スタットキャストについて


※解説は間違っている可能性があります。あらかじめ、ご了承ください。



●スタットキャスト(statcast)とは

 メジャーリーグで導入されているデータ解析システムの事。メジャーリーグの30球場全てに設置されている。


 軍用レーダーを搭載しており、さまざまな情報を収集・解析する。リアルタイムで多くのデータを提示出来るので、テレビ中継でもスタットキャストのデータが用いられる事が多い。


「球速」「回転数」「打球角度」など、スタットキャストには80を超える項目がある。ここでは、主な項目を紹介。


※項目は増えるので、現在はもっと多くなっていると思います。また、各項目名はメディアによって日本語訳が違うかもしれません。




●投球のデータ


・球速(VELO/Pitch Velocity)

 投球の速さ。かつてはスピードガンで計測していたが、現在はスタットキャストで計測している。


 スピードガン時代には、球場によってスピードガンの性能が違ったようで、正確な球速を測れていなかったらしい。


 日本最速は165キロくらいだが、世界最速は時速105マイル(169キロ)くらい。めっちゃ速い。



・回転数(SR/Spin Rate)

 投球の回転数。「実際に何回転したか」ではなく「1分間当たりだと何回転になるか(回転毎分。単位はRPM)」の数字。


 回転数が多い方が優れていると言われる球種は、フォーシーム(ストレート)・スライダー・カーブなど。


 回転数が多いものだと、フォーシームは2600回転とかになる。スライダー・カーブは2800回転くらい。

(人によっては、さらに回転数が多いボールを投げる)


 フォークやチェンジアップなどは回転が少ない方が落ちやすい。



・エクステンション(EXT/Extension)

「リリースポイント(=ボールが手から離れた位置)が投手板からどれくらい前にあるか」を示す数値。


 この値が大きいほど、バッターの近くでボールを投げている事になる。

(バッターの立ち位置が同じだったらの話で、バッターがキャッチャー寄りに立てばピッチャーとバッターとの距離は開く)


 背が高い選手ほど腕も長くなるので、リリースポイントも前になりやすく、エクステンションの数値も大きくなりやすい。


 他の選手と比較する際には「身長の何%か」で比較する事もある。


 身長が180センチでエクステンションが185センチだと、エクステンションは身長の100%を超えている。


 身長が190センチでエクステンションが185センチだと、エクステンションは身長の100%を下回っている。


 エクステンションだけを比較すると同じ185センチだが、身長を考慮すると、前者の方が優れていると言えない事もない。




●打撃のデータ


・打球速度(EV/Exit Velocity)

 打球の初速。投球とバットが当たって打ち出された瞬間の速度。


 基本的には速い方がいいが、内野ゴロの時は遅い方がいい事もある。ボッテボテの打球だと、内野手に到達する(内野手に捕られる)までの時間が長くなる分、内野安打になる確率が上がったりする。



・打球角度(LA/Launch Angle)

 打ち出された瞬間の打球の角度。水平に飛ぶと0度で、水平より上ならプラス、水平より下ならマイナスになる。


「45度が1番飛ぶ」と言われていた事もあるが、スタットキャストのデータによると、飛びやすいのは30度くらい。


 45度は高めのフライ(ポップフライに近いフライ)で、前ではなく上に飛ぶ感じになるため、あまり飛距離は出ない。40度くらいならホームランにもなるが、45度以上になるとホームランになる事は少ない。


※「~10度:ゴロ/10~25度:ライナー/25~50度:フライ/50度~:ポップフライ」と分類されている



・打球の飛距離(DST/Hit Distance)

 打球が飛んだ距離。どこまでボールが転がったかではなく、地面や壁などに当たるまでの距離。



・ホームランの飛距離(HR-DIS/Projected Home Run Distance)

 ホームランの平均飛距離は120~125メートルで、最長だと150メートルを越える。


「Projected(予測される)」なので、実際の距離ではなく推定の距離のはず。ボールが2階席などに当たって跳ね返ったりするが、そのようなホームランは「障害物に当たらなかったらどれくらい飛んだか」の数字のはず。




●走塁のデータ


・足の速さ(SS/Sprint Speed)

 走る時のトップスピードの速さ。最速の選手だと秒速30フィート(≒9.1メートル)を超えるので、トップスピードを維持出来れば100メートルを10秒台で走れる。



・一塁に到達するまでの時間(Home To First)

 ホーム(バッターボックス)から一塁に行くまでの時間。最速だと3秒33(走りながらバントして内野安打)が記録されているが、これは特殊な例なので、4秒で行ければかなり速い。


「Home To First」以外に「Home To Third(ホームから三塁まで)」なども計測されている。



・リード距離(LEAD/Lead Distance)

 ランナーがリードしている(=ベースから離れている)距離。3メートル半くらいリードを取ると、次の塁まで24メートルくらいになる。




●守備のデータ


・移動距離(DCOV/Distance Covered)

 バットとボールが当たった瞬間から野手(ピッチャーを含む)が移動した距離。足が速い野手だと、30メートルくらい走ってフライを捕ったりする。



・肩の強さ(ARM/Arm Strength)

 英語を見ると腕っぷしの強さのようだが、送球の速さの事。球速の野手版。「throw velocity」の方が日本人には分かりやすいかもしれない。


 ピッチャーとは違い、野手(特に外野手)は助走をつけてボールを投げる事が出来る。170キロ強が計測された事もあるのだが、それを除くと、外野手の送球は最速で160キロくらい。肩が強い選手だと、助走無しでも150キロくらい出る。



・ルート効率(Route Efficiency)

 フライ(ライナーを含む)を追う外野手が通ったルートの効率の良さ。打球の落下地点まで一直線に行くのが最も効率の良いルートで、この時のルート効率は100になる。


 蛇行しながら打球を追うと、無駄が多い(効率が悪い)ルートを通る事になり、ルート効率は低下する。ルート効率が97~8になれば、無駄のない完璧な動きだったと言っていいと思う。

(人間が寸分の狂いもなく直線的に走るのは極めて難しいので、ルート効率が100になる事はまずない)



・捕球の確率(Catch Probability)

 外野フライ(ライナーを含む)をキャッチする確率。


「打球の速さ・滞空時間」や「外野手の位置・移動距離」などの情報を元に「平均的な外野手だったら何%の確率で打球を捕るか」という数値を割り出す……という感じだったと思う。


 平均的な外野手を基準にした確率なので、実際に守備をするのがAさんでもBさんでも確率は変わらない……はず。


 データの蓄積や技術の進歩などがあれば、将来的には「この打球をAさんが捕る確率」「同じ打球をBさんが捕る確率」などが分かるようになるのかもしれない。


 確率が低い(捕るのが難しい)順に「星5(5 Stars)」から「星1(1 Star)」までランク付けされており、星5だと25%以下とかになる。確率25%以下だと、7~8割方ヒットになるレベル。



・初動の早さ(First Step)

 打球が飛んで(投球がバットに当たって)から野手が動き始めるまでにかかった時間。1歩目が早いほど打球を追える時間が増えるので、打球を捕る確率が上がる。


 守備の始動が打球が飛んだ瞬間だった場合、初動の早さは0秒になる。打球が飛ぶ前に動き始めていた場合、初動の早さはマイナスになる。0.1秒早かったなら、初動の早さは-0.1秒。



・持ち替えの早さ(Exchange)

 ボールをグラブ(ミット)から利き手に持ち替える際の所要時間。特に、二塁への盗塁を阻止する時のキャッチャーの持ち替えが注目される。早いキャッチャーなら0.6秒程度で持ち替えて送球に移る。


 持ち替えるのにモタモタしていると、送球するまでに時間がかかってしまうので、送球自体が速くてもアウトを取る確率が下がる。



・ポップタイム(POP/Pop Time)

 キャッチャーの盗塁阻止能力を示す数値の1つ。


 キャッチャーが投球を捕ってから塁に送球が到達するまで(キャッチャーが投球を捕る→ボールを利き手に持ち替える→送球する→塁に届く(野手が送球を捕る))の時間で、二塁への送球の平均は2秒強。1.8秒を切るとかなり早い。


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