第26話 『男子練習帳』

 水をかぶったら性転換しお湯をかけると元に戻るという設定の使用料を一作につき五百円から千円あたりで販売する。もしくはアイディアを使用した作品が読まれるごとに何割かの使用量がその都度入る。そんな風にすると高橋留美子は漫画描かなくても余裕でもう一財産くらい作れるんじゃないだろうか。

 すくなくとも私なら買うな……。もうその設定思いついただけで勝ちじゃないか、留美子。すげえな、留美子。リスペクトせざるを得ないよ、留美子。あんたやっぱ天才だよ、留美子。


 ──現代社会でとつぜん少年少女が性転換してしまう理由をこねくり回した結果謎の奇病に頼らざるを得なくなった己の発想力の無さに絶望し、このように高橋留美子への賛辞を贈らずにいられなくなったピクルズジンジャーです、こんばんは。



 そんなわけで、一度きちんと書いてみたかったTSもののラブコメです。


 執筆動機はタイトルにまんま現れている通りです。ここ最近十代女子ばっかり書きすぎて十代男子の書き方を忘れてしまい、こりゃヤベエと焦ったことにあります。好きで女子ばかり書いてるにしても、これでは表現の幅が減る。ただでさえ書けるジャンルの幅が狭いのに。


 かといって、数ヶ月ほど前に気晴らし用に男女のラブコメに挑戦してみたところ気が乗らずに失敗してしまったばかりだったのです。どうにもこうにもここ最近、ボーイミーツガールにやる気を見出せないもので……。

 せめて自分が楽しいものをやってみようと、前から書いてみたかった男→女のTSコメディーに挑戦してみることにした次第です。久しぶりにアホな要素しかない話も書きたかったので、週間少年漫画程度のお色気要素もいれてみたかった。



 今後書きたい話の中に女子化した男子と女子の友情ものがあったのでそれを避ける形で話を組み立てた結果、男子と女子化した男子のラブコメというBLになりました。……何気に初めて書いたBLになりますが、オチがああですのでBL識者のお眼鏡に適うような作品に仕上がっているのかどうかについては不安です。


 そういえば女子と女子化した男子の話は百合になるのか否か、というようなジャンル論を時々見かける気がします。

 あくまで私個人の規準になりますが、女子と女子化した男子の話は百合ではない別ジャンルではないかと考える派閥に属します。それはそれで独立した魅力的なジャンルではないかと(一回ちゃんと取り組んでみたい)。

 ついでに男子と女子化した男子、もしくは双方女子化した男子など二次創作界隈でみられるあの組み合わせも、異性愛や百合にはならずBLなんじゃないかなと考える派閥です。くどいようですが私個人の規準です。



 男子が女子化するコメディーのキモは「あいつがこんなに可愛くなるなんて……」というドキドキ感であると思われますが、本作主人公の融士はそれとは反対に「以前のアイツが格好良くて好きだったのに」と惜しみまくるヤツになっています。

 これってこのジャンルの旨味の一つを思いっきり殺すことになってるなと書いてる途中で気づきましたが、それでもこの設定で決行したのは「性別が変わった途端に親しい仲の人間から急に欲情されるのってしんどくならないか? 下手したら人間不信になるのでは……?」という疑問を払底できなかったことによります。読む側でいる時はこの設定でも大いに楽しめますが、書く側になると自分にはこれで愉快なコメディーを書ける自信がない(本作が愉快なものに仕上がってるかどうかはとりあえずおいておくとして)。


 そんなわけで、性転換する前から幼馴染のことが「コイツ本当に格好いいわ〜」と抱きたい・抱かれたいな感情を抱いてる主人公とアホな幼馴染は最初から両想いであるところから始まってる次第です。


 性別が反対になる設定をフラットに楽しく書けないのは、男女の入れ替わりものの古典『おれがあいつであいつがおれで』をずいぶん前に読んだせいかもしれません。気楽なコメディーのような内容を期待して読んだところ、自分の肉体やそれに付属するものが激変したらどうなるかという絶望のようなものが軽い語り口でしっかり書かれていて読んでいてなんとも重たい気持ちになったことを覚えております。名作と呼ばれるだけのことはあるわけですよ。



 洋太がかなりのバカ野郎なのは、あれこれ思い悩むキャラにしたらこっちがしんどいという単純な事情によります。現連載作でアホの子を出しているのでその手癖がでた所もありますね。

 というか、モールとか洋服ショッピングだとか他作品で繰り返し使ったモチーフをまた使っちゃってますね……。気晴らしも兼ねていたとはいえ、手癖が目立つのはアレですね。反省。

 あと、胸が大きいと運動する時痛いということは隙あらば主張する癖があるのは我ながらどうかと思う。でも痛いんだよ……? アニメの乳揺れ動画なんかを見ていてもヒイっ! ってなるよ……?


 因みに融士と洋太、空美といった名前はとくに理由や由来はないです。あと名字も今の所考えておりません。



 そういえば思春期の男子を書く練習がしたかったのに、結局こいつらガワが違うだけでいつもの私が書くようなキャラクターでは……?

 といったことを考え出すと「男とは? 女とは?」という袋小路に迷い込んでしまいますのでここら辺で切り上げます。


 普段書いたことのないジャンルので、しかもかなりアホな話になります。

 こんなんでいいのかという疑問は拭えませんが、とりあえず気楽に楽しんでいただけますと幸いです。

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