番外編 硬い背中に、当ててんのよ
――あたしは昔から、海が好きじゃない。チビなのにやたらと大きい胸に、厭らしい視線が集まるからだ。
だが、幼馴染の
バレー部のレギュラーから落ちたあたしを励ます為に、夏休みを活かして羽を伸ばす場を設けた。表向きはそうなっているが……実の所は、あたしと
あたしが海を嫌っているのを知っていて、この場をセッティングしたあいつに、感謝していいのかは微妙な所だが……まぁ、竜斗君を呼んでくれたことに免じて、今回は大目に見てあげよう。
他の男だったら死んでも御免だが、竜斗君になら……うん、そういう目で見られるのも、悪くない。いつからそう思うようになったのかはわからないが、気づけばあたしは人生初のビキニ姿で、この場に訪れている。
案の定、あたしの赤いビキニ姿に周りの連中はじろじろとやらしい視線を向けてくる。……だが、竜斗君はいつも通り紳士的でいてくれた。
あたしも彼の逞しい肉体美を拝めたので、今度慶吾にはパフェでも奢ってやるとしよう。
――そうして、胸が育つ前の小学校以来となる海を満喫していく中で。あたしは無意識のうちに慶吾や竜斗君を振り回して、子供のようにはしゃいでいた。
体や視線が気になって避けていただけで……本当は、ずっとこうやって遊びたかったのかも知れない。
「いつっ!」
その勢いで、羽目を外し過ぎてしまったのだろう。あたしは沖まで泳ぎに行ったところで――足を攣ってしまった。
早急に駆けつけてくれた彼に、抱き止めて貰えなかったら。あたしはそのまま……溺れていた。
「大丈夫!?
「う……うん……ごめんね、竜斗君」
あたしを背負って海岸まで泳ぐ彼は、息一つ切らさずあたしを気遣ってくれる。そんな彼の背中は、とても硬くて逞しくて、優しい。
どこまでが
――だが、少なくとも。あたしの「女」が、彼の逞しい「男」に魅入られているのは、確かだった。
彼の背に、むにゅっとやらしく押し付けたあたしの胸は、先端からその逞しさを敏感に感じ取っている。その悦びと相反する、恥じらいに苛まれて……結局今日は、足の大事を取るという建前で、早々にお開きとなってしまった。
でも、それで良かったのだろう。あのままずっと、彼の近くにいたら……あたしはきっと……。
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