20210807_引いては寄せる
寄せては返す波の縁に彼はいた。
「こんばんは」
「やあ、こんばんは。どうしたんだいこんな時間に」
彼は月明かりに照らされ微笑んでいる。
「あなたに会いに来た」
「ふうん。物好きなんだね」
そうやって笑う彼は半分本気でそう思っているのだろう。残りの半分はもしかしたら嫌がっているかもしれない。しかしその気持ちを顔やには出さない。そういう人だ。
「そうかも。けど私はあなたが好きだから」
「僕は君が嫌いだよ」
「知ってる」
それが嘘であることも。彼はそれこそ波のような人だからこちらが押したら引くし、引いたら押し寄せてくるのだ。それが怖くて私は押してばかりいる。
「ほんと、君は物好きだね」
そう言って笑う彼の顔が一等好きなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます