日陰の向日葵の回想 Ⅳ

私は、女の子の啜り泣く声を聞いた。



「お姉ちゃんどうして?」


彼女の部屋の前で火を放った時、


向こう側の、密室されて炎上を始める室内のなか妹が、疑念の目で私を見上げてこう言った。


この言葉が今でも心に残っている。


押し黙る事しか出来ず、少しの沈黙を残した後 背を向けて私は自室へと向かった。


私の部屋の扉を閉め、腰窓を開いた。


風が通り抜ける。

直ぐ様、一酸化炭素中毒にはならない。


そして、ピアノを弾いた。窓から落ちる月の光の中で。


最後まで引き終えると、私は自らに灯油を被りマッチで火を放った。


燃える屋敷、ただならぬ叫び声。

近所の住民が通報して、消防車が恐らくそろそろやってくる筈だ。


扉を叩き壊す音が階下で聞こえた。消防士が到着したようだ………。


熱さと痛みの中で意識を失いかけていた。


本当にこれでいいのか?

私もろとも消えた方が楽になるのかもしれない。


それが、この世の為なのかもしれない。


私もこの煩悩から救われる。


私は、燃え盛る炎そのものになりながらも最後の力を振り絞って開いていたテラス窓へ向かって閉めた。


賭けてみよう、もし私が助かってこの計画が成功したならば、

それは、生きるべくして生かされてるのだと。


そして、この力とこの人生を運命だとし、

そのカルマと正面から対峙しようと。


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