第13話

翌日、会社帰りに図書館へ寄ったのはそれに引き寄せられたからだった。

いつものように39を借り、真っ白な部屋に入る。

はやる気持ちを抑えながら、いつもと同じように、ゆっくりと本とジャケットを置き、

椅子に座った。

 左手をゆっくりと引き出しの裏にあてる。

かさり。

まさか。

静かに紙を引き剥がす。

机の下で、そっと左手を開いた。

前回と全く同じ黄色い紙。

開いて見ると、昨日と同じように黒い字で大きく書かれていた。

39 

偶然じゃない。

昨日の40の紙も、

今日の39の紙も。

わざと貼ったんだ。

誰が?

僕は物音一つしない純白の部屋をゆっくり見渡す。

この部屋は特別だ。

何もないように見えるこの部屋のどこかに監視カメラや盗聴器が設置されている。

小さい頃鼻血が出て止まらなくなった時、電話もしないのに、スタッフが飛んで来た事があった。

それ以来僕はここでも監視されていると悟った。

この部屋の監視の目を盗んで紙を貼り付ける事ができるだろうか。

ニナやピーターでもこの部屋には入れない。

僕以外には。

しかし、スタッフなら。

ここは図書館員達が管理している。

清掃と称してできない事はないかもしれない。

でも、

何故この紙を貼ったのだろう。

昨日は40。

今日は39。

明日は。

その日、僕はあまり39を読み進める事ができなかった。

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