アレンの略歴

 「公女」も随分と長くなりました。

 ここで一度、主人公のアレンの略歴をざっくりと振り返っておこうと思います。


・0歳時

 大陸を放浪していたエリンとナタンに拾われる。

 二人はこれを契機として、東都に居を固めました。

 『アレン』という名は魔王戦争の英雄『流星』から。

 ただし、エリンさんもナタンさんも英雄になってほしいなんて、一度たりとも考えたことはなく、ただただ彼の幸せを願っての名づけです。


・幼少期

 東都獣人族の中ですくすくと育ちます。

 幼馴染である『アトラ』が事故で死亡して以降、様々な場面で虐げられるも、両親の愛情と義妹のカレン、彼の懸命な努力を認めた一部の大人達や獣人の支えにより、少しずつ認められていきました。

 魔法はほぼ独学。体術には師がいます。


・王立学校時代

 入学試験にてリディヤ・リンスターと出会い、初日で学校長を泣かしました。

 獣人族の『姓無し』という社会的地位は、王都においても強い蔑みの対象であり、僅か一年の学生生活中、同期生で深い関係性を結んだのはリディヤを除けば、シェリル・ウェインライト、ゼルベルト・レニエのみ(ニケ君とはそこまで話したことがない)。

 黒竜、四翼の悪魔(※巻によって『双翼』と表現されていますが意図的です)、吸血鬼の真祖といった怪物達と刃を交えたのはこの頃。

 結果として、親友だったゼル君を喪っています。

 リディヤの依存度はこの時点で相当極まっていて、積み上げられた武功に対する莫大な褒賞及び自分のお小遣い管理を、アレンに全て一任しているくらいです(甘えでもある)。

 その中には王国各地の孤児院に対する支援も含まれていて、大学校の後輩の中にもその支援を受け、学ぶことが出来た子もいたりします。

 なお、資産総額そのものはアレンの投資判断のよろしきで、むしろ増加している模様(この行動で、アレンはリディヤから報酬を一切得ていません。曰く『下宿先の家具代金を返しているだけ』)。

 アレン自身は、戦功を積み上げてしまうと問題の多発(主に貴族守旧派から)が容易に予見された為、表向きは全てリディヤ、シェリル、ゼルに。

 褒賞の使い道は、


・両親への仕送り(※エリンさんもナタンさんも殆ど手をつけていない模様)。

・カレンの学費(王立学校とその後の大学校含む)と教材代

・各地の孤児院への莫大な寄付(※匿名)

・ゼル君のお墓の建立


 に殆ど費やされていて、彼自身は実の所使っていません。

 ゼル君を喪い、留学するシェリルを見送り、リディヤと共に大学校へ。


・大学校時代

 所属したのは王国最凶魔法士の一角である教授の研究室。

 テト、ギル、イェン、少し遅れてゾイが入ってくるまでの一年間、ほぼほぼ二人きりで過ごします。『剣姫の頭脳』の異名が広まっていったのはこの頃です。

 大学校に進学したこと自体、多分に政治が絡んでおり(※主にアレンをどう栄達させるか問題)、二人が最低三年間は学生生活を継続することは確定していました。

 この一年間を経験した結果、リディヤの依存度が極まってしまい、苛烈な面接を突破したギル君とイェン、ゾイは半死半生な目を見ていたりします。

 王立学校時代は後輩を持てなかった反動か、後輩達には甘々で、自分の創ってきた魔法式や訓練方法を惜しげもなく提供。

 結果、ギル君とイェンは途中で脱落しましたが、テト嬢は全ての訓練を耐え抜き、一部の分野ではアレンを超えました。

 彼が自分を『一般人』と呼称するのはこの体験と、リディヤという天才、シェリルという俊才、ゼルという才能を努力で超越した男、を見て来たことが大きいです(※カレンと自分との才能差を認識していたのもあり)。

 テト以降、彼と関わった後輩達は全員が後世において『列伝』を書かれることになります(※筆頭は【天魔士】の師となるテト嬢)。


・現在

 王宮魔法士試験に落ち、ティナ・ハワード、エリー・ウォーカーの家庭教師に。

 これ、ある意味で貴族守旧派の嫌がらせ。

 アレンが落ちることは誰も想定しておらず、結果が伝わった後、王宮内では秘密会議が行われています(※アレンの社会的地位の向上は既に政治問題化していた)。

 王立学校入学試験以降、初めて彼と別れ、先に南都へ帰省していたリディヤ(彼をサプライズで祝う為に)も『落ちる』ということ自体考えたこともなかった為、対応が遅れました。

 ただ、彼とリディヤは知りませんでしたが、『ハワードの忌み子』は将来の大禍根であり、王国の大人達はジェラルドの暴走を奇禍とし、問題解決を図った裏話が存在します。これは勿論――『リンスターの忌み子』を救った、という大偉功を既に立てていた為です。

 結果ティナは魔法を使えるようになり、一先ずの悲劇は回避されました。エリーの運命も『学びたい』と手を伸ばしたことで、大きく変わっています。

 以降は、web版、書籍版でかなり違いますが、ステラ・ハワードを救い、フェリシア・フォスと共にハワード、リンスター合同商会を運営。オルグレンの乱、南方戦役を鎮め、『炎魔』リナリア・エーテルハートにちょっかいをかけられたり。

 未だ爵位は得ていませんが、王家は貴族守旧派をまとめて掃討した結果、相応の領土を接収しています。必要なのは切っ掛けでしょうか。

 因みに、アレン商会会頭として給金を受け取っていますが、銅貨の一枚も使っておらず、上記褒賞と同じように回してしまっています(※リサさんに懇願し、当初の提示額を下げ、その分をフェリシアへ渡すよう画策すらしている)。

 なので、今の彼の生活費は『褒賞以外で稼いできた資金の運用』+『家庭教師としての給金』で構成されています(※それ以外だと、ニケ君が旧侯国で得た資金を名前を変えて密かに積み立てて運用しています。勿論嫌がらせですが、フェリシアも同じような事をしているので、最近は競争になりつつあります。後世で『アレン資金』とか何とか呼ばれていたり)。

 web版、書籍版で、ラストエピソードは大きく異なりますが……どちらの世界線でも十数年後は結婚していて、可愛らしい娘さんがいます(※洩れなく、母親VS娘さんが引き起こされている模様)。

 因みに、RPG等でよくある『過去作キャラの謎の弱体化』現象は一切適用されず、力量はより向上しています。

 彼が、何時どの程度の権限を持つかによって、周辺諸国の未来も相当揺らぎます。 

 書籍版の未来線は、その中でも比較的大きな変容が起こる世界かな、と。


 これからも頑張って書いていきますので『公女殿下の家庭教師』をよろしくお願い致します!

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