第2話(爺や視点)

雲よりも高い位置にあり、浮いていることから、天空の城と呼ばれる魔王城。そこに、一人前の魔王を目指す少女と爺やがいた。


少女「カキプー、カキプー、何処にいるの?出てきて~。」


お嬢の声を聞きつけ、爺はコンマでそばに駆けつける。


爺「どうしましたか?お嬢様。お出かけですか。用意はしてありますよ。」


少女「違うの。そうじゃなくって。またドーナツ食べたいのぉ~~!」


可愛くお嬢が悶絶する姿に爺は涙を流す。可愛すぎですよ。


爺「しかし、あれは旦那様が人間の住処に行ったときのおみあげ。ここにはありませんよ。」


少女「何で、何でないのよ~。だから、ここは好きじゃないの~。久しぶりに戻って来たのに。もうっ。」


お嬢様の言うことは一理ある。だから、否定しづらい。それも爺は理解していた。ここにある食材は限られている。魔物の目玉、ドス黒い腸などどれも美味しいのだが、常人なら三日もいれば狂ってしまうだろう。我らが常人ならばの話しだが。


駄々をこねてもここにはないので、今回は諦めるしかない。そう思っていたのだが……。


少女「私決めたよ、カキプー。勇者学園に編入する~~!!」


爺「お嬢様!?今なんと……。」


少女「だってぇ~、魔王学園にはドーナツがあんましないし~。ここはグロテスクな食材ばっかだし~。今は女の子は誰でもかわいいが好きなんだよ?私だってオシャレしたいし、かわいい物食べたい~~!」


爺「ですか……。」


むぅ~と怒り顔をしている。こうなると爺は言い返せない。


少女「カキプー、お願い。さ・せ・て」


上目遣いでお嬢様が尋ねてくる。これは男にはキツい。つい味方をしたくなってしまう。


爺「お嬢様、旦那様にはこれを言いましたか?」


少女「言ってないもん。カキプーにだけ。」


爺(ふぅ、良かった良かった。これを旦那様に言われたらなんて言われるか……。)


少女「ごめん……言った。」


爺「なんですとぉぉぉ!!」


嘘をつかれたことよりも、伝えたことに驚愕する。しかし、爺を何度も驚かすお嬢様のことだ。嘘かもしれない。確認する必要がある。


爺「ふっふっふ。もうお嬢様の冗談には騙されませんよ。本当のことをおっしゃって下さい。」


少女「………………。」


黙ってしまうお嬢様。昔から言い訳が出来なくなると黙ってしまう。お嬢様のクセが出てるということは、これは本当だ。爺は覚悟を決める。爺がなんと言われようと耐えるつもりだ。


爺「旦那様は何と……。」


お嬢様はケータイをつき出す。


大魔王 ベルゼブブ

to:自分

一日前


良いよ🤗楽しんでおいで😙カキプーにも認めてもらうんだぞ😏😏

でも、たまには連絡してほしいですじゃないとスネるからな😭😭

来るのは週一🤔いや、もっと早くでもいいからな🤣🤣

いつでも影から見守っているよ😎😎😎


爺「これを旦那様が……。」


可愛らしい文面。とてもとてもあのイカツイ旦那様には似合わなかった。ここ十年、関わっていない間に何があったのですか?と疑問に思ったが、今はいい。旦那様が認めている。それは事実だ。


少女「そーなの、分かったでしょ。認めているの。パパたちは!だからお願い。ミ・ト・メ・テ」


爺「仕方ないですね。認めてましょう。私が手続きを行います。」


ここまでするとは……完敗だ。本当にお嬢様の行動力は素晴らしい。爺もこれから頑張らんと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


~結構いろいろあって~


少女「勇者学園に着いたぁぁ~~。」


爺「手続きもろもろの問題も解決いたしました。」


少女「やっぱりカキプーは頼りになるね。これからも宜しく~~。」


爺「はい。宜しくお願い致します。」


転校初日といえども、親族が学園までついてきている時点で、周りから見れば不思議な光景だ。当然注目を集める。しかし、元魔王学園生である魔王Sちゃんにはその常識が全く無い。


魔王「カキプー、カキプー。何で私達は周りに見られてるの?勇者学園の制服きちんと着てるよね。」


爺「人とは不思議な生き物なんです。自分と違っていたら注目してしまうものなのです。角が生えててるだけで見たくなるものです。」


魔王「そうなの?不思議よね~。じゃ今度は股の間に大きい角を生やしてるガイコツさん連れてきたらもっと注目あびるんじゃない?」


爺「それはどうでしょう?人とは不気味の谷があるらしく、少々自分と似ているだけだと嫌悪されてしまうらしいのです。」


魔王「難しい~。何でこう簡単になんないのかしら。私がここの領主になったらもっと分かりやすくする。」


爺「いつの日か、ここも滅ぼして簡単に変えましょう。」


魔王「絶対ぃ~、この地を変えてやるぅぅ~。」


少女は周りにも聞こえるほどの大声で宣言をする。こんな町中て叫ぶなんて勇気ある行動、前のお嬢様はしなかった。お嬢様の成長に爺は涙を流す。


爺「今のお嬢様なら必ず達成できますよ。ぐすっ。」


爺が褒めたのもつかの間、さっきの頑張ろう的な表情はみるみる楽しげな顔に変わっていく。


魔王「第一目標設定完了。何個溜まっていくかなぁ~~。」


少女はにこやかに笑っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


爺「お嬢様、勇者学園入門編のおさらい理解できましたか?」


魔王「一切頭に入ってきません。カキプー先生ー。もう一度お願いしまーす。」


爺「いいですか、次は理解してくださいね。勇者学園、通称キャラ学園と呼ばれる学園には勇者になりたいと望む生徒が通っています。そして、卒業後は立派にラノベの主人公として暮らせる生徒を育てる学園の一つです。ここまでは分かりましたか?」


魔王「はーい。」


爺「勇者の名を与えられた者は百を超えていて、それぞれ称号をもっています。他にも、村人、鑑定士などたくさんいますね。鍛冶屋や美食家など少ない者もいます。当然、多い勇者などは個性を発揮するため、一癖も二癖もある者たちが大半をしめています。じゃないと主人公なんて出来ませんしね。」


魔王「そーなんだー。」


言葉に力が入っていない。完全に理解するのを諦めた表情。それでも、爺は気づかず話しを続ける。


爺「今から編入する学科は魔術科。魔法の基礎を学び、実践を経験して成長するクラスです。そこでお嬢様には未来のお婿様を探してほしいのです。」


魔王「お婿さん?何でー?」


反応は急に変わる。そこしか注目が言ってないようだ。


爺「いいですか、お嬢様はもう十二歳です。最後まで通い続けると結婚年と呼ばれる十五歳でもまだ学園にいるこのになります。爺やは出来るだけ早く結ばれてほしいのです。結婚年を逃すと次はまた何年も……。」


魔王「わかったー。頑張るよー。第二目標設定完了と。お婿様を見つけるだよね。」


爺「本当は魔王学園で見つけてほしかったのですが……。」


魔王「ほらまた言ってるぅ〜。カキプーの悪いクセだよ。」


爺「すいません。では、行きましょうか。」


彼らは会話を終え、飛んで学校へ入っていった。

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