03. 物書きとしての寿命

 次第に怖い話になってゆく。


 もし。登場させるキャラや特定のシーンに作者自身の不満解消を目的とした役割を与える、そういう作業に慣れてしまったら。一つの長編を同じモチベーションで書き続ける事はできるのだろうか。


 また、何本もの新作を生み出し続ける事は可能だろうか。


 「不満」が原動力の場合、リアルに対する作家の不満度や満足度が、企画進行のエネルギー供給を大きく左右してしまう。最悪の場合、リアルの充実と共に書けなくなる事態も起きかねない。


 再び二次創作の話になる上、古い回想を持ち出してしまうが。


 とあるオリジナル・アニメが高評価と共に放送終了した。その後、二次創作は大いに盛り上がる。「もっと!!」という渇望に支えられたからだ。


 ところが、今で言う二期の制作が突然発表された事で、サークルの方針が二つに分かれたのを覚えている。


「新しいアニメが始まっても本を出し続ける」と宣言した人達がいる一方、「声がつく新作に私達がかなう訳ないし、本編の続きが供給されるなら、もう私が書かなくてもいいんじゃないかって思う」との迷いを書く人達も現れた。


 私には、両方の気持ちがわかる。そしてこの現象は、「不満(この場合は「渇き」なのだが)」が減少した場合、作家が今後の方針に迷う、という恐ろしい事実を私に突きつけた。


 勿論、かつてのようなモチベが内に戻ってこない危険は、この場合前者にもある訳だ。主張そのものが、続編視聴前の強がりを多分に含んでいるから。


 今、私はオリジナル小説のみを書いており、当時の反省から、「現状に対する不満を自分の創作の原動力にはしない」と決めている。


 「カクヨム」と「なろう」で連載中の『縫修師ライム・ライト』は、現在第2話。既に気づいている人もいると思うが、第2話の主たる目的は、闇世界の紹介、新キャラの追加、そして2世界でそれぞれに部下を率いている幹部2人の対比、以上の3点だ。


 勝利は「作者の代理」ではなく、湖守もまた「私の理想の上司」ではない。この2人に仲良くして欲しいのは、対比としてこの後、空間神を描く用意があるから。


 描き込みすぎるのは元々の傾向だし、演出過多なのは、最新話が試読の対象となるWeb小説では勝負の一方法かな、とさえ考えている。


 確かに、キャラクター・エンターテインメントには「不満」を原動力とした作品も多数存在する。しかしそれは、一般の小説にも存在するであろう傾向で、この「不満が原動力」と「そうでない力を原動力とする作品」は、実のところ、全フィクションを大分類するに値する2大傾向ではないのか。


 単に読者が、その大分類から始まる選別では本や作品を探せない、ので採用されないだけなのだと思う。


 しかも前者は、「長編の場合、今のモチベが作者の内でいつまで続くのだろうか」という不安と「この燃え方で、この作者はあと何本書くつもりなのだろうか」という不安を読者に与えてしまう。


 作者自身に固定の読者をつけたい場合、不満を原動力とする書き方はいずれ卒業するつもりで作品の積み重ねをした方がいい気がする。


 私も、そう思って手を引いた。随分前の事だ。

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