第12話
バスを降りて自宅へ足早に向かう。
庭ではニナが花に水をやっていて、こちらを見ると、
「おかえりサクヤ。あら、背が伸びたんじゃない? 中学生になると早いわねえ」
と笑った。
僕はそれには答えず、息を整えて初めてこの言葉を使った。
「監視員」
ニナの表情が変わった。
「40を読んでいると言う人がいる」
その日はピーターとニナに〝40〟について質問攻めにされた。僕は今日あった事を全て話した。それからは自分の部屋に行かされたのでよくわからないが、二人はあちこちに連絡を取っているようだった。
そうして次の日、学校に行ってみると、
クラスメイトはいなくなっていた。
前日の夜、一人でコンビニに出かけてから、帰って来ないと言う。ざわめく生徒達に向かって、担任の先生は極めて冷静な態度で、
「今、警察が調べているから大丈夫です」
とだけ言った。
あの時一緒にいた彼の仲間達も、転校や、素行不良による退学、はたまた家出等の理由で、僕を除く全員が一週間以内に学校を去って行った。その後の消息は、クラスメイトも含めて誰もわからなかった。
文字通り「隠された」のだ。
学校から帰ってクラスメイトの件を話すと、ピーターは無言で僕の肩を軽く叩いた。
「気にするな」
と言っているような気がした。
それ以来、僕等はクラスメイトの話はしなくなった。
僕は手の中の紙を、くちゃっと握りつぶした。
その姿勢のまま、どれだけそうしていただろう。
立ち上がってカップにお湯を注ぐ。揺れるティーバックを見ながら、静かに溜息をついた。
熱い紅茶を一口飲み、僕は39を読むため再び机に向かった。
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