第二回 昔の女
糸島市にある田舎のパン屋で、昔の彼女に会った。
高校時代の彼女だ。
陽に焼けたショートカットが似合っていて、毎日テニスを頑張っていた。
彼女が農家に嫁いだ事は知っていたので、何気なく「どう?」と訊いてみたのだが、彼女は僕に「別れたの」と、返した。
「そうか」
と、しか言えない僕。
彼女は離婚し、今は小学五年生の娘と二人暮しだという。
前回会ったのは十五年前だったか。高校の同窓会で、バーベキューだった。その時、彼女は人妻で僕は独り身だった。そして今回はその逆というわけだ。
彼女は僕に「女の子が産まれたんだよね、おめでとう」と言い、それから「人生って中々上手く行かないね」という言葉を残して、パン屋を去っていった。
残された僕は肩を竦め、妻に頼まれたバゲットを一つトレーに乗せた。
男が生きていると、色々とあるものだ。
女も生きていると、色々とあるものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます