第2話 戦うべき相手

トイレの窓にあるはえとりリボン


あんなにもハエがびっしりとれているのに


まだ、まだとれると


ぶら下がっている


いつもあるのに


いつもハエは死んだままくっついていて


特別気にせず用を足して


俺はいつものように


トイレを出るだけだったのに


突然どこからかゴングの音がして


トイレはリングに変わる


狭い壁がどこかへ消えて


割れんばかりの歓声が辺りを包む


眩しいライトと派手な音楽


ポツンと立っ俺は拳を握りしめて


目の前の敵を睨みつける


殴ってはいけない相手だというのも


向こうに敵意がないことも


こんなことに何の意味もないことも


わかっているのに


敗北する


完敗だ


どうやったらこいつは負けるんだろう


そもそも戦うべき相手ではない


こいつはハエと戦っているんだから


だから今のは俺の負けじゃない


俺は強い

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