第3話
さて。
僕はテーブルに本をどすんと置き、コートを脱いでこれもテーブルに乗せた。
あくびをしながらカップにお湯を注ぐ。
最近仕事が忙しくてあまり眠れていない。
椅子に座り、ぶ厚く重い本を引き寄せる。
ページをめくった。
最初にタイトル。39と書かれている。それだけだ。
作者名は書かれていない。昔からそうだった。
ぱらぱらとページを繰り、前回読んだ所まで来ると、僕は椅子に座り直した。
確かバーバラの結婚の話だ。
ふう、と思わずため息が出る。
彼女も遂に結婚か。二十三歳だっけ。
同じ年か。
何だか親友に先を越された気持ちになる。
本の中の登場人物とは言え、二十年以上もこの物語と接していると、キャラクター達が自分の大切な友人に思えてくる。
僕はページをめくり、本を読み始めた。
バーバラの結婚を祝福する両親、兄と姉、双子の弟達。しかし彼女と友達同然に育った年子の妹だけは素直に喜べない。バーバラも又、思い出のつまった家から出て行く事に悲しみを感じ始める。
結婚式が近付いたある日、バーバラは母親に結婚したくないと泣きつく。
母親は言う。
「場所は遠く離れていても、精神的に絶対離れられない。それが家族なの。だから、安心して行ってらっしゃい」
家族。
自分の父親や母親の事を、普通名前では呼ばないものだと最近知った。
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