくは指名打者として先発出場する」という説明と「20試合で野手もしくは指名打者としてプレイする」という説明が存在し、この2つの説明を合わせると「野手として先発しておいて野手として20試合」という事になる。試合の途中でピッチャーになったらダメなのかも……?


 最低でも60アウト+60打席が必要で、早ければ1か月程度でクリア出来ると思う。2019年シーズン中に条件をクリア出来れば、2020年シーズンの頭から二刀流として登録出来る。


 免許制と言うか、二刀流になるには特定の条件を満たす必要が有り、二刀流であり続けるには条件を満たし続ける必要が有る。二刀流免許(←私が勝手にこう呼んでるだけです)を手に入れても、それが有効なのは次の年いっぱいまで。免許更新が必要となる。


 2019年に免許を手に入れたら、2020年も60アウト+60打席をクリア出来れば、有効期限は2021年までに延びる。どちらか1つでもクリア出来なかったら、免許は2020年で終わり。また二刀流になるには、2021年に免許を取り直さないとダメ(取り直したら有効期限は2022年まで)。


 この二刀流の規定が大谷翔平のメジャーデビュー(ベーブ・ルース以来の二刀流で新人王にもなった)と関係しているのは間違い無い。そのため、このルールは「大谷ルール」や「翔平ルール」とも呼ばれているらしい。


 しかし、大谷が大谷ルールでの二刀流1号になるのは難しそう。大谷は利き腕の肘を手術しており、2019年の登板は無いと言われている(無理して投げて痛めたら大変)。大谷以外にも二刀流候補が10人くらい居るのだが、2019年の内に条件をクリアする選手も居るかもしれない。


※2020年からは野手の登板に制限がかかるので、野手登録からの二刀流化は難しい。点差が開いた試合が何試合も有れば別だけど……。ピッチャーが野手として出る分には制限が無いので、大谷もピッチャー登録から二刀流化するはず。多分、4月後半~5月頭に二刀流になる。


※2020年になり、特例的に大谷が開幕から二刀流登録出来るようになった。2018年の登板が考慮されたらしい。


 ピッチャーが二刀流になれば、ピッチャー枠から外す事が出来る。仮にピッチャー枠が13だとしたら、二刀流が1人居ればピッチャーを14人使えるようになる。

(個人的には、ピッチャーは積極的に二刀流にしちゃえば良いと思う)


 野手が二刀流になったら、野手の登板の制限を受けなくなるので、点差や延長と関係無く登板可能に。とは言っても、3点差とかで野手に投げさせたい試合は滅多に無いだろうから、ピッチャーの二刀流化と比べると大したメリットではなさそう。


 二刀流が居て損をする事は無いので、数年後には二刀流がどのチームにも居る状況になるかもしれない。毎年60アウト+60打席をクリアしないとダメだけど。



 ピッチャーの二刀流化となると、20イニングの方は問題ではないが、3打席×20試合の方が問題。DH有りならDH(守備しない)で出れば良いだろうが、DH以外ではファーストかレフト(守備の難易度が低め)だろうか。マイナー時代に野手からピッチャーに転向した選手も多いので、そういう選手は元のポジションで出ても面白いかも。


 ポストシーズン進出が懸かっているチームだと難しいだろうが、早めに諦めたチームなら、来シーズンのために二刀流の量産をして良いと思う。2019年シーズン後半に色んなチームがピッチャーを野手として使うようになる……かは分からないけども、それはそれで面白いと思う。


※メジャーリーグでは、シーズン中盤以降に「ポストシーズンを目指して頑張るチーム」と「来シーズンのために頑張る(今シーズンは諦める)チーム」とがハッキリ分かれる。大物選手が後者から前者に移籍したりする。



●最低3人と対戦(Three-batter Minimum)

 2020年のルール変更において、最も大きな変更はコレだと思う。おそらく、このルールは日本でも導入される。二刀流などのルール変更はメジャー特有のルールなので、日本に影響は無さそう。

(大谷がメジャーに移籍して以来、プロ野球に二刀流は居ないし。野手の登板も無いだろうし。ベンチ入りは26人に増えるかも)


 これまで、ピッチャーは「バッター1人と対戦するorアウトを1つ取る事で交代可能(※ケガや病気の場合は例外)」だった。


 これが、2020年からは「バッター3人と対戦するorそのイニングの最後まで投げる事で交代可能(※ケガや病気の場合は例外)」に変わる。そのため、ワンポイントでの登板(=バッターがアウトにならなくてもバッター1人と対戦して終わり)が出来なくなる。


 このルール変更にも「ワンポイントを使ってるとピッチャー交代が多くて時間がかかる」という事情が有るのかもしれない。先述のように、イニングの途中でピッチャーを交代すると投球練習で時間がかかってしまう。


 ピッチャーがポジションを「ピッチャー→野手→ピッチャー」と変更する場合、まず、1度目のピッチャーで「バッター3人orイニングの最後まで」の条件を満たす必要が有る。そして、2度目のピッチャーをやる時にも、新たに「バッター3人orイニングの最後まで」が求められる……はず。



 現在、多くのチームが左のワンポイント(=左バッター1人との対戦のために左ピッチャーがワンポイントで登板)を使っている。


 左のワンポイント要員は「左バッターを抑えられればOK。右バッターには打たれても仕方ない」という立場だった(左バッターの所で出て右の代打が出て来たら監督の采配が悪い)が、これからは「左だけじゃなく右も抑えられないとダメ」になる。2アウトで左バッターの場面で登板しても、アウトに出来なかったらワンポイントで終われないので、右バッターとの対戦になりかねない。


「申告敬遠を使って3人と対戦した事にする」という作戦も可能だとは思う。仮にバッターの並びが「左→右→左」なら、1人目の左バッターから左ピッチャーを使い、右バッターは申告敬遠で歩かせておいて、2人目の左バッターと勝負する。これで3人と対戦した事になるのだが、タダでランナー1人出してしまうので有効かは微妙。


 メジャーで生き残るために二刀流化する左のワンポイント要員が増殖する……かは分からないが、ピッチャーとしての能力が同程度なら二刀流の方(ピッチャー枠を消費しない)が使われやすいと思う。


 そもそも、「左バッターは左ピッチャーが苦手」というのが思い込み。左バッターでも左ピッチャーに強い選手も居れば、右バッターでも左ピッチャーが苦手な選手も居る。


 メジャーリーグの各チームは大量のデータを抱えているはずだが、いまだに「左バッターは左ピッチャーが苦手」と思っているフシが有る。対戦成績を見れば、右に強いか左に強いか分かるのに……。

(イチローは左ピッチャーに強かったのだが、ヤンキース時代・マーリンズ時代は左ピッチャー相手に起用されない事が多かった)


 ワンポイント不可となると、今まで以上にピッチャー交代が重要になるのは確実。常に2手3手先を読んで交代しないと大変な事になりかねない。ピッチャー交代が下手な監督はクビになっちゃうかも。



●故障者リスト(IL/Injured List)

 現在の故障リスト入り期間(脳震盪での故障者リスト入りを除く)は最低10日間なのだが、これが最低15日間になる。変更と言うか、数年前の状態に戻る。ピッチャーが調整のためにマイナー降格した場合も、再昇格するまでの日数が最低10日間から最低15日間に増加。


※ピッチャーは15日に延びたが、野手は10日のまま。


 つまり、故障者リスト入りやマイナーで調整するピッチャーは、15日間はメジャーの試合に復帰出来なくなる。よく考えずに故障者リスト入りさせてしまったら、必要な時に必要な選手が使えない可能性が。


※選手が故障者リストに入る時、その選手をマイナーに降格させずに、代わりの選手をメジャーに昇格させる事が出来る。契約の関係でマイナー降格させにくい時に、故障者リスト入りという手段を用いる。降格させて問題無いなら、故障者リスト入りではなくマイナー降格になると思う。なお、故障者リスト入りには医師の診断が必要。


 数年前に故障者リスト入りの期間が10日間に短縮された結果、ピッチャーを休ませるための故障者リスト入り(いわゆる「休養のための故障者リスト入り」)が多くなった。


 故障者リスト入りで代わりのピッチャーをメジャーに上げておき、10日経ったら故障者リストから復帰させ、昇格させたピッチャーをマイナーに戻す。また疲れが溜まったピッチャーが居たら、故障者リスト入りだのメジャー昇格だのをして、10日経ったら(以下略)


 故障者リストを使う事で試合で使えるピッチャー(元気なピッチャー)が増え、ピッチャー交代の機会も増えて投球練習の回数も増え、試合時間が長くなっていたらしい。


※野手を休ませる時は、DHに入れたりスタメンから外すくらい。通常、野手が故障者リストに入るのは単純に故障したから。


 ルールを上手く利用したと言うか、ルールの穴を突いたと言うか、近年は気軽に故障者リスト入りさせていた所があった。「ちょっと休みたいっす」「10日経てば試合に出られるようになるし、故障者リストに入って休みなさい」という感じ。


 全治2週間程度のケガであれば故障者リストに入れるだろうが、全治10日程度だと判断が難しくなる。


 10日で治るケガで15日の故障者リストに入れると、治ってから5日も試合に出られない。故障者リストに入れなければ、10日待てば出られるようにはなるが、代わりの選手をマイナーから上げる事が出来ない。


 故障者リスト入りさせにくくなる(明らかなケガなら故障者リスト入りさせると思う)が、休めなくなる分、ケガが悪化するリスクが上がらないかは心配。最近は肘を痛めて手術をするピッチャーが多いし。



 選手を休ませるのも監督の仕事だと思うが、2020年からロースターの枠が1つ増えるので、それを上手く使えという事かもしれない。


 従来の先発ローテーション5人体制のチームなら、普段は「25人(2019年までと同じようなメンバー)+26人目」という形にしておいて、ケガ人が出たら「24人+ケガ人+ケガ人の代わり」という形(ケガ人以外の25人で戦う)にも出来る。これなら、故障者リストに入れるよりも早い段階で試合に出られる。


 ケガ人のポジションによって、元から居た26人目を残しておいたり、その選手を降格させて別の選手を昇格させる。ケガ人が続出したら、誰かを故障者リストに入れて代わりの選手を上げるしかないが……。


 先発ローテーションを6人にすると26人目の枠が埋まった状態になるので、何日も休む選手は故障者リストに入れると思う。



●まとめ

 2020年のルール変更は、全体的に、野手よりもピッチャーの方が影響が大きいと思う。特に、ワンポイント禁止によって中継ぎピッチャーが大きな影響を受ける。ロースターや故障者リストの変更なども有り、「誰を使うか」という判断に関わる変更が多かった。

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