第24話 ※オマケあり『焼肉とタバコと魔法少女と。』
すみません、またです。
またあのシリーズのスピンオフです。すみません、本当にすみません。ごめんなさい。許してつかあさい。
しかもそんな内容なのに自主企画に参加してしまいました……。本編は独立して読める一本にしようと頑張りましたが、あとがきは箍が外れてシリーズ知ってる人限定のノリで初めてしまって本当にごめんなさい(※この箇所は後日追加しました)。
――と、謝り倒してから始めますあとがきです。
◆◇◆
そんなわけで、また悪辣な魔法少女大暴れシリーズのスピンオフなこの作品です。
今後の展開を考える上で必要な、キリサキキッカの過去と内面の整理をしておきたかったのです~。あと、こいつの一人称文体を固めておきたかったんです~。
こんな喋り方をする奴だと設定したのは自分だというのに時々文体を見失ってしまうのですよ……。
思えば、このアホほど長大化してしまったシリーズの起点である『魔法少女逃走中』を書き終えたあとは、「楽しかったけど、こんな下品なヒロインの出てくる作品との付き合いはこれ限りだ! 私はもっと楽しくて可愛い小説を書くのだ!」という決意を固めていたのです。
それなのにこんなにもしつこくシリーズを書き続けている理由はというと、本作の主役になりましたキリサキキッカというキャラクターのせいなのでした。
私はキャラクターのイメージを固めるのに芸能人のイメージをお借りすることがあります。モデルというのではなく、こんな雰囲気でこんな声でこんな喋り方をするのでは……という断片の拝借のような感じだと申しましょうか。
キリサキキッカにもイメージを借りた芸能人さんがいらっしゃいます。
お名前は伏せますが、数年前に国民的人気ドラマに出演なさって国民的人気女優になられたあの方です。
『逃走中』を書き上げた後、この話のことは速やかに忘れ去ってやろうという心づもりでいたけれど、どうにもこうにも中途半端で終わってることや、この二人は今後どうなっていくのかがぼんやり気になりだしました。
続編を書くとしたらやっぱりアサクラサクラの逆襲的な内容になるだろうし、だとしたらキリサキキッカがラスボス的な位置につくわけだなあ。
キリサキキッカの雛型はあの誰それさんだけど、あの天下の誰それさんを敵として戦うのはしんどいだろうなあ……。
ていうか、ラスボスがあの誰それさんか……。みんな大好きあのヒロインを敵に回して戦うはめになるのか……。世界中の人たちから嫌われまくっても屁でもないわな精神で立ち向かっていくのか……。そうか……。
――やばい、面白そう。書いてみたい。
と、なったらもう続編書きたいスイッチが入ってしまうわけですね……。そしてうっかり30万字越えスピンオフなんてものを書いてしまうわけですね……。
というわけで実はこのキリサキキッカというキャラクターは非常に重要なやつなんですよ、私の中で……ということです。
このことは続編が書けた時にでも披露するつもりでしたが、まだストーリーが見えてこないのでここで明らかにさせていただきました。
◆◇◆
連載中の気晴らしで書いていた最中、女性一人称に限定された自主企画が開催されたのを知り、急遽そちらに合わせることにしました。
それがこちら。
https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054886493645
シリーズ物のスピンオフで自主企画に参加することに遠慮はありましたが、せっかく口調にクセのあるヤツの一人称小説かいてるんだからという理由でこっそり参加させていただきました。
二万字限定ということで、当初おりこむ予定だった展開をいくつか削りました。
キリサキキッカ目線による『実録 魔法少女焼死事件その真相』のツバゼリツバメとツキノワの最期、あと当初ちらっと出す予定だったマリア・ガーネットなど。
本作だけ読んでもある程度のことはわかる内容にするのが優先で、キリサキキッカがどの段階で「演出」のことを強く考え出したのかといった時系列的なことはあやふやにしました。その辺のところは悔いが残らないでもないです。
ちなみに、本作での焼き肉屋でのキッカがテンタクラートのことを知った後に『マリア・ガーネットとマルガリタ・アメジスト、天国を奪い取る。』の一件が起きることになります。
◆◇◆
以下は裏話など……。
・本作で書きたかったことの一つに、「キリサキキッカとマルガリタ・アメジストの掛け合い」がありました。
この二人の会話は書いていて結構楽しいものがありますので……(親バカすんません)。
そんなわけで、キリサキキッカ視点のマルガリタ・アメジスト像は「話は通じるしいい策は出してくれるけど、一旦しゃべりだすと長い上に文句が多いポンコツのユスティナ」ということになってます。多分、一緒にいると得るものが多いし仲良くしてもそう不快じゃないけどとにかく変なヤツだと、お互いがお互いのことをそんな風に思いあっている仲だとおもいます。
・『マリア・ガーネット……』の最終話に出てきた、唐突なマルガリタ・アメジストの「トト」呼びをここで拾えて満足しております。
この「トト」はアドリブで出てきたものですが、どうせなら後の展開につなげたいと機会をうかがっておりました。
念のために申し上げますが、トトは『オズの魔法使い』のドロシーの飼い犬の名前です。
・ハニードリームに来たばかりのキリサキキッカの面倒をみていた魔法少女のアヤカシアヤメは『逃走中』に出てきてアサクラサクラに殺されてしまう子です。
この子、親の仇をとるために魔法少女になったのに仇もとれなくてこんなところで殺されてしまうなんて――と、自分の中で引っかかっていたことが本作で名前付きで登場する遠因となっております。
どのみち、このタイミングで出してあげたところで彼女の目的は達せられないのですけどね……。ごめん。
・『実録』の方に出てきた魔狼王国女王の自伝という謎の書籍のフォローをしたかったのが目的の一つでもありました。
文字数と構成の問題で降り込めませんでしたが、キリサキキッカの作文が結局あんな調子なのでマルガリタ・アメジストのプロデュースでドルチェティンカーの十二人いるメンバーのうち誰かがゴーストライターを務めたということになっています。
・あとまあ、アジア映画的ノワールな世界を書いてみたかった……。映画ロクにみないので雰囲気だけですが。
◆◇◆
そんなわけで、ついつい書いてしまうこのシリーズのスピンオフでした。
そんなに書くなら続編いい加減書けよって話ですね。
それではまた連載作をちまちま書いてゆきます。
(オマケ)
下書き段階では、キリサキキッカ視点によるツバゼリツバメとツキノワの最期を書いておりました。文字数の関係で削りましたが、そこそこの量があるので削除するのがしのびなくここに残しておくことにしました。興味のある方は読んでやってくださいませ。
『実録』の方の雰囲気が好きだし、敢えて真相とか知りたくない……という方が万一いらっしゃっても大丈夫なようにスペースを開けておきます。
※スタート※
――全く、ほんのちょっと前、まだ生きていたころのツバゼリツバメって姐さんが仰っていた通りでした。
「こんなもん喫うと、あんたサクラさんに怒られるよ? 知らないよ? あの人はタバコと酒には厳しいんだから」
初めて見る雪が想像とちがってぼたぼたと重たそうなことに驚きも収まった頃、こちらの世界のそこいら中にあるコンビニって商店の軒先で合流した魔法少女ツバゼリツバメとその相棒であるツキノワって妖精に、気が付けばあたしは煙草を一本ねだっていました。こっちの世界の法律のせいで、タバコはガキには売ってもらえないことをうっかり忘れておりました。
それなのに、その時どうしてもタバコを喫わないとどうにかなっちまうという衝動にかられておかしくなりかけていたのです。はい。
長い髪、たおやかな容貌、優しい声、あの人の容貌は私が普段遠ざけて決して見ないようにしている記憶を強烈に刺激するものでした。ええ、恥ずかしながら申し上げます。魔法少女ツバゼリツバメ――正式にはその変身前の姿――は、私の母上とよく似ていたのです。
初めて見る雪の下、二人がゆっくり近づいてくるのをみて私は総毛立ちました。
──またちょっと頭の膜が剥がれかけました。続けます。
「すんませんが、一本、いただけませんでしょうか?」
これから殺し合いをおっぱじめるってのに何をのんきな――と二人は呆れていましたが、いかついおっさんに化けたツキノワって妖精と十六、七くらいのきれいな姐さんだったツバゼリツバメはタバコを一本めぐんでくれました。
ツバメ姐さんは火までつけてくれました。青い火に照らされた皮膚が、その時地べたでぐしゃぐしゃになっていた雪なんかよりずっと白くて唇が赤くて、いい匂いのする姐さんでした。戦闘には慣れていただろうヤクザ妖精の幹部連中とその手練れの護衛合わせて二十人強、全員の首を胴体から刎ね落として逃げた姐さんだとは信じられませんでした。
煙を吐き出して、ありがとうございます、と返したあたしにツバメ姐さんは微笑みました。それはやっぱり――。
――すんません、ちょっと間を置きました。頭の膜がまた剥がれかけて、あれ、あの、あれ、が見えそうになりましたんで。
まあ、ここでこうしてあたしが女王様に成ったことからお察しの通り、あたしはツバメ姐さんとその相棒の妖精をぶち殺すという任務を遂行してサクラさんのいる海の傍にある温泉つき旅館で合流することが出来たんです、はい。
「サクラさんには謝っといて、ツキノワが迷惑かけたねって。それからこいつを受け取んな」
変身するとどういうわけかあたしと同い年ぐらいのチビなガキになっちまう珍しい魔法少女だったツバメ姐さんは、敗けを悟った瞬間にあたしに向けて封をきったばかりのタバコの箱を投げてよこしました。
ツバメ姐さんはどれだけ魔力の弾をバンバン撃ち込んでも一切堪えない上にちょっとの間で元通りになっちまう高い再生能力を持つ人でした。脳天を打ちぬいても、機銃でハチの巣にしてもすぐに元に戻る。魔法少女なのに得意技は近接格闘。ならば距離をとろうとすると魔法で姿をくらしたり幻術を用いてこっちの神経を参らせようとする。そうして、ちろちろと燃える黒い瞳でこっちの首を斬り落とす機会を冷静に狙ってくる、そんなおっかない姐さんでした。
スタミナは圧倒的に姐さんの上、しかも姐さんは厄介な幻術ってものを使う。
あたしは怖かった。殺されることより、姐さんの使う幻術で、頭の中の膜でぼやかしてる、あれ、あの、あれ、が、ばーっっと姿を表しそうになるのが怖かった。おっ死ぬ前に、あれ、あの、あれ、をもう一回見なきゃならなくなりそうで怖かった。
だからあたしはさっさとケリをつけることにしたんです。手段も何も選んでる余裕がなかった。
スキを見て、設置式の魔法陣を仕掛けそこに姐さんと相棒の妖精を誘い込みました。決められた時間が来れば魔法陣の中に入りこんだものはなんでもかんでもぼんぼん燃やし尽くすっていう魔法です。
コンビニの前にあった泥みたいな雪じゃなく、人里からちょっと離れた目につかないところの、ザラメの山みたいな雪の上であたしの仕掛けた魔法陣の中央に囚われた姐さんは、オッサン姿からクマの人形姿にもどった妖精を抱いた後、あたしにタバコの箱を投げてよこしたんです。
「異世界からこっちへようこそ。遅くなったけどこいつはあたし達からの祝儀だよ」
その後の詳しいことは控えます。人が燃える様子を詳しく語られても面白かないでしょう、肉が食えなくなっちまいますし。
あたしはただその火を見上げながら、もらったばかりのタバコを喫っただけです。
ちなみにその時のタバコはあたしが湯に浸かってる間にサクラさんにみつかり、説教食らったあとに捨てられちまいました。はい。
「『ツキノワが迷惑かけたぁ?』 なんでそれ今更ツバメに言わすかね、ヤツ本人が言わなきゃ意味ないじゃん。あのクソ熊のダメなとこはそこだっつんだよ、死ぬまでわかんなかったんだな。あーキモ、ほんとキモ、死んで正解だよ」
ツバメ姐さんの最期の言葉を伝えたた時のサクラさんの反応はこうでした。しかもじゅうじゅうと網の上で肉を焼きながらの反応でした。
ツキノワって妖精は昔、動画の撮影監督として何度かサクラさんと仕事をしたんですが、その時に派手なケンカでもしちまったんだそうです。そのせいでサクラさんの中ではお悔みの言葉すら勿体ないっていうカスということになっているようでした。
※おわり※
こんな感じです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます