日陰の向日葵の回想 II
私の両親でさえ、私の力を恐れた。
何故なら、私は人の思想を読めてしまうからだ。
また、それだけでは無く・・・。
幼い我が子が、知りもしない事まで知っていたり、
それを察してしまう姿を見て恐れた。
その我が子の知る真実は、彼らにとって羞恥するものから、
く知られる事で都合が悪くなるものまであったのだから。
そして、母親は薄気味悪い私のこの力を早速、政府に暴露した。
初めは、政府も家庭内のいざこざの鬱憤を晴らすサイケデリックな母親の話に耳を傾けなかった。
だが、一度この子に会って力を目の当たりにしてみて。
あなたたちの有益な力になるわ。
政府の力になれるなら幾らでも我が子を協力させるから。
そう、電話越しに伝えてから私の家には政府の人間が幾度も訪れるようになった。
そして、その都度私に沢山の質問と指示をした。
それに返答すると、彼等は半信半疑だった無機質な表情から一変し驚愕の表情をしては、持ってきた書類に記述をしたりビデオカメラや録音テープで記録を始めた。
ある日、その政府の人間は母親に伝えた。
これが契約書だ。金額もここに。
この子の為の研究施設もしっかりとしたものを整える。
ここに記載された期日に、この子を連れに来る。」
『7月23日ね』
母親は笑顔で答えた。
「良かったわ!これで!私達は!えぇ、政府のお力になれるんですもの。
別れは辛くないわ。
この子も分かってくれる筈。」
そういって、政府関係者の人間に渡された書類にサインをすると今だかつて無いほど私を強く抱き締めた。
心の声が聞こえた。
『これで、薄気味悪い子が居なくなってくれる。
それでいて、私達はこの子を受け渡し政府の研究へ多大な貢献した事で定期的に資金を援助して貰えることになる。
何て素晴らしい事でしょう。
これで全ては、思惑どうり。』
頭を撫でる母親の優しい顔から相反する不気味な笑い声が脳裏でこだましていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます