20200801_泳
わたしが泳ぐのは雑踏であり喧噪であり、人々の思惑である。波間を行くようにすいすいと泳げるようになるには、ずいぶんと大変な労力が必要だった。そも、わたしは人魚だから尚のこと波間の方が楽に泳げるのだ。
それでもわたしが人間たちの雑踏を、思惑の中を泳ごうと思ったのは大した理由からではない。合いたい人がいたのだ。違う。人ではない。猫だ。
その猫はよく岩場からわたしたちが泳いでいる様を眺めていた。けれど声をかける前にいなくなってしまう。あのふさふさを撫でたい。くんくんしたい。その一心でわたしは陸に上がった。猫はいいぞ。今度友人の人魚も誘って猫カフェに行こう。猫の中を泳ぐのも波間の次くらいにいいぞ、と。
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