第37話 『攻略本とチョコレート』

 友チョコという習慣ができあがったのはいつごろかわかりませんが、なかなか良きものではないでしょうか。

 デパートの催事場などに並ぶ、高級チョコや舶来チョコを見るにつけ「どうせならものの価値が分かる相手に渡したいと思うよな」という思いを年々高めてしまうという、いささかイヤらしい即物的な思いが多々ある者としては、せっかくの美味しいチョコレートは愛情を媒介するものとしてより単に美味しくて人の気持ちを癒したり高めたりするものとして消費したい気持ちがあるのです。

 とかく「製菓業界の陰謀」などと陰口を叩くより、美味しいチョコレート祭の日として積極的に楽しめばいいんですよ本邦でのバレンタインデーは……とチョコ好きとしては思うのでした。


 そんな色気のない者が、なんとかバレンタインにちなんだ物語を作ってみようと頭をひねくった結果「これ別にバレンタインにする必要なくね? サンジョルディの日とかでもよくね?」みたいな掌編が出来上がった次第です。


 すみません、一編ぐらいバレンタインに因んだ物語が書きたかったのですよ……。



 さて、本作およびこの文章を書いている2020年の2月10日の前日、「書きたい物語がまだまだあるのに自分はこのまま小説が書けないままなのか」という気の滅入りに憑りつかれてどうにもこうにも精神が絶不調におちいってしまいました。

 本作はそういう状態から抜け出すための悪あがきでございます。とにかくなんでもいいから書きたかった。書ければ次につなげられるような気がしまして。


 そんなわけで、他愛なさすぎて語る必要もとくにない一編ができあがってしまいました。それでもなんとか2000字そこそこは書けたことにほっとしております。



 物語(といえるほど大したものではないと言え)の案にあったのは、「攻略本を読むことは楽しかった」という方々の発言に感銘をうけたことがあってのことです。いわゆる小説や漫画など物語を愉しむものではなく、地図や時刻表などを独自の読み方で楽しむ方は世の中にいらっしゃいますよね? 私自身は精々動物や大昔の生き物の図鑑や国語便覧、世界史資料集が好きだった程度であまり素養がないのですが、物語以外の本を愉しんでらした方の話を聞くのはすきなのです。そういった感覚にあやかりたいという気持ちが書かせた掌編ともいえるような。

 また攻略本という存在の儚さがふときになったのもこの本を書かせた動機となったような。古本屋では店によっては取り扱っていそうですが、図書館にはまず置かれませんしね……。



 半ば自分のウォームアップのために書いたような物語です。本来なら表にだすべきではないのかもしれませんが、「なかなか長編を書くところまでは体力が回復しないけどこうやって生きてるよ」という証明になっていれば幸いです。

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