20200905_夕

義兄さんと並んで歩いているとぽつぽつと雨音がした。

「あら夕立ち」

「まだ昼時だから驟雨かな」

「しゅうう?」

見慣れぬ言葉に首をかしげる。義兄さんは穏やかな表情で空を見ていてわたしの視線など気づきはしない。

「今風に言うとゲリラ豪雨」

「ふうん。驟雨の方がおしゃれね」

「ゲリラ豪雨と比べればなんだっておしゃれな気がする」

そう言って義兄さんはふっと笑った。それでも視線は空に向けられている。

「なんか普通の夕立ちですらゲリラ豪雨って雑に呼称するの止めてほしいわ」

なんだかおもしろくなくて、つまらないことを言ってしまった。八つ当たりだ。

「夕」

「?」

「僕はきれいな名前だと思うよ」

わたしは単純なので一瞬で機嫌が直った。

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