第3話 レベルと新しい仕事
隆行はその後、異世界への別のドーアを見つけて、今はそちらを主な出入り口にしている。
美香が持っている鍵は、倉庫の予備の鍵だが使わないようにと言い含めて、息子である先代の店長に渡してあった。ところが、最近店を継いだ孫の由紀子店長が、そのことを知らずに美香に渡してしまったのだ。
しばらく後に話を聞いた隆行は慌てたが、由紀子店長の報告を聞く限りでは問題も無さそうなので、こっそり様子を見ていたのだという。
別のドーアから入り、美香が来る前にこっそり第4倉庫で待機して観察すること数度。
思いの外豪快な美香の掃除っぷりに、笑いをこらえるのに必死だったらしい。
「ええ?そんなに私、豪快でしたか?普通にシューって殺虫剤で……」
「いやいや、美香さん、なかなか大した腕前でしたぞ。あの重いレーキをぶんぶんと振り回すとは、レベルも相当上がったじゃろう」
「レベル?」
「ああ、それはじゃな……」
簡単に言うと、向こうの世界で魔物を倒すと、普通に筋トレするよりも若干力が強くなり、魔法に対する抵抗力が格段に上がるらしい。冒険者ギルドに行けば、魔法に対する抵抗力を測ることで、おおよその強さの目安が分かる。それがレベルだ。
ちなみに隆行はMaxのレベル99。これは99パーセントの魔法を無効にするという、驚異的な強さだった。
そして美香は……
「まあ、美香さんは元々素質があったんじゃろう。正確なことは分からんが、50くらいには、なっていそうじゃの」
「そうなんですか。ふふ。まだまだですね」
さらっと流した美香だが、異世界の冒険者たちのレベルは平均値が30程度なので、充分ダンジョンボスとしての威厳が保てるだろう。
「一度、早いうちにアシドの冒険者ギルドに顔を出しておくと良いかもしれんの。そこでならレベルを測ることも出来るはずじゃ。美香さんも冒険者として登録できるはずじゃから、そのダダとか言う鳥族に連れて行ってもらえばいい」
ダダとはうっすら繋がっている絆のおかげで、あまり複雑な内容でなければ念話でメッセージをやり取りできる。
美香が向こうに行く場合には、前日にこちらから連絡を入れる手はずになっていた。
控室に置いてある殺虫剤は、向こうの世界の魔物も倒せる強力なタイプだから大丈夫とは思うが、くれぐれも気を付けて、危険と思ったらすぐに引き返すようにな。そんな助言をもらって、美香は週4日のパートのうち2日を、隆行の指示のもと商品の買い付け兼品出しをするという名目で、第4倉庫のダンジョンへと潜ることになったのだ。
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