門番に全裸を見せた男

トカゲ

夢だと思ったんです

 何故か気付いたら草原にいた。

 服装は寝た時のままだ。つまりはTシャツとトランクスという変態装備である。

 このままの状態でいたら高確率で警察のお世話になってしまうだろう。


 「まぁ、夢だよな」


 しかし俺は聡明なので直ぐに状況を理解して歩きはじめた。草が裸足に当たって痛気持ちいい。何故か持っていた短剣を振り回しながら上機嫌で歩いていると、遠くの方に町が見えてきた。取り合えず行ってみることにしよう。


 「な、何だお前!? 不審なやつめ、名を名乗れ!」


 そんで町の入り口に着いたら門番みたいな人に警戒された。

 なんか槍とか突き付けられてる。超怖い。先端恐怖症になりそう。


 「待ってくれよ! 俺は善良な一般市民だよ!」

 「そんなこと知るか! 短剣振り回しながらやってきて何言ってんだ! 俺は名を名乗れって言ってるんだよ!」


 門番さんが凄い怒鳴ってくる。こっちは槍を向けられた時に短剣を直ぐに捨てたのになぁ。

 そうか、服の下に何か隠してないか不安なんだな。

 そうと分かれば全裸になるか。実は外で全裸になってみたかったんだよね。

 これは夢なんだし別に全裸になっても良いよね! そう考えた俺は服を脱ぎ始めた。


 「おい、何脱ぎ出してんだお前!」

 「いや、俺は無害だと教えようと思って」

 「そんなん知らんよ! 名前を言うだけで良いんだよ!」

 「あぁ、俺は山田やすしって言います」


 俺は全裸になった後に自己紹介をした。

 人前で全裸になるのは何でこんなに気持ちいいんだろうな。


・・・


 「あぁ、もうわかったから。服を着ろ。絶対に町中で服を脱がないと誓えるなら中に入っても良いぞ」

 「わかりました。誓います」


 門番さんは呆れながら俺に服を渡してきた。

 あと金がないって言ったら凄い同情した顔をしてお金くれた。


 その後は町の中を散策して暗くなってきたら路地裏で眠った。

 目が覚めたらきっと自分の部屋に戻っているんだろうな。それで変な夢を見たって笑うんだろう。少なくともこの時の俺はそう思ってた。


 しかし起きても俺がいる所は汚い裏路地のままだった。

 もしかしたら、これは異世界転生ってやつじゃないだろうか?

 そうなると俺はこれからの拠点になる町の門番さんに全裸で近づいた変態って事になるんだが……


 後悔先に立たずとはこういう事をいうのかもしれない。

 とりあえずズボンを入手しないとなぁ。


 こうして俺の異世界生活は始まった。

 そしてこの後直ぐにワイセツ罪で牢屋にぶち込まれる事になるんだが、それはまた別の話―――

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門番に全裸を見せた男 トカゲ @iguana

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