第3話 そうか、これが

 俺はここでいろんなものを学んだ。


 おこたというものについて教わった。

 おこたというのは正式名称を炬燵という、布団の上に木の板があって、中には熱源がある。そのあったかい熱を外に逃がさない仕組みになっている。あったかい、出られない。


 だめだ。これは人をだめにするものだ。



 ポットというものも学んだ。

 湧いたお湯を保温するもので、だいたいがおこたの上に乗せる。ガスやストーブにやかんに水を入れて沸かし、ポットへと移す。あんまり量が多いと溢れてしまうという。お茶を飲んだり、乾燥した食品を戻す時に使う。ある程度長い時間は熱いままで保温できる。おこたから出ずにお茶が飲める。あったかい、おいしい。


 だめだ。これは人をだめにするものだ。



 それについても教えてもらった。

 ハエという虫を取るもので、それは空を飛ぶ。羽も足も付いていて、時にそいつらは歩く。それらの生命力は力強く増える。おこたやポットやストーブやらであったかい部屋で越冬することもあるらしい。ポットでハエ同士仲良くしていることもあるらしい。そのハエを捕まえ殺すために人はいろんなものを考えた。


 ぶら下げてベタベタの接着剤にくっつけて、殺す。自ら手を下さず、動かず。ぶら下げるだけで、面白いくらいごっそり取れる。



 だめだ。これは人をだめにするものだ。


 これでは人は滅んでしまう。


 俺はこの田舎の宿でいろんなものを学んだ。


 俺は人類滅亡を防ぐために世界を飛び回っている。


 人はなまけ過ぎている。このままではハエにすら負けてしまう。


 俺はそれを見ながら、この星の未来を思う。


 生きていくには死ぬ気で殺さなければいけない。


 そんな時代がもうすぐそこまで来ているのに。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る